アサド大統領がロシアを電撃訪問し、シリアでの「テロとの戦い」の勝利が近いことを確認、「シリア諸国民大会」について意見を交換(2017年11月21日)

アサド大統領はロシアを電撃訪問し、ロシア、イラン、トルコ三カ国軍参謀総長個別会談が行われている南部のソチで、ヴラジミール・プーチン大統領と会談した。

会談の様子はSANAが映像(https://youtu.be/gaoDpLnRYwA)で公開した。

アサド大統領がシリア国外を訪問するのは、「アラブの春」がシリアに波及した2011年3月以降ではこれが2度目。

前回の訪問先も、ロシア(モスクワ、2015年10月21日)だった。

SANA, November 21, 2017

SANA, November 21, 2017

SANA, November 21, 2017

SANA, November 21, 2017

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会談でプーチン大統領は、アサド大統領に「テロとの戦い」によって達成されたシリア国内での成果に祝意を示すとともに、シリア国民がテロリストに勝利する日は近いと激励した。

また「検討すべきアジェンダとして提起されているもっとも重要な問題は、テロリスト敗北後の問題、すなわち政治的解決、長期的な問題解決である…。私はあなたと政治プロセス、シリア諸国民大会の基本原則について議論したい…。現状に対するあなたの評価、政治的解決に関するあなたの見方など、今後の事態の推移への見立てについて耳を傾けたい…。それは、最終的には国連の監督かで行わねばならないことは間違いない」と述べた。

これに対して、アサド大統領は、プーチン大統領に謝意を示したうえで、以下の通り述べた。

「今回の訪問は、「テロとの戦い」の一環として、ロシア軍がシリア軍を支援するために軍事作戦を開始してから2年と数週間を経たことを踏まえたものだ。これにより、人道面、軍事面、政治面など、さまざまなレベルで重要かつ大きな戦果が達成された…。テロに対する勝利は多くの地域での治安回復、そして市民の帰還をもたらし、日常生活の車輪は再び回り始めるようになった。同時にシリアでの危機解決に向けた政治プロセスを前進させた」。

「ロシアの政策はさまざまな面で効果を発揮した。そのすべてが重要かつ特別なもので、そこでは、国家の主権、内政不干渉、自決権を強調する国連憲章を遵守する必要が強調されてきた。今回の会談は、両国の最高レベルでの連携を進めるうえで重要であり、友好国である両国が関心を持つ様々な問題への対処、とりわけテロとの戦いの継続、政治プロセスにかかわる取り組み、そしてソチで予定されているロシア、イラン、トルコの主要会談に向けたものとなる」。

両首脳は、プーチン大統領の提案に基づき開催が計画されている「シリア諸国民大会」(国民和解大会)の準備状況について意見を交わし、アサド大統領はそのなかで、大会開催に向けたロシア側の取り組みに謝意を示すとともに、シリア国内でのテロ活動が減少するなかで、あらゆる政治行動を支援すると強調、政治解決に向けたプロセスを支援するため国内外に門戸を開放するとの意思を示した。

またこのほかにも、ダーイシュ(イスラーム国)、ヌスラ戦線(現シャーム解放機構)、そして両組織とつながりのある組織に対する「テロとの戦い」を継続することを改めて確認した。

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アサド大統領はまた、セルゲイ・ショイグ国防大臣、ヴァレリー・ゲラシモフ参謀総長らロシア軍幹部、ユーリ・ウシャコフ大統領補佐官、アレクサンドル・ラヴレンチエフ・シリア問題担当大統領特使、セルゲイ・ヴェルシニン外務省中東北アフリカ局長らとも会談した。

SANA(11月21日付)、『ハヤート』(11月22日付)などが伝えた。

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その後、ロシア大統領府は、アサド大統領のソチ滞在時間は約4時間だったことを明らかにしたうえで、「今シリアで重要なのは、政治プロセスへの移行であり、アサド大統領は和平と問題解決を望むすべての人々と行動する用意がある」と発表した。

また「テロの問題は、世界、そしてシリアをはじめとする中東で依然としてある。しかし、主要な任務は終わりに近づいている。近々に我々はそれを完了したと発表できるだろう」と付言した。

AFP, November 21, 2017、ANHA, November 21, 2017、AP, November 21, 2017、ARA News, November 21, 2017、Champress, November 21, 2017、al-Durar al-Shamiya, November 21, 2017、al-Hayat, November 22, 2017、al-Mada Press, November 21, 2017、Naharnet, November 21, 2017、NNA, November 21, 2017、Reuters, November 21, 2017、SANA, November 21, 2017、UPI, November 21, 2017などをもとに作成。

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