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国内の暴力(アレッポ市)
AFP(7月31日付)は、「アレッポ革命」報道官を名のる活動家の話として、「昨日、彼ら(軍・治安部隊)は(サラーフッディーン)地区に毎分2発の迫撃砲を打ち続けた。我々はまったく動けなかった」と述べ、サラーフッディーン地区が軍・治安部隊に制圧されたとの政府側の発表を否定した。
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AFP(7月31日付)によると、アレッポ市の住民は政権支持と反体制運動支持で意見が分かれている、という。
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SANA(7月31日付)によると、サラーフッディーン地区で軍・治安部部隊は反対武装集団の「残党」の追跡を継続し、多数の戦闘員を殺傷、逮捕した。
戦闘員のなかにはイラク人、アフリカ人が含まれており、またシリア人戦闘員の多くはアレッポ市郊外の出身者だという。
またジャミーリーヤ地区、サアドゥッラー・ジャービリー地区で軍・治安部隊は反体制武装集団の戦闘員をそれぞれ11人、6人殺害した。
このほか、ダウワール・ジャズマーティーでは反体制武装集団数十人が爆弾の誤爆で死亡した。
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一方、SANA(7月31日付)によると、アレッポ市郊外では、軍・治安部隊がハンダラート・キャンプで反体制武装集団300~400人を要撃し、戦闘員多数を死傷させた。
またダーラト・イッザ市でも治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺害した。
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UNHCRは数千人の民間人がアレッポ市から脱出できず、市内の大学、モスクなどで避難生活を送っており、約300世帯が緊急支援を必要としている、とシリア赤新月社などのデータをもとに発表した。
国内の暴力(その他)
AFP(7月31日付)は、イスラーム諸国の義勇兵がシリアの反体制武装闘争を支援するためにシリア国内に潜入している、と報じた。
同通信社は、シリア北西部の複数の反体制活動家の話として、過去数ヶ月間に、リビア人、クウェート人、サウジ人、そして英国、ベルギー、米国のイスラーム教徒が反体制武装集団に参加した、と報じた。
彼らの多くは、ハマー県に向かい、そこでアフガニスタンで経験を積んだジハード主義者の教練を受け、ハマー市やダマスカス県での戦闘に参加したという。
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AFP(7月31日付)は、ダマスカス県とアレッポ市での反体制武装集団と軍・治安部隊の戦闘激化に伴い発生した避難民に関して、周辺諸国ではなく、国内の「より安全な場所」に避難している、と報じた。
同通信社は、ヒムス県からレバノンを経て、ダマスカス県ルクンッディーン区に避難していたという避難民の話として、多くのヒムス住民がダマスカス県を去り、ヒムス県に戻っていると伝えた。
またアレッポ市で避難民の多くがアレッポ市内の親戚の家、学校、大学寮、慈善団体のセンターなどに避難しており、同市で救援活動をしているボランティアによると、その数は7万人以上にのぼるという。
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ハマー県では、SANA(7月31日付)によると、サラミーヤ地方で、軍・治安部隊が反体制武装集団「残党」の追跡を継続し、戦闘員複数を殺害、武器弾薬を押収した。
またスカイルビーヤ市郊外で治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員3人を逮捕した。
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ヒムス県では、SANA(7月31日付)によると、タッルカラフ地方でレバノン領からの潜入を試みる反体制武装集団を国境警備隊が撃退し、戦闘員を殺傷した。
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ダマスカス郊外県では、『クッルナー・シュラカー』(7月31日付)によると、ジャルマーナー出身の青年らが乗った車がダマスカス国際空港街道の検問所で発砲を受け、6人が死亡、2人が負傷した。
Syrian Days(7月31日付)は、7月8日にダイル・アティーヤ市で家族とともに「何者か」に誘拐されたビジネスマンでカラムーン大学学長のサリーム・ダアブール氏が釈放されたと報じた。
家族も無事釈放された。
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ダルアー県では、『ハヤート』(8月1日付)によると、ヒルバト・ガザーラ地方の対ヨルダン国境地帯で、負傷者をレバノン領内に搬送しようとした自由シリア軍に対して、軍・治安部隊が砲撃を加えた。
反体制活動家によると、負傷者のほとんどは女性と子供。
自由シリア軍タッル・シハーブ地方のアリー・リファーイーなる活動家によると、負傷者の1人が闘争途中に砲撃を受け死亡したが、それ以外の負傷者はヨルダン領内に避難した。
シリア政府の動き
『クッルナー・シュラカー』(7月31日付)は、フサーム・ハーフィズ駐アルメニア領事ら外交官の離反が、ムハーバラートの人事改編と関係がある、と報じた。
同報道によると、アリー・マムルーク国民安全保障会議議長が、総合情報部長から現職に異動する直前に、「M.H.」、「H.H.」(ハーフィズ領事と思われる)、「D.B.」、「Gh.A.」、「A.M.」の5人の外交官のシリア本国への帰任を外務在外居住省に要請したが、異動後、これらの外交官は帰国を拒否、離反したという。
なお同報道によると、マムルーク国民安全保障会議議長に代わって総合情報部長に就任したディーブ・ザイトゥーン少将も同様の帰任要請を出しており、外交官の離反は続くことを示唆している。
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リヤード・ファリード・ヒジャーブ内閣(ヒジャーブ首相が議長を務める)が閣議を開き、「国民和解」をめぐるアリー・ハイダル国民和解問題担当国務大臣の活動・会合の進捗状況などを審議した。
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シリア・アラブ航空はEU諸国の追加制裁を受け、欧州諸国への就航便を徐々に運行停止とすることを決定した。
AFP(7月31日付)が報じた。
シリア・アラブ航空高官によると、現時点でパリ、ブカレスト、ベルリン、ブリュッセル、ラルナカ、ストックホルムなどへの便が運行停止となっている。
反体制勢力の動き
イラク・クルディスタン民主党のハイマン・フーラーミー渉外局長は、AFP(7月31日付)に対して、イラクのクルディスタン地域のキャンプで、シリアのクルド人に対する教練を開始したことを明らかにした。
この教練は「シリアの体制崩壊後の治安上の真空を埋めること」が目的だという。
またフーラーミー渉外局長は、「イラク・クルディスタン民主党もクルディスタン自治政府もシリア内政には干渉しないし、シリアのクルド人の状況をどうすべきかという政治的フォーマットを提供することもない。しかし、我々はシリアのクルド人の統合をシリアの反体制運動の基礎とし、前向きな変革を支援すべく支援してきた」と述べた。
PKK系のクルド民族主義組織の民主統一党のサーリフ・ムスリム共同党首は、この教練に関して「(クルド人の)保護が目的」と述べる一方、「我々にはそれができるが、西クルディスタン(シリア)の何らかの組織と合流したいと彼ら(イラクのクルド人)が考えるのなら、特別な教練が必要になろう。(シリアへの)帰宅を望む者は歓迎されるが、武器を持って帰ることはない」と述べ、クルド人武装集団のシリアへの潜入・帰国については否定した。
またシリア・クルド民主党パールティーのアブドゥルハキーム・バッシャール書記長(シリア・クルド国民評議会)は、「現時点で、シリア軍を離反したクルド人を帰国させる決定はない…。彼らは教練を終えたが、それは戦闘のためではなく、(シリアの)体制崩壊後の戦略的地域を保護するためだ」と述べた。
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民主統一党のサーリフ・ムスリム共同党首はAFP(7月31日付)に、「アフリーン、ダイリーク、コーバーニーの三地域が、特定の政党ではなく、人民の意思のもとにある。彼らはすべての党派を代表しており、すべての国家機関を掌握し、その高官を追放した」と語った。
また「西クルディスタンはトルコに敵対しておらず、またトルコへのいかなる敵対も計画していない…。PKKにも西クルディスタンにも武装している者は一人もいない」と述べた。
さらに「我々は反体制の民主的諸勢力国民調整委員会のメンバーだ。我々の反体制運動は、ハイサム・マンナーアやアブドゥルアズィーズ・ハイイル(いずれも国民調整委員会メンバー)とともにあるが、我々の方法は、平和的な革命を呼びかけるというものであり、武装革命ではない」と付言し、アサド政権との協力関係を否定した。
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シリア国民行動グループ代表のハイサム・マーリフ弁護士はカイロで記者会見を開き、シリアの反体制勢力の会合で「シリア革命評議会」の設置が決定され、自身が暫定政府首班に任命されたと発表した。
記者会見でマーリフ弁護士は「暫定内閣首班に任命された。これをもって、国内外の反体制勢力と組閣の協議を始める」と宣言した。
また「シリア革命評議会」に関して、マーリフ弁護士は「いかなる政治組織にも属さない無所属のシリア人反体制活動家の連立」だと述べた。
マーリフ弁護士によると、会合には、自由シリア軍の代表を含むシリアの反体制活動家らが参加したが、記者会見には出席しなかった。
マーリフ弁護士はシリア国民評議会を3月13日に脱退している。
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シリア国民評議会執行委員会のムハンマド・サルミーニーは、BBC(7月31日付)に対して、シリア国民評議会がカイロの会合に参加しなかったと述べた。
またシリア国民評議会執行委員会のアブドゥルアハド・アスティーフー氏は声明を出し、シリア国内の勢力との調整や協議に基づくようなかたちではいかなる暫定政府の発足も宣言しないだろう、と述べた。
アスティーフー氏によると、シリア国民評議会は、最近メディアなどで報じられている反体制勢力の暫定政府発足をめぐる動きに何ら関与しておらず、「反体制勢力内の対立を爆発させるための実験用バルーン、ないしは時限爆弾」のようなものだという。
同声明は「シリア国民評議会特派員ネットワーク」を通じて発表された。
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自由シリア軍の副参謀長を名のるアーリフ・ハンムード大佐は、BBC(7月31日付)に対して、「ハーリド・ムトラク大佐を団長とする使節団が大会に参加した。我々はシリアの反体制勢力のいかなる活動にも遅れをとらず参加する。たとえそれに反対の立場でも」と述べた。
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パリで活動する反体制組織、シリア民主世俗主義諸勢力連立はハイサム・マーリフ氏の暫定政府首班就任宣言とシリア革命評議会の結成に関して、「革命を続けるシリアの街の声、そしてそれを代表する組織に何ら問うことなく首班を指名した」し、「シリアの革命家の権利を奪う」行為と非難した。
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NBC News(7月31日付)は、シリアの反体制武装集団がトルコ国境経由で地対空ミサイル約24基を入手した、と報じた。
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シリア国民評議会は声明を出し、ダイル・ザウル市での戦闘で数百人が死亡、数千人が負傷したと発表した。
諸外国の動き
7月29日に開設したヨルダンのザアタリー・キャンプは、30日、31日の2日間で900人以上のシリア人避難民を受け入れた。
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イランの日刊紙『シャルク』(7月31日付)は、イラン軍のマスウード・ジャザーイリー副参謀長が「(イランは)シリアへの敵の進軍を許さないだろう」と述べた、と報じた。
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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相はバラク・オバマ米大統領と電話会談を行い、シリアでの体制転換(アサド政権退陣)について協議した。
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シリアの反体制武装集団を支援するサウジアラビアのアフマド・ビン・アブドゥルアズィーズ内務大臣は、8月2日にシリア周辺諸国のシリア人避難民への支援物資を積んだ40台の貨物車輌をサウジアラビアから派遣すると発表した。
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レオン・パネッタ国防長官はCNN(7月31日付)に対して、アサド大統領に関して「彼が自信と家族を守りたいと考えるなら、去るべきだと言いたい」と述べた。
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UNSMISのスーザン・ゴシェ報道官は、アレッポ市での軍・治安部隊の反体制武装集団掃討作戦に戦闘機が投入されていることを監視団が30日に確認した、と述べた。
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パレスチナ解放人民戦線総司令部派(PFLP-GC)のアフマド・ジブリール書記長は、ダマスカス県ヤルムーク区(パレスチナ難民キャンプ)での反体制運動の激化とシリア軍・治安部隊との衝突発生を受けて、反体制武装集団の進入を阻止するため、キャンプを要塞化する必要がある、と述べた。
反体制武装集団と軍・治安部隊との衝突で犠牲となったパレスチナ人の葬儀で、ジブリール書記長は、「シリアの分割を画策する国際的陰謀」と「武装テロリスト」に対抗する必要を強調した。
AFP, July 31, 2012、Akhbar al-Sharq, July 31, 2012, August 1, 2012, August 2, 2012、BBC, July 31, 2012、al-Hayat, August 1, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 31, 2012、Naharnet.com, July 31,
2012、Reuters, July 31, 2012、SANA, July 31, 2012、Syrian Days, July 31, 2012、al-Thawra, August 1, 2012などをもとに作成。
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