クサイル市、ラスタン市などで軍・治安部隊による掃討作戦が続くなか、サウジアラビア国王とカタール首相が会談し「シリア政府による殺戮停止に向けて努力を続ける」ことで一致(2012年3月5日)

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国内の暴力

反体制活動家によると、ヒムス県クサイル市、ラスタン市などで軍・治安部隊による掃討作戦が続いた。

Kull-na Shurakā’, March 5, 2012

Kull-na Shuraka’, March 5, 2012

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ヒムス県では、シリア革命総合委員会のハーディー・アブドゥッラーを名のる活動家によると、クサイル市に対して「(ヒムス市)バーブ・アムル地区で起きたのと同様」の攻撃が加えられている、という。

しかしアブドゥッラー氏によると、「自由シリア軍は容易に撤退しないだろう。なぜならだれもバーブ・アムル地区で起きたことの再発を望んでいないからだ」と述べ、離反兵が徹底抗戦の構えを示していることを明らかにした。

一方、SANA(3月5日付)は、軍・治安部隊が完全制圧したヒムス市バーブ・アムル地区に武装テロ集団の攻撃から避難していた住民が続々帰宅していると報じた。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団、ダマスカス県・ダマスカス郊外県調整連合報道官などによると、ヤブルード市に軍・治安部隊が離反兵を追って進入した。

シリア人権監視団によると、ハラスター市の空軍情報部施設に対して、離反兵がRPG弾3発を撃ち込んだ。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アターリブ市で、軍・治安部隊が市民に発砲し、1人を殺害した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サラーキブ市で男性1人が治安部隊に狙撃され死亡した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(3月5日付)によると、クーリーヤ市で武装テロ集団が石油パイプラインを爆破した。

反体制活動からも同市で大きな爆発があったことを認めた。

アサド政権の動き

『クッルナー・シュラカー』(3月5日付)は、イラン人専門家による反体制運動弾圧教練をムハンマド・シャッアール内務大臣が許可したとするシリア内務省総務課長の文書(2012年2月22日付)を公開した。

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SANA(3月5日付)は、アドナーン・マフムード情報大臣が、「シリアは事件発生当初から政治的解決と包括的改革プログラムの実施を目指してきた」と述べたと報じた。

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SANA(3月5日付)によると、アサド大統領はロシアのウラジーミル・プーチン首相に大統領選挙での勝利を祝う祝電を打った。

反体制勢力の動き

リフアト・アサド前副大統領の息子で大統領のいとこのフィラース・アサド氏(はフェイスブック(3月5日付)で、反体制活動家の晩餐に招待されたことが原因で、自宅が「シャッビーハ」に襲撃・破壊されたことを明らかにした。

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クウェート紙『ジャリーダ』(3月5日付)は、反体制活動家ワヒード・サクル氏の娘のディヤーラー・サクル氏と娘2人を自由シリア軍のアバービール大隊が「救出」し、トルコ領内に連れ出したと報じた。

同報道によると、ディヤーラー氏はラタキアの親戚(アラウィー派)から「裏切り者の娘」とみなされ、当局の逮捕を逃れて、ジャブラ市のスンナ派住民のもとに1ヵ月ほど身を寄せていた、という。

レバノンの動き

ワーイル・アブー・ファーウール社会問題大臣(進歩社会主義党)は、『ナハール』(3月5日付)に対して、アサド政権の最近の反体制勢力に対する掃討作戦で「1人に2,000人ものシリア人がレバノンに避難してきた」と述べた。

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レバノン・カターイブ党最高党首のアミーン・ジュマイイル元大統領は、シリア人の避難民の流入に関して、レバノン国内の不安定化につながりかねない「新たなかたちの帰化」がもたらされないよう警鐘を鳴らした。

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「アフバール・シャルク」(3月5日付)は、ファイサル・ミクダード外務次官が、レバノン当局に対して、シリアへの武器密輸と外国人記者の密入国を阻止・摘発するよう要請したと報じた。

またアリー・アブドゥルカリーム駐レバノン・シリア大使も、レバノンに対して戦闘員の潜入を阻止するため「より厳格」な措置を講じるよう求めた。

諸外国の動き

サウジアラビアのアブドゥッラー国王とカタールのハマド・ブン・ハリーファ首相がリヤードで会談し、両国の協力関係などについて意見を交換した。

AFP(3月5日付)によると、両国首脳はシリア情勢についても議論し、シリア政府による殺戮停止に向けて努力を続けることで意見が一致した、という。

首脳会談に列席したサウード・ファイサル外務大臣は、「シリア国民は現体制を望んでいない。シリア政府は力で政権を維持しようとしている」と述べた。

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中国外交部報道官は、李(Li Huaxin)駐シリア中国大使が6日にダマスカスに向かい、シリア政府高官らと会談し、危機打開のための提案」を行うと発表した。

同報道官はまた、「政治的解決がシリアの危機解決の基本だと中国は考えている…。人道口実の外国の介入を拒否する…。シリアの主権を尊重することを前提条件として、人道支援の努力を調整しようとする国連の役割を常に支持する」と述べた。

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フランス社会党のドミニク・ド・ビルパン前外務大臣(大統領候補)は、チャンネル3に出演し、シリア情勢に関して「現地での活動を検討する時が来た」と述べ、アサド政権に対する「限定的な攻撃」を提案した。

一方、『ハヤート』(3月6日付)は、フランス外務省報道官が、シリア国内でフランス兵士が逮捕されたとの一部報道を否定したと報じた。

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ジャズィーラ(3月5日付)は、トルコの複数の消息筋の話として、イスラエルの無人偵察機がシリア国内の反体制活動に関する情報収集活動を行っていると報じた。

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『ワシントン・ポスト』(3月5日付)は、3人の米高官の話として、イランがシリアに対する秘密裏の支援を増強している、と報じた。

米共和党のジョン・マケイン上院議員は、上院で、アサド政権の弾圧に対する反体制勢力の自衛行動を支援するため、空爆を行うべきだと発言した。

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「アフバール・シャルク」(3月5日付)は、ロシア商工会議所副総裁が3月2日、シリア情勢を受けて、ロシアがシリアとの経済協力に関する契約を一時凍結したと述べたと報じた。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、パレスチナのナースィル・カドワ元国連代表をコフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使の次官に任命したと発表した。

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カナダ政府は、EUの追加制裁に呼応するかたちで、サファル内閣閣僚やシリア中央銀行などを新たに制裁リストに加えた。

AFP, March 5, 2012、Aljazeera.net, March 5, 2012、Akhbar al-Sharq, March 5, 2012, March 6, 2012、Facebook, March 5, 2012、al-Hayat, March 6, 2012、al-Jarida, March 5, 2012、Kull-na Shuraka’, March 5, 2012、al-Nahar, March 5, 2012、Naharnet.com, March 5, 2012、Reuters, March 5, 2012、SANA, March 5, 2012、The Washington Post, March 5, 2012などをもとに作成。

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