国連平和維持活動担当事務次長がヒムス市を訪問し同県知事と会談するなか、アサド大統領が憲法最高委員会メンバーを発表(2012年5月22日)

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アサド政権の動き

アサド大統領は2012年政令第173号を発し、憲法最高委員会メンバーを発表した。

メンバーは以下の通り:

アドナーン・ズライク(委員長)
アフマド・アブドゥッラー・アブドゥッラー
ムスタファー・アブドゥルハミード・ハズーリー
バシール・イブラーヒーム・ダッバース
ラスラーン・アリー・タラーブルスィー・マタル
マーリク・カマール・シャラフ
ジャミーラ・ムスリム・シュルバジー

国内の暴力

アレッポ県では、NNA(5月22日付)などレバノン内外のメディアによると、レバノン人(シーア派)16人がアアザーズ地方サラーマ村で自由シリア軍(反体制武装集団)に誘拐された。

またSANA(5月22日付)は、レバノン人(シーア派)11人とシリア人1人が誘拐された、と報じた。

彼らはイランからトルコ経由でレバノンに向かっていたバスの乗客で、バスにはイラン国内の聖地を巡礼した52人の乗客が乗っており、女性はまもなく釈放された、という。

一方、シリア人権監視団によると、アターリブ市で軍・治安部隊が離反兵が交戦した。

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ヒムス県では、ヘルヴェ・ラドス国連平和維持活動担当事務次長はヒムス市を訪問し、ガッサーン・アブドゥルアール県知事と会談した。

UNSMISが発表した声明によると、この会談で、ラドス事務長は、「政府と反体制勢力との間で現在失われている信頼回復に資するような平和的デモの許可、逮捕者釈放」を行い、「政治的プロセス」を進めるよう求めた。

SANA(5月22日付)によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区で武装テロ集団が治安部隊兵士1人を殺害した。

またワルシャ地区では武装テロ集団の爆弾製造所が爆発市、多数のテロリストが死亡した。

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ダイル・ザウル県では、反体制武装集団高官によると、ブサイラ市に到着したUNSMISを歓迎するために街頭に出た市民数百人に治安部隊が発砲し、2人が死亡、UNSMISは市外に去った。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、カフルルーマー村で軍・治安部隊が発砲し、複数の市民が負傷した。

一方、SANA(5月22日付)によると、イドリブ・サルキーン街道で武装テロ集団が治安維持部隊を攻撃を受けたが応戦し、テロリスト多数を死傷させた。

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ハマー県では、ハマー革命広報局によると、ラターミナ町で軍・治安部隊と離反兵が交戦した。

またシリア人権監視団によると、カウカブ村に軍・治安部隊が突入した。

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このほか複数の反体制消息筋によると、ダマスカス郊外県、アレッポ市内などで治安部隊による逮捕・摘発活動が行われた。

国内でのその他の動き

『バラド』(5月22日付)は、ダマスカス県高官筋の話として、2015年着工予定の「ダマスカス緑の地下鉄」計画が西側の経済制裁により実施不能となり、プロジェクト停止となった、と報じた。

SANA, May 22, 2012

SANA, May 22, 2012

SANA, May 22, 2012

SANA, May 22, 2012

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CNN(5月22日付)は、米諜報筋の情報として、2011年3月に300億ドルあったとされるアサド政権の資金が、現在60億~90億ドルに減り、イランからの財政支援がなければ今年末には破綻するだろうと報じた。

アサド政権は反体制運動を弾圧するため月10億ドルを費やしている、という。

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SANA(5月22日付)によると、アレッポ大学で学生らがアサド政権の改革支持、テロ拒否を訴えるデモを行った。

反体制勢力の動き

シリア人権監視団は、イドリブ県、ハマー県、ラタキア県、アレッポ県、ダマスカス(郊外)県で複数の爆発があったと発表したが、詳細については触れなかった。

レバノンの動き

Naharnet, May 22, 2012

Naharnet, May 22, 2012

ベイルート県南部郊外(ダーヒヤ)では、レバノン人(シーア派)16人の誘拐に抗議し、住民が道路を封鎖し、怒りを露わにした。

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ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長は、レバノン人(シーア派)16人の誘拐を受け、緊急演説を行い、国民に自制を呼びかけ、道路封鎖を行わないよう求めた。

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ムスタクバル潮流のサアド・ハリーリー前首相は、アレッポでのシーア派16人の誘拐を受け、即時釈放を求めるとともに、家族との連帯を呼びかけた。

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アドナーン・マンスール内務地方自治大臣はジャディーダ・テレビ(5月22日付)に対して、誘拐されたレバノン人が「シリアの反体制武装集団の一派に拘束されている」と述べた。

しかしこの一派が自由シリア軍かどうかについてはコメントを控えた。

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レバノン司法当局は、サラフィー主義者のシャーディー・マウラーウィー氏(12日に逮捕)の釈放を決定した。

マウラーウィー氏は釈放後、トリポリ市内で「レバノンのシリア人避難民キャンプで誤って逮捕された…。圧力と拷問のなかで自白(アル=カーイダのメンバーであるとの自白)を迫られた」と発表した。

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『ジュムフーリーヤ』(5月22日付)は、アドナーン・マンスール内務地方自治大臣が、カタール政府がレバノンで身柄拘束されているカタール人(アブドゥルアズィーズ・アティーヤ氏)を釈放しなければ、在留レバノン人を国外退去に処すると脅迫しているとの一部報道などを否定した、と報じた。

アティーヤ氏は、カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相の親戚で、マウラーウィー氏が関与しているとされるテロ組織との関係を疑われ身柄拘束されていたが、その後釈放された。

諸外国の動き

『ザマン』(インターネット版、5月22日付)は、トルコのハタイ警察が自由シリア軍司令官のリヤード・アスアド大佐を誘拐しようとしたトルコ人2人、シリア人1人を逮捕したと報じた。

3人は、ハタイ県アバイディンにあるシリア人避難民キャンプでアスアド大佐を誘拐し、シリア当局に引き渡そうとしていた、という。

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トルコのアブドゥッラー・ギュル大統領は、NATO首脳会談で、国際社会でのシリア危機への対処する努力は不充分だ、と述べた。

AFP, May 22, 2012、Akhbar al-Sharq, May 22, 2012, May 23, 2012、al-Balad, May 22, 2012、CNN, May 22, 2012、al-Hayat, May 23, 2012、al-Jumhuriya, May 22, 2012、Kull-na Shuraka’, May 22, 2012、al-Nahar, May 22, 2012、Naharnet.com, May 22, 2012、NNA, May 22, 2012、Reuters, May
22, 2012、al-Safir, May 22, 2012、SANA, May 22, 2012などをもとに作成。

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