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シリア政府の動き
アサド大統領が政令第309号を発し、アドナーン・アブドゥー・スフニーを工業大臣に、ナジュム・ハマド・アフマドを法務大臣に、サアド・アブドゥッサラーム・ナーイフを保健大臣に任命した。
スフニー工業大臣は、1961年、アレッポ生まれ。人民議会議員を経て、2010年以降はラッカ県知事を務めていた。
アフマド法務大臣は、1969年、アレッポ生まれ。前法務次官で、総選挙法案作成委員会(2011年5月発足)の委員長も務めた。
ナーイフ保健大臣は1959年、アレッポ生まれ。
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中国の楊潔チ外交部長は、シリアのブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官と北京で会談した。
中国外交部によると、楊外交部長は会談で、「中国はアサド政権と関係するすべての当事者に…早急に発砲を停止、暴力を制限し、政治的対話を行うよう求める」と述べた。
また「シリア政府と反体制勢力に国際社会の仲介の努力に協力する」よう求めた。
一方、SANA(8月16日付)によると、シャアバーン報道官は、「シリアの主権を支持する中国のバランスのとれた姿勢」に謝辞を示し、すべての国が中国、ロシアに倣い、危機からの脱却をめざすべきだと述べた。
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ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官は『チャイナ・デイリー』(8月16日付)に対して、「外国勢力が武装を与え、誘拐・殺戮・政府関連施設の破壊を行うよう促している一部の者たちがシリアで内戦を起こそうとしている」と述べた。
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ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣はシリア・アラブ・テレビ(8月16日付)に対して、イスラーム諸国会議でのシリアの加盟資格停止が、多くの国が反対の意見を表明し、コンセンサスに基づいていないため、憲章に反していると述べた。
またシリア訪問中の国連バレリー・アモス人道問題担当事務次長との会談に関して、「昨日(水曜日)の会談で、彼女にシリア国民への支援金・物資を寄付する国々が人道的かと尋ねた。すると彼女は、そうした(アラブ諸)国が4カ国あるが、アラブ人から我々は1ドルも受け取っていないと答えた」と述べた。
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SANA(8月16日付)は、アサド大統領が政令第310号を発し、ムワッファク・イブラーヒーム・ハッルーフの後任として、ムハンマド・ワヒード・アッカード副知事をアレッポ県知事に任命した、と報じた。
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ロイター通信(8月16日付)は、マーヒル・アサド大佐が7月18日のダマスカス県でのテロで片脚を失う重傷を負っていた、と湾岸諸国の西側外交筋の話として報じた。
数日前には、両脚を失っていたとの報道が流れていたため、事実かどうかは定かでない。
反体制勢力の動き
シリア国民評議会は声明を出し、民主的変革諸勢力国民調整委員会がアサド政権と反体制武装勢力の双方に一時停戦を呼びかけたことに対し、「国民的合意から逸脱し、犠牲者と死刑執行人を同列に扱っている」と批判した。
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シリア国民評議会は声明を出し、イスラーム諸国会議機構によるシリアの加盟し確定し決定を歓迎する一方、「シリア国民は政治的意見対立と人道的危機を乗り越えるべく苦難している」と述べ、反体制勢力どうしの対立の責任の一端を国民に押しつけた。
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政治治安部情報課長のヤアラブ・シャルア准将がアラビーヤ(8月16日付)に登場し、政権からの離反を宣言した。
同准将はファールーク・シャルア副大統領のいとこである。
国内の暴力
ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、アサーリー地区、タダームン区で軍・治安部隊による砲撃が行われ、多数が負傷した。
一方、Damas Post(8月16日付)は、複数の消息筋の話として、反体制武装勢力がカフルスーサ区にあるる首相府関連ビルをRPGで攻撃し、塀が破壊されたと報じた。犠牲者はなかった、という。
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ダマスカス郊外県では、複数の反体制勢力筋によると、カトナ市で処刑された遺体60体が発見される一方、軍・治安部隊が同市のほか、ドゥマイル市、ドゥーマー市、タッル市に攻撃を続けた。『ハヤート』(8月17日付)が報じた。
一方、SANA(8月16日付)によると、タッル市、アイン・マニーン町で軍・治安部隊が反体制武装勢力の掃討を継続し、拉致されていた市民多数を解放した。
またタッル市では、軍・治安部隊が反体制武装勢力が拉致していたヤーラー・サーリフ氏らイフバーリーヤ・チャンネルの記者3人の釈放に成功した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市シャッアール地区で6人、カーディー・アスカル地区で10人が軍・治安部隊と反体制武装勢力の戦闘に巻き込まれて死亡した。
またジャンドゥール地区では、軍・治安部隊の兵士8人が反体制武装勢力と戦闘で死亡した、という。
このほか、サラーフッディーン地区、サイフ・ダウラ地区でも戦闘があった。
一方、SANA(8月16日付)によると、アレッポ市バーブ・ナイラブ地区、マルジャ地区、サイフ・ダウラ地区、マサーキン・ハナーヌー地区などで軍・治安部隊が反体制武装勢力の掃討を継続、多数の戦闘員を殺傷した。
またバーブ市でも軍・治安部隊が反体制武装勢力を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷した。
『ハヤート』(8月17日付)は、トルコの消息筋の話として、アアザール市空爆で負傷した多数の市民がトルコ領内に入り治療を受けている、と報じた。
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ヒムス県では、SANA(8月16日付)によると、クサイル地方、ヒムス市ダイル・バアルバ地区で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。
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ラタキア県では、SANA(8月16日付)によると、カフルダブラ市で軍・治安部隊が反体制武装勢力を要撃し、乗っていた車2台を破壊した。
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イドリブ県では、複数の反体制勢力筋によると、軍の戦闘機がマアッラトミスリーン市に対して、200キロ爆弾などを投下した。『ハヤート』(8月17日付)が報じた。
しかし、マアッラト・ニウマーン市郊外のジャルジャナーズ町に対するMiG戦闘機の爆撃により、マアッラト・ニウマーン市の革命指導評議会メンバーも含む数十人が負傷した。
一方、SANA(8月16日付)によると、サルキーン市・イスカート市間の街道で軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジトを襲撃した。
レバノンの動き
ムフタール・サクフィー連隊なる組織が、ミクダード家連盟に続いて、LBCI(8月16日付)に対して、自由シリア軍のメンバー5人をベイルート県およびベカーア県で拉致したと明かした。
この発表の直後、LBCI(8月16日付)は、ベカーア県ザフレ郡シュトゥーラ市でシリア人のフサーム・ヤフヤー・ハシュルーム氏が誘拐されていたことが明らかになったと報じた。
またイード・フィトルを祝して、同集団が「善意を示すべく」5人のうち4人を釈放したとも報じた。
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ミクダード家連盟のマーヒル・ミクダード代表は記者会見を開き、「現在のところ、我々は自由シリア軍に所属するシリア人捕虜多数とレバノン人を拘束しているので、軍事作戦を停止している」と述べた。
また「自由シリア軍の報道官を拉致した。金曜日に作戦の詳細を示す」と付言する一方、湾岸諸国の居住者は「標的にならない」と名言した。
一方、シュトゥーラ市での拉致事件にミクダード家連盟が関与してないと述べた。
記者会見では、ヒズブッラーのアリー・ミクダード国民議会議員が「誘拐は禁止されており、報復としての拉致も禁止されている」と発言したが、その後ミクダード家のメンバーともみ合いとなり、会場を追放された。
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ミシェル・スライマーン大統領は、アドナーン・マンスール外務大臣がアレッポ県で拉致されたレバノン人巡礼者11人の無事を確認したと述べた。
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サアド・ハリーリー前首相は声明を出し、「過ちは過ちを解決することはできない」と述べ、レバノン国内でのシリア人拉致を批判した。
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ナハールネット(8月17日付)によると、レバノン人巡礼者11人を拉致しているアブー・イブラーヒームは、アレッポ県アアザーズ市での軍・治安部隊による反体制武装勢力掃討爆撃で人質11人のうち4人が死亡し、7人が重傷を負ったことを認めた。
諸外国の動き
国連のバレリー・アモス人道問題担当事務次長は訪問中のダマスカスで記者会見を開き、250万人がシリアで支援を必要としている、と述べた。
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フランスのローラン・ファビウス外務大臣がヨルダンのナースィル・ジャウダ外務大臣とともにザアタリー・シリア人避難民キャンプを視察、同地で記者会見を行った。
ファビウス外務大臣は記者会見で、「フランスの立場は明白である。我々はバッシャール・アサドが国民を処刑する執行者だと見なしており、去れねばならないと考えている。速く去るほどよいと考えている…。我々は暫定政府が速く発足し、世界の大国がそれを承認することを望んでいる…。このことでバッシャール・アサドの退任は早まるだろう」と述べた。
会場にはシリア人避難民数百人がファビウス外務大臣に詰め寄ろうとしたが、ヨルダン治安当局に阻止された。
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サウジアラビア、カタール、UAEに続き、クウェートもレバノン在住の自国民に退去勧告を出した。
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国連安保理はUNSMISを任期切れの8月19日で廃止することを決定した。
UNSMIS廃止後は、ダマスカスに連絡事務所を設置し、約20人規模の支援団を駐在させる予定。
AFP, August 16, 2012、Akhbar al-Sharq, August 16, 2012、Alarabia.net, August 16, 2012、Damas Post, August 16, 2012、al-Hayat, August 17, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 16, 2012、al-Kurdiya News, August
16, 2012、LBCI, August 16, 2012、Naharnet.com, August 16, 2012, August 17,
2012、Reuters, August 16, 2012、SANA, August 16, 2012などをもとに作成。
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