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国内の暴力
アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市ブスターン・カスル地区、サラーフッディーン地区などで軍・治安部隊が反体制武装集団と激しく交戦した。
また軍・治安部隊は戦闘機を投入し、サーフール地区、タリーク・バーブ地区、シャッアール地区、カーディー・アスカル地区、サラーフッディーン地区を空爆したという。
この戦闘により、軍・治安部隊兵士8人、民間人4人、反体制武装集団戦闘員1人が死亡した、という。
一方、『サウラ』(7月26日付)によると、サーフール地区などで軍・治安部隊が反体制武装集団の掃討、追跡を継続し、多数の戦闘員を殺害、逮捕した。
『ハヤート』(7月26日付)は、アレッポ市内の目撃者の話として、「シリア北部から来た反逆者がアレッポに入り、同市を決戦場にしようとしているかのようだ」と報じた。
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ダマスカス県では、シリア革命総合委員会によると、アサーリー地区で戦闘があった。
反体制活動家は、カーブーン区で軍・治安部隊が処刑したとされる遺体11体の映像をビデオで公開した。
アムネスティ・インターナショナルも、マッザ区で非武装の男性や子供の遺体19体が発見されたと発表した。
一方、『サウラ』(7月26日付)によると、カダム区、アサーリー地区で軍・治安部隊が反体制武装集団の追跡を継続し、多数の戦闘員を殺害、逮捕した。
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イドリブ県では、反体制活動家らによると、マアッラト・ニウマーン市とハーン・シャイフーン市間の街道およびアリーハー均衡で軍・治安部隊の車列を襲撃した。
同活動家らによると、この車列はアレッポ市の掃討作戦に向かう増援部隊だという。
『ハヤート』(7月26日付)によると、軍・治安部隊はザーウィヤ山などに展開している数千の兵をアレッポ市への増援部隊として派遣した。
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ダマスカス郊外県では、『ハヤート』(7月26日付)によると、タッル市を拠点とする第216機械化大隊が同市への砲撃を本格化させた。
タッル市は反体制武装集団が先週から占拠しているという。
また、シリア人権監視団によると、ハジャル・アスワド市に対して、軍・治安部隊が砲撃を加えた。
同地は依然として、反体制武装集団が潜伏しており、制圧されていないという。
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ハマー県では、『サウラ』(7月26日付)によると、ガーブ地方で治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、甚大な被害を与えた。
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ラタキア県では、『サウラ』(7月26日付)によると、北部のサルマー町で軍・治安部隊が反体制武装集団の「浄化」を完了した。
また軍・治安部隊はアイン・イードゥー村で反体制武装集団と交戦した。
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ダルアー県では、『サウラ』(7月26日付)によると、ダーイル町、ワーディー・ヤルムークで軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦、多数の外国人戦闘員を殺害した。
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ヒムス県では、『サウラ』(7月26日付)によると、タッルカラフ市で国境警備隊がレバノン領内からの潜入を試み反体制武装集団の戦闘員を撃退した。
一方、シリア人権監視団によると、空軍情報部兵士を含む軍・治安部隊がヒムス中央刑務所での暴動鎮圧のために同刑務所に突入し、複数が死傷した、という。
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ハサカ県では、『サウラ』(7月26日付)によると、カーミシュリー市郊外のザーヒリーヤ市の反体制武装集団のアジトに治安維持部隊が突入し、戦闘員10人を殺害、12人を逮捕した。
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ダイル・ザウル県では、『サウラ』(7月26日付)によると、ダイル・ザウル市で軍・治安部隊が反体制武装集団の「残党狩り」を行った。
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クウェート日刊紙『スィヤーサ』(7月25日付)は、シリア愛国主義者党軍事局なる組織が声明を出し、ラタキア県カルダーハ市にあるハーフィズ・アサド前大統領廟を迫撃砲で攻撃し、大きな損害を与えた、と発表したと報じた。真偽は定かでない。
シリア政府の動き
ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣はダマスカス訪問中の国連平和維持活動局(DPKO)のエルベ・ラドゥス局長と会談した。
『サウラ』(7月26日付)によると、ムアッリム大臣は会談で、国際社会がテロ集団に影響力を行使する国がアナン特使の停戦案に協力することが肝要と立場を伝えた。
一方、ラドゥス局長は国連における最優先課題がシリア国内の暴力を軽減するための政治解決に向けて行動することだとの見解を示した、という。
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人民議会は、テロ犯罪に関する特別法廷設置に関する法案(2012年法律第19号)を承認した。近くアサド大統領が施行する見込み。
反体制勢力の動き
シリア国民評議会執行員会は声明を出し、アサド政権打倒後の暫定政府の長にはアサド政権の高官ではなく、反体制勢力が就くことを確認したと発表した。
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AFP(7月25日付)は、イドリブ県ビンニシュ市など、反体制武装集団によって「解放」された都市・村で、軍・政治指導者からなる代表者委員会が選出され、自治を行っている、と報じた。
レバノンの動き
アドナーン・マンスール外務大臣は、シリア軍によるレバノン領内での反体制武装集団掃討活動に関して、アリー・アブドゥルカリーム駐レバノン・シリア大使に「覚書」を手渡した。
マンスール外務大臣によると、同「覚書」は、事件の再発を回避したい旨シリア側に要請しているが、侵犯への「抗議」の意は示していない、という。
トルコの動き
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は国家安全保障会議を開き、「シリア情勢の進捗と、領内および近隣諸国の分離主義テロ組織の活動」に関して協議した。
アナトリア通信(7月25日付)によると、会議は2時間にわたって行われ、アフメット・ダウトオール外務大臣ほか、軍参謀長、国防大臣、内務大臣、諜報機関高官が出席した。
会議は、アサド政権とクルド民族主義勢力、とりわけPKK系の民主統一党(西クルディスタン人民議会)やシリア・クルド民主統一党(イェキーティー)の協力関係の緊密化や自由シリア軍・アル=カーイダによる国境通行所制圧を受けたものと思われる。
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トルコのハヤティ・ヤズジュ関税通商大臣は記者会見で、対シリア国境に位置するジルヴェゴズ、オンジュピナル、カルカミスの三つの国境通行所のトルコ人および外国人の往来、シリア、トルコ、および諸外国の商業貨物車輌の往来を停止と発表した。
通行所の「領外の安全が確保されていない」というのがその理由。
ただしシリア人の出国は認められるという。
これらの通行所はそれぞれシリアの反体制武装集団が制圧したジャラーブルス、バーブ・ハワー、サラーマの三つの国境通行所に面している。
なお同大臣によると、アクジャカレ(カサブ)とヤイァダギ(タッル・アブヤド)の国境通行所は利用可能だという。
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トルコ外務省筋は、シリア軍の上級士官(少将)2人が新たに離反し、トルコ領内に避難したことを明らかにした。
諸外国の動き
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、キプロス外相と会談後、「我々は一方的制裁にそもそも反対している…。いかなる問題であれ集団的な討論を行うことを支持している。残念ながら、EU、米国などはシリアに一方的制裁を科したが、そのことに関して我々に何らの意見も求めなかった」と述べた。
またラブロフ外務大臣は、18日のダマスカス県での爆弾テロに関して「シリア政府が行っていることを踏まえると、こうした攻撃は驚きではない」とコメントしたビクトリア・ヌーランド米国務次官補の発言を受けるかたちで、「ひどい姿勢だ…。こうした事態に対する我々の立場を表現する言葉も見つけられない。テロを直接正当化している…。このような姿勢をどう理解すべきか?…このことは、安保理が自分たちの望む通りにならない限り、このようなテロ行為を支持し続けると言っているようなものだ」と非難した。
さらに自由シリア軍が国境通行所を制圧したとの情報に関して、「複数の情報によると、自由シリア軍が通行所を制圧したのではない…。この問題を一部の人がどのように考えているかはともかく…、制圧したのはアル=カーイダと直接関係のある組織だ」と述べた。
EUによる追加制裁(武器やその他禁止されている機器のシリア国内への持ち込みが疑わわれる航空機や船舶の臨検調査)に関しては、「包囲」だと非難した。
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ロシアのゲンナージー・ガティロフ外務次官は、イタルタス通信(7月25日付)に対して、「我々はダマスカスからこれらのミサイルの安全が完全に保障されているとの確実な保証を得た」と述べた。
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イランのアフマド・ワヒーディー国防大臣は「シリア政府とシリア軍はテロリストと対決する能力と力を持っていると考える」と述べ、イランの軍事支援が不要だとの見解を示すとともに、イラン軍部隊がアサド政権を支援するために派遣されているとの一部情報を否定した。
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イスラエルのアアヴィグドール・リーベルマン外務大臣は、「シリアが化学・生物兵器をヒズブッラーに引き渡したことを発見したら直ちに行動する…。我々にとって、それは宣戦布告であり、レッド・ラインだ」と述べた。
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ヨルダンのナースィル・ジャウダ外務大臣は、アサド政権による化学兵器使用の可能性について「仮定の話に過ぎない」としつつ、国内では予防的措置をとる、と述べた。
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ババカール・ジャイ(Babacar Gaye)UNSMIS新団長(セネガル人)がロバート・ムード前団長の後任としてダマスカスに着任した。
『ハヤート』(7月26日付)によると、UNSMISの監視団員150人が24、25日の2日間にかけて帰任すると報じた。
帰任する団員の補充はない。
AFP, July 25, 2012、Akhbar al-Sharq, July 25, 2012、al-Hayat, July 26, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 25, 2012、Naharnet.com, July 25, 2012、Reuters, July 25, 2012、SANA, July 25, 2012、al-Siyasa, July 25, 2012、al-Thawra, July 26, 2012などをもとに作成。
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