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シリア政府の動き
カドリー・ジャミール経済問題担当副首相兼国内通商消費者保護大臣はシリア・アラブ・テレビ(8月24日付)に出演し、シリアにおける危機の解決が、すべての当事者による国民対話を通じてなされ、この対話には国家を守る者たちの権利が維持される限りにおいていかなる前提条件もない、と述べた。
国内の暴力
ダマスカス郊外県では、複数の反体制活動家によると、軍・治安部隊がダーライヤー市内や郊外に展開し、逮捕・摘発活動を行った。
複数の活動家によると、ダーライヤー市に対する砲撃で少なくとも21人が死亡、また反体制武装勢力が残留する郊外の複数地域に対して軍が空爆を行った。
このほか、ザバダーニー市周辺、アルバイン市東部に対しても、軍・治安部隊が反体制武装勢力掃討のための砲撃を行い、少なくとも70人が死亡したと見られる。
一方、SANA(8月24日付)によると、ダーライヤー市、ドゥーマー市軍・治安部隊が反体制武装勢力を追跡、多数の戦闘員を殺傷、逮捕、大量の武器を押収した。
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ダマスカス県では、『ハヤート』(8月25日付)などによると、ナフル・イーシャ地区などが戦車によって包囲され、家屋を破壊、複数名を殺害した、という。
一方、SANA(8月24日付)によると、マッザ区(バサーティーン・ラーズィー)で軍・治安部隊が反体制武装勢力を追跡、多数の戦闘員を殺傷、逮捕、大量の武器を押収した。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、マヤーディーン市で空爆や砲撃で21人が死亡した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダーイル町を軍・治安部隊が砲撃し、7人が死亡した。
またラジャート高原、タイバ町なども砲撃を受けた、という。
一方、SANA(8月24日付)によると、フラーク市で軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」を追撃し、多数の戦闘員を殺傷した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サルミーン市、カンスフラ村、アリーハー市などに対して軍・治安部隊が砲撃を加え、6人が死亡した。
またバーラ村、ジューズィフ市、バサーミス市、マアッラト・ヌウマーン市、マアッラトミスリーン市、ハーン・シャイフーン市なども砲撃を受けたという。
一方、SANA(8月24日付)によると、アリーハ地方などで軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」を追撃し、多数の戦闘員を殺傷した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市のマルアブ地区南部、アレッポ街道地区、アルバイーン地区、ダウワール・ジュッブ地区などで、軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦した。
一方、SANA(8月24日付)によると、マサーフィナ市、タイバト・イマーム市などで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区、ラスタン市などが軍・治安部隊の砲撃に曝され、ヒムス市の検問所では離反兵1人が殺害された。
一方、SANA(8月24日付)によると、タッルカラフ地方でレバノンからの潜入を試みた反体制武装勢力と軍・治安部隊が交戦、撃退した。
またタッルカラフ市、クサイル市、タルビーサ市、ヒムス市ハーリディーヤ地区、バーブ・フード地区、カラービース地区、カルヤ・ヒスン市などで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アアザーズ市、フライターン市などが軍・治安部隊の砲撃を受けた。
一方、SANA(8月24日付)によると、アレッポ市アカバ地区、サイフ・ダウラ地区、ブスターン・バーシャー地区、スライマーン・ハラビー地区、ハラク地区、スッカリー地区、サイイド地区、ブスターン・カスル地区、ハッザーザ地区、マイサルーン地区などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」に対する掃討作成を継続、多数の戦闘員を殺傷した。
また軍・治安部隊はフライターン市からの潜入を試みた反体制武装勢力と交戦し、戦闘員5人を殺害した。
さらにカブターン・ジャバル村、スィリーン村、アリーナ村、ラッカ・アレッポ街道、カフルハムラ村、マアーッラト・アルティーク村、タッル・リフアト市、マーリア市、アナダーン市、フライターン市などで軍・治安部隊が反体制武装勢力を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷した。
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ラタキア県では、SANA(8月24日付)によると、カサーティル村・マズィーン村間でアレッポ・ラタキア街道を封鎖した反体制武装勢力を軍・治安部隊が排除した。
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地元調整諸委員会によると、「ダルアーよ、悲しむな、アッラーは我々とともにある」金曜日と銘打って、ダマスカス県、ダマスカス郊外県、アレッポ県、ダルアー県、ハマー県、イドリブ県各地で金曜の礼拝後に反体制デモが行われた。
『ハヤート』(8月25日付)によると「数千人」が参加した。
シリア人権監視団によると、デモが発生した都市は以下の通り。
ダマスカス県アサーリー地区、カブル・アーティカ地区、ジャウバル区、ダマスカス郊外県のハジャル・アスワド市、ドゥーマー市、ハーマ町、カフルバトナー町、ヤブルード市、ハラスター市、ムライハ市、アルバイン市、アレッポ市のハラブ・ジャディーダ地区、シャッアール地区、ハーリディーヤ地区、マサーキン・ハナーヌー地区、アレッポ県アナダーン市、ダルアー県イブタア町、ヤードゥーダ村、ナスィーブ村、マアルバ町、マターイヤ村、ムサイフラ町、サフワ村、イドリブ県フバイト村、シャイフ・ムスタファー村、タマーニア町、カフルナブル市、ハマー県のラターミナ町、カフルヌブーダ町、ハマーディー・ウマル村、ハマー市、ハサカ県アームーダー市、カーミシュリー市など。
ハサカ県では、『ハヤート』(8月25日付)によると、カーミシュリー市でデモが発生、デモ参加者はクルドの旗、委任統治期のシリアの旗(反体制勢力が使用する旗)、「シリア・クルディスタン青年運動」と書かれたプラカードなどを掲げ、「権利と自由の国家」、「宗派主義反対」といったシュプレヒコールをあげた。
反体制勢力の動き
革命指導最高評議会なる組織が声明を出し、アルメニア教徒がアサド政権を軍事的に支援していると断じた。
クルド民族主義勢力の動き
『クルディーヤ・ニュース』(8月24日付)は、ハサカ県各地での「シリア・クルディスタン青年運動」によるデモは、クルド最高委員会の許可なく行われた、と報じた。
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シリア・クルド国民評議会のメンバーで、アームーダー市の無所属活動家ウバイドッラー・スィーダーは、同評議会を「革命を行うクルド人青年の要求を1%も提示してこなかったし、これからもしない」と批判、脱会を宣言した。
無所属活動家の脱会は、ファールーク・イスマーイール(アレッポ大学歴史学部教授)、ムスタファー・イスマーイール(弁護士、作家)に続いて3人目。
レバノンの動き
北部県トリポリ市バーブ・タッバーナ地区とジャバル・ムフスィン地区での住民どうしの戦闘で、スンナ派シャイフ1人を含む4人が新たに死亡した。
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NNA(8月24日付)によると、ベカーア県バアルベック郡イーアート村でシリア人のアター・フサイン・アッルーシュ氏とその母が武装した5人組に誘拐された。
諸外国の動き
イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣は、8月30~31日でテヘランで開催予定の非同盟諸国外相会合で、シリアの危機解決のための「知的で妥当で…反対することが困難であろう」新たな「提案」を行うと述べた。
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ヨルダン内閣の閣僚が『ハヤート』(8月25日付)に語ったところによると、23日晩から24日早朝にかけて、シリア人2,224人がヨルダン領内のラムサー市に避難した。
一日の避難民の数としてはこれまで最大だという。
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『ワシントン・ポスト』紙およびマッククラッチー・グループは、両社が契約するフリー・ジャーナリストのオースティン・タイス氏と1週間以上にわたって連絡がとれなくなっている、と発表した。
タイス氏は元海兵隊員でアフガニスタンやイラクに従軍後、トルコ経由でシリアに不法入国し、取材活動をしている、という。
AFP, August 24, 2012、Akhbar al-Sharq, August 24, 2012、al-Hayat, August 25, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 24, 2012、al-Kurdiya News, August
24, 2012、Naharnet.com, August 24, 2012、NNA, August 24, 2012、Reuters, August
24, 2012、SANA, August 24, 2012などをもとに作成。
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