シリア・ロシア両軍による「猶予停戦」のなか、反体制派が人道回廊を砲撃し、ロシア軍兵士2人が負傷、アレッポ市東部からの戦闘員・住民の退去・避難は見られず(2016年11月4日)

アレッポ県では、シリア・ロシア両軍が午前9時から午後7時までの10時間、反体制武装集団のアレッポ市東部からの退去のための「猶予停戦」(人道停戦)を発効し、カースティールー通行所とハイイル・マシャーリカ通行所の2カ所が開放された。

『ハヤート』(11月5日付)によると、この「猶予停戦」により、シリア軍が包囲する反体制武装集団(アレッポ・ファトフ軍作戦司令室)支配下のアレッポ市東部では、戦闘が終息、民間人、戦闘員の死傷者はなかった。

しかし、ロシア国防省は声明を出し、アレッポ市東部と外界を結ぶ人道回廊の一つ同市北部のカースティールー回廊に配置されていたロシア軍(ラタキア県フマイミーム航空基地のシリア駐留ロシア軍所属)2人が、反体制武装集団の砲撃を受けて負傷したと発表した。

また、シリア・アラブ・テレビ(11月5日付)によると、イフバーリーヤ・チャンネルの特派員1人も負傷した。

SANA, November 4, 2016

SANA, November 4, 2016

SANA(11月4日付)は、アレッポ市東部でシリア・ロシア両軍が「猶予停戦」(3日午前9時~午後7時)を発効したのに対し、同地を占拠する反体制武装集団(ファトフ軍)は、住民が市外に退去するのを阻止し、「人間の盾」とし利用し続けたと伝えた。

シリア人権監視団によると、「猶予停戦」期間中、アレッポ市東部からの民間人の避難、戦闘員の退去はなかったという。

なお、国連OCHAのヤンス・ラーク(Jens Laerke)報道官は、この「猶予停戦」中、「安全面の保障」がなかったために、アレッポ市東部への人道支援物資の搬入作業は実施されなかったと発表した。

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一方、SANA(11月4日付)によると、反体制武装集団がアレッポ市西部のラームーサ地区を砲撃し、2人が死亡、11人が負傷した。

また、クッルナー・シュラカー(11月4日付)によると、ロシア軍と思われる戦闘機がカフル・ナーヤー村を空爆し、13人が死亡、数十人が負傷したという。

他方、シャーム自由人イスラーム運動はアレッポ市とサラミーヤ市(ハマー県)、ハマー市を結ぶシリア軍の唯一の兵站路アレッポ市・イスリヤー村街道を遮断したと発表した。

AFP, November 4, 2016、AP, November 4, 2016、ARA News, November 4, 2016、Champress, November 4, 2016、al-Hayat, November 5, 2016、Iraqi News, November 4, 2016、Kull-na Shuraka’, November 4, 2016、al-Mada Press, November 4, 2016、Naharnet, November 4, 2016、NNA, November 4, 2016、Reuters, November 4, 2016、SANA, November 4, 2016、UPI, November 4, 2016などをもとに作成。

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