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国内の暴力
アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市のサラーフッディーン地区、アアザミーヤ地区、ブスターン・カスル地区、マシュハド地区、スッカリー地区で軍のヘリコプターが上空から機関銃を発射し、反体制武装集団を攻撃した。
またマハッタ・バグダード、ジャミーリーヤ地区、サアドゥッラー・ジャービリー広場(サアドゥッラー・ジャービリー地区)などで軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。
さらにファルドゥース広場での砲撃で、3人が死亡した。
シリアの治安筋はAFP(7月27日付)に対して、「アレッポ周辺での軍部隊の展開はほぼ完了した」と述べた。
AFP(7月27日付)は、サラーフッディーン地区では、戦闘員数百人が、軍・治安部隊の攻撃に備えており、「民間人はいない」(反体制活動家)という。
反体制活動家のアブー・ムハンマド・ハラビーは、AFP(7月27日付)に「反体制勢力は今のところ巧みに動いており、犠牲者はほとんどが民間人だ」と述べた。
サイフ・ダウラ地区のアーミナ・モスクの説教師・イマームのアブドゥッラティーフ・シャーミー氏が何者かに誘拐され、暗殺された。
シリア人権監視団によると、「二都蜂起(インティファーダ)の金曜日」と銘打った反体制デモが複数地区で行われた、という。
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反体制活動家は、自由シリア軍がアレッポ市内の複数カ所で捕捉した軍・治安部隊兵士、警官、そして「自称シャッビーハ」ら約100人の映像をYoutube(7月27日付)で公開した。
映像によると、「タウヒード旅団」なる離反兵のグループが兵士らを捕捉した、という。
http://www.youtube.com/watch?v=RLG0vLy89E4&feature=youtu.be
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ヤルダー市が砲撃に曝された。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マアッラト・ヌウマーン市で反体制武装集団が士官14人を含む軍・治安部隊兵士約50人を捕捉した。
またマアッラト・ヌウマーン市で7時間にわたって軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦、砲撃により女性1人、子供1人が死亡した。
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ダイル・ザウル県では、シリア革命総合委員会によると、ダイル・ザウル市内各所で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。
シリア政府の動き
ロイター通信(7月27日付)は、人民議会議員のイフラース・アフマド・バダウィー女史(アレッポ県諸地域選挙区、B部門、バアス党)が離反し、26日にトルコ領に逃走したと報じた。
アサド政権による「最低限の権利を求める国民の弾圧や残虐な拷問」が離反の理由だとう。
シリア国民評議会のサミール・ナッシャール氏はAFP(7月27日付)に対して、バダウィー議員とは離反後の安全な場所への受入のため、最近接触を始めていたことを明かした。
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ファールーク・ターハー駐ベラルーシ・シリア大使は、ジャズィーラ(7月27日付)でアサド政権を離反すると発表した。
レバノンの動き
『ナハール』(7月27日付)は、ヒズブッラーの戦闘員(ジハード会議第910部隊)が、ベカーア県ヘルメル郡のハウシュ・サイイドからシリア領内に入った、と報じた。
同報道によると、同部隊はヒムス県クサイル地方、ラスタン市、ヒムス市での反体制武装集団との戦闘のために投入されたというが、事実確認はできない。
なお同報道によると、またダマスカス郊外県ザバダーニー市にもヒズブッラーの戦闘員が配置されている、という。
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EUは、シリア人避難民受入のため、レバノンに500万ユーロの資金援助を行うことを発表した。
諸外国の動き
ヨルダンのサミーフ・マアーイタ情報通信大臣は、シリア領内からヨルダンに避難しようとしたシリア人家族をシリア軍が追撃し、家族を保護しようとしたヨルダン軍と交戦、子供1人が銃弾を受け死亡したと発表した。
ヨルダンのラムサーでシリア人避難民の救援活動を行う聖典スンナ協会のザーイド・ハマード代表によると、この交戦でヨルダン軍のビラール・ライムーニー大尉が負傷したと語った。
しかしマアーイタ情報通信大臣は、ヨルダン側に負傷者が出たとの情報を否定した。
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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣はアンカラでマナーフ・トゥラース准将と会談した。
AFP(7月27日付)によると、トゥラース准将はサウジアラビア経由でアンカラ入りした。
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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、「トルコが無思慮で不必要な挑戦を行うだろうなどと誰も考えてはならない」と述べ、シリアへの軍事介入の可能性を否定した。
しかしシリア北東部でのPKK系のクルド民族主義政党、民主統一党の自治に関しては、「自衛権を行使する権利があり、PKKであれアル=カーイダであれ、いかなる勢力がテロの拠点を築くことも許さない」と述べた。
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ロイター通信(7月28日付)は、信頼できる消息筋の話として、トルコ政府がアダナに、シリアの反体制勢力を軍事・兵站・技術教練を行う基地を建設した、と報じた。
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ロバード・ムードUNSMIS前団長は、アサド政権に関して「早晩、体制は崩壊するだろう」と述べた。
その根拠として、「暴力の連鎖や…民間人を保護できないことが、政権の余命を限られたとものとしている」点を挙げたが、「1週間後、ないしは1年後に崩壊するのか、という問いには答えられない」と付言した。
さらに「バッシャール・アサドが退任、ないしは亡命すると…、問題が解決すると多くの人が考えている。しかしこれは安直で、慎重にならねばならない…。体制崩壊後は事態は寄り混乱するだろう」と述べた。
しかし同時に、「現在権力を握っている者がとどまった場合も、未来のシリアを想像できない」とも述べた。
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国連のナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官はアレッポ市で軍・治安部隊と反体制武装集団の双方が大規模な戦闘が準備していることに懸念を表明し、「住民にとって悪い前兆」と非難した。
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フランスのベルナール・ヴァレロ外務省報道官はアサド政権がアレッポ市で「国民に対する新たな虐殺を準備している」と述べた。
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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、アレッポ市での軍・治安部隊による反体制武装集団掃討に関して「決して受け入れられない」と非難した
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フランスの首都パリのエッフェル塔に、反体制勢力が使用する委任統治時代の旗が掲揚された。
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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、英国のデヴィッド・キャメロン首相との会談後、「シリアで起きていることはきわめて重大だ」としたうえで、「アレッポでの事態の悪化、大量破壊兵器使用に関する最近の発言を踏まえると、我々は傍観していることはできない」と述べ、国連安保理、イスラーム諸国会議機構、アラブ連盟などによる介入を改めて呼びかけた。
AFP, July 27, 2012、Akhbar al-Sharq, July 27, 2012、Aljazeera.net, July 27, 2012、al-Hayat, July 28, 2012, July 29, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 27, 2012、Naharnet.com,
July 27, 2012、Reuters, July 27, 2012、SANA, July 27, 2012、al-Thawra, July 28, 2012などをもとに作成。
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