シリア軍がラスタン市を完全制圧するなか、英・仏・独・ポルトガルがシリアに対する安保理決議案の修正案を作成(2011年10月1日)

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ラスタン市制圧

シリア軍は昨日、ヒムス県ラスタン市のほぼ全土を制圧した。同地では軍が、離反兵・武装集団と5日にわたって戦闘を行ってきた。

SANA, October 1, 2011

SANA, October 1, 2011

SANA(10月2日付)は、軍・治安部隊が「武装テロ集団」を掃討し、ラスタン市を制圧し、同市は平静を取り戻した、と報じた。

シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、シリア軍はラスタン市の約80%を制圧。また同氏によると、ラスタン市(ダマスカス北180キロに位置)との連絡は困難になっており、早朝、同市から避難してきた住民の一人によると、夜中に激しい銃声があったという。

その他の反体制運動弾圧をめぐる動き

シリア人権監視団によると、10月1日の死者は3人、これにより9月30日(金曜日)以降の死者数は22人にのぼった。

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ヒムス県タルビーサ市では、9月30日(金曜日)に殺害された青年の遺体が家族に引き渡された。

空軍情報局はヒムス市ハーリディーヤ地区で反体制活動家のマンスール・アタースィー氏を逮捕した。同氏は国民民主変革諸勢力国民調整委員会のメンバー。

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ダマスカス郊外県では、ハラスター市で9月30日(金曜日)の軍・治安部隊の逮捕・追跡作戦で重傷を負っていた青年1人が死亡した。

またシリア人権監視団によると、ダマスカス郊外県のクドスィーヤー市で青年1人が死亡した。同青年は金曜日のデモで重傷を負っていた。

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SANA(10月2日付)は、ダマスカス県カダム区で武装テロ集団が市民4人を殺害した、と報じた。

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SANA(10月2日付)は、ダイル・ザウル県ブーカマール市で爆発物を発見、解除したと報じた。

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フェイスブックの「シリア革命2011」は「ラスタン救済の土曜日」と銘打って反体制抗議行動を呼びかけなかったが、デモは発生しなかった。

反体制勢力の動き

イスタンブールでシリア国民評議会のもとで運動統一をめざす反体制勢力による会合(9月30日開催)が続いた。

地元調整諸委員会によると、「対等な参加を原則とする国民評議会の結成」と「2日以内に公式声明によって発足を宣言すること」に合意した、という。

また地元調整諸委員会によると、この会合には、ダマスカス国民民主宣言、シリア・ムスリム同胞団、シリア国民評議会暫定執行委員会、クルド民族主義諸政党、アッシリア民主連合、シリア革命総合委員会、地元調整諸委員会、シリア革命最高評議会、そしてブルハーン・ガルユーン氏らが参加した。

出席者の一人でシリア国民評議会メンバーのハーリド・ハウジャ氏によると、この会合後にシリア国民評議会議長、各分科会の委員長が選出される。

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国民民主諸委員会国民調整委員会はダマスカス県内で会合を開き、執行部メンバー24人を選出した。

委員会はこの24人をシリア国民評議会に提示し、参加の可否を問う、という。

24人のうち13人が反体制政党の代表者、5人が調整諸委員会の代表者、5人が無所属活動家、1人が総合調整役。

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在米人権調整事務局のヒシャーム・ナッジャール氏は声明を出し、アサド政権がロシア人技術者を暗殺し、その責任を反体制勢力に帰せることで、ロシア政府の支持を確固たるものにしようとしていると述べた。

なお1970年代末から1980年代初めにかけてのシリア・ムスリム同胞団とハーフィズ・アサド前政権の対決時にも、ロシア人技術者が前者の「テロ」の標的となっている。

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政権を離反したハマー市のアドナーン・バックール前検事総長は、アラビーア(10月1日付)で、各国大使館に対して、デモ参加者を保護・支援するよう呼びかけた。

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「アフバール・シャルク」(10月1日付)は、「(リフアト・アサド副大統領は)1982年のハマー市でのシリア・ムスリム同胞団に対する掃討作戦(ハマー暴動、ハマー虐殺)の第一の責任者だ」と『シュピーゲル』紙(2011年6月)に対して述べたアブドゥルハリーム・ハッダーム前大統領の発言に対して、リフアト・アサド前副大統領はフランス司法当局に対して名誉毀損で訴えを起こした、と報じた。

R・アサド前大統領は反体制勢力内に身を置くが、この動きは、B・アサド政権のデモ弾圧への非難を強めていたハッダーム副大統領を貶める効果を持つと思われる。

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シリア人権監視団は、4ヵ月前に逮捕されて以降消息不明となっているバーニヤース市の活動家アナス・シャグリー氏(23歳)の安否に関して「深い懸念」を表明した。

同氏は3月半ば以来、反体制運動を指導し、バーニヤース市民に「恐怖の壁を打ち破れ」と呼びかけてきた。

諸外国の動き

英仏独ポルトガルはシリアに対する安保理決議案の修正案を作成。

ロシアと中国が制裁決議採択に対して拒否権の発動も辞さない態度を示すなか、4カ国は態度を軟化させ、「制裁」という文言を削除し、「明確な措置」とトーンダウンした。

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在シリア米大使館は声明を出し、ロバート・フォード米大使の車列が市民に襲撃された際、子供をひいて、その場から逃げ去ったとの一部報道が事実無根と述べた。

APF, October 1, 2011、Akhbar al-Sharq, October 1, 2011、AKI, September 30, 2011、CNN, October 1, 2011、al-Hayat, October 2, 2011, October 3, 2011、Kull-na Shuraka’, September 30, 2011,
October 1, 2011、Reuters, October 1, 2011などをもとに作成。

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