2012年4月11日のシリア情勢

国内の暴力・反体制運動

シリア革命総合委員会によると、ダルアー県、ヒムス県、ダマスカス郊外県などで軍・治安部隊が少なくとも16人を殺害した。

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ハマー県では、ロイター(4月11日付)が活動家の話として、ハマー市のダッバーガ地区、マジャーイリー地区に軍・治安部隊の戦車少なくとも20輌が進入した、と報じた。

ハマー革命評議会広報局のアブー・ガーズィー・ハマウィーを名のる活動家によると、ハルファーヤー市に軍・治安部隊が突入し、無差別逮捕・摘発を行った。

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ヒムス県では、ロイター(4月11日付)が活動家の話として、ラスタン市が軍・治安部隊による激しい迫撃に曝された、と報じた。

またヒムス市では、地元調整諸委員会によると、カラービース地区、ジャウラト・シヤーフ地区、ハーリディーヤ地区に対して、軍・治安部隊が砲撃・発砲を再開し、シリア人権監視団によると、治安部隊の発砲で1人が殺害された。

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ダルアー県では、地元調整諸委員会によると、軍・治安部隊がタスィール町、インヒル市に突入し、またシリア人権監視団やシリア革命総合委員会によると、ブスラー・シャーム市、マアルバ町、イズラア市にも軍・治安部隊が展開し、銃声が聞こえた。

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ダマスカス郊外県・ダマスカス県では、シリア革命総合委員会のアフマド・ハティーブ氏によると、バラダー河畔のバスィーマ町、ハドラ市、フィージャ市、カフル・ザイト町、ダイル・ムクリン町に軍・治安部隊が突入、またザバダーニー市周辺に軍・治安部隊の増援部隊が向かった。

またシリア人権監視団によると、ハラスター市で軍・治安部隊による厳戒態勢が強化された。

このほか、監視団によると、バルザ区で、治安部隊による大規模な逮捕・摘発が行われた。

地元調整諸委員会やダマスカス県・郊外県革命始動評議会のディーブ・ディマシュキーを名のる活動家によると、上空にはヘリコプターが旋回していた、という。

ディマシュキー氏によると、ヘリコプターによるダマスカス県・郊外県での偵察・威嚇行動は先週から行われている、という。

一方、SANA(4月11日付)は、アクラバー地方でジャマール・ハーリド准将が武装テロ集団によって暗殺された、と報じた。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、クルド山地方の複数の村に対して、軍・治安部隊が砲撃を行った。

同監視団によると、クルド山地方には多数の離反兵が潜伏しているという。

シリア革命総合委員会は砲撃にはヘリコプターも投入されていると発表した。

アレッポ調整連合報道官のムハンマド・ハラビーを名のる活動家によると、マーリア市および近隣の村々に対して、軍・治安部隊が砲撃を続けた。

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シリアの複数の活動家は、インターネットなどを通じて、ダルアー県、ダマスカス県(マイダーン地区、タダームン区、アサーリー地区、カダム区、カフルスーサ区)、ダマスカス郊外県(ドゥンマル市)などでの反体制デモの映像を配信した。

デモでは自由シリア軍への武器供与、アサド政権打倒などが連呼されたが、『ハヤート』(4月12日付)によると、治安部隊は強制排除を行わなかった。

フェイスブック(4月11日付)では、カフルスーサ区のシティー・センターで若者が「殺戮を止めよ」と書かれた赤い布を掲げて抗議行動をする写真が公開された。

Kull-nā Shurakā’, April 11, 2012

Kull-nā Shurakā’, April 11, 2012

Kull-nā Shurakā’, April 11, 2012

Kull-nā Shurakā’, April 11, 2012

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ハサカ県では、『クッルナー・シュラカー』(4月11日付)が、マルカダ市で反体制武装集団の攻撃により政治治安部員を襲撃、12~19人を殺害したと報じた。

アサド政権の動き

SANA(4月11日付)は、国防省高官の話として、シリア「武装部隊が武装テロ集団掃討と領内への主権拡張を成功裏に完了し、2012年4月12日木曜日の午前6時をもって任務を完了することを決定した」と報じた。

この決定は、軍・武装部隊の任務完了を定めたもので、国防省が所轄しない大統領護衛隊、政治治安部、総合情報部、さらには警察(治安維持部隊)の活動を規制するものではない。また軍・武装部隊は12日以降、新たな作戦を開始しないことも明言していない。

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コフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使付のアフマド・ファウズィー報道官は、シリアのワリード・ムアッリム外務大臣がシリア軍の軍事行動を12日朝6時に停止する旨、文書で特使に通達してきたと発表した。

ファウズィー報道官によると、ムアッリム外務大臣はシリア政府が「12日午前6時をもってすべての軍事行動を停止するが、民間人、治安維持部隊、武装部隊、公共財産、私有財産に対して武装テロ集団が行った破壊行為への報復権を留保する」と通達したという。

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シリアのワリード・ムアッリム外務大臣は、国連安保理に書簡を送り、アナン特使と、国連監視団派遣に関して引き続き協力する準備がある」と伝えた。

同書簡では、「シリアはアナン特使に武装テロ集団の武装解除を直接要請したことはなく…、反体制勢力の武器支援を行うと宣言した国々と接触し、こうした支援の継続を抑止する」よう求めたとしつつ、「シリア全土に主権を伸長し、現下の体制を保障し、適切に法を行使する必要がある」と主張し、反体制勢力の掃討の正統性を主張している。

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SANA(4月11日付)は、アサド大統領がビラード・シャーム・ウラマー連合使節団と会談したと報じた。

SANA, April 11, 2012

SANA, April 11, 2012

SANA, April 11, 2012

SANA, April 11, 2012

10日に「エルサレム救済シャーム大会」の発足を宣言した同連合使節団に対して、アサド大統領は、エルサレムのユダヤ化とアクサー・モスク破壊を試みるイスラエルに対抗する必要を強調した。

国内の反体制組織・活動家の動き

シリア国家建設潮流のルワイユ・フサイン代表は、RT(4月11日付)の電話インタビューに応え、アサド政権が日に日に停戦が不可能な条件を提示しているとし、「改革開始に立ちはだかる政府の非協力こそが、危機解決の主な障害だ」と非難した。

その他の国内での動き

SANA(4月11日付)は、政党問題委員会が、人民意思党、国民ブロック党、約束党の政党発足申請の内容を審議した、と報じた。

国外の反体制組織・活動家の動き

シリア国民評議会のバスマ・カドマーニー報道官はロイター(4月11日付)に対して、「木曜日(12日)までに発砲停止に関して進展が見られない場合、(アナン特使)は安保理に対してシリアでの和平案の…再検討が必要だと通達すべき」としたうえで、国連憲章第7章に依拠したかたちでの外国の介入を推し進める必要があるとの見解を示した。

レバノンの動き

SANA(4月11日付)は、9日のレバノン領内でのジャディード・チャンネルの取材班に対するシリア側からの攻撃は「武装テロ集団」の犯行だったと報じた。

同報道によると、「国境の検問所がジャディードの取材班がいるなかで武装テロ集団による激しい銃撃を受け…国境警備隊が応戦した」という。

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レバノンのジャディード・チャンネルはホームページなどを通じて、9日にシリア軍に殺害されたカメラマンのアリー・シャアバーン氏に関して、「シリア軍が意図的に殺害した」と明記し、シリアのメディアが事件をゆがめようとしていると非難しつつ、シャアバーン氏が「アサド大統領の支持者の一人で、局の倉庫にアサド大統領のポスター、ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長、イマード・ムグニーヤ氏の写真などを保管していた」ことを明らかにした。

ジャディード・チャンネルはアサド政権寄りのテレビ局と目されている。

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SANA(4月11日付)は、レバノンの軍事裁判所がシリア人1人を含む4人を武器密輸容疑で起訴した、と報じた。

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バアス党レバノン指導部のファーイズ・シュクル書記長は、ジャディードのアリー・シャアバーン氏殺害に関して、「アサド大統領が事件の詳細を究明して欲しいと声高に述べた」と発表した。

トルコの動き

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は訪問先の中国で記者団に対して「我々の能力の限界にまで追いやらないで欲しい。我々はそこ(シリア)に介入したいと考えていない。しかし、我々にそう決定せざるを得ないようにできるのはシリア政府の方だ」と述べ、シリア領内に緩衝地帯を設置することも辞さないとの意思を示した。トルコの各メディアが報じた。

またシリア軍によるトルコ領内のシリア人避難民キャンプへの発砲に関しては、「明らかな領土侵犯」と強く非難した。

さらにシリア人避難民の流入に関して、首相は中国高官に対して、湾岸戦争後のイラクからのクルド人避難民の流入がもたらした「悪夢の再来」を懸念している、と述べた、という。

なおシリア領内での緩衝地帯の設置に関して、『ハヤート』(4月12日付)は、トルコの野党が、トルコ軍の駐留を不可避とするシリア危機への関与に伴う「混沌」を懸念していると報じた。

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トルコの複数のメディアが報じたところによると、11日夜から12日未明にかけて、キリス県でシリア軍・治安部隊が再びトルコ領内のシリア人避難民キャンプに向けて発砲した。

この発砲での死傷者はなかった。

諸外国の動き

ロシア外務省のゲンナジイ・ガティロフ時間は、ツイッター(4月11日付)で、シリア政府が12日早朝に軍事活動を停止することをロシアと合意したとしたうえで、「今度は反体制武装集団の番だ」と綴った。

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アナン特使はイランを訪問し、マフムード・アフマディーネジャード大統領、アリー・アクバル・サーレヒー外務大臣ら政府要人と会談した。

会談後のサーレヒー外務大臣との共同記者会見で、アナン特使は反体制勢力への武器供与の是非に関して「シリア危機を軍事化すれば惨事だ」と述べた。

その一方、アサド政権に対しては、反体制勢力の要求に「さらに明確に応える」よう求めた。

これに対して、サーレヒー外務大臣は、アナン特使のミッションへの指示を表明するとともに、外国の内政干渉に反対するとのイランの姿勢を改めて明示し、「我々はシリアでの改革が(現)政府のもとでなされねばならないと考えている」と述べた。

AFP, April 11, 2012、Akhbār al-Sharq, April 11, 2012、al-Ḥayāt, April 12, 2012, April 13, 2012、Kull-nā Shurakā’, April 11, 2012、Naharnet.com,
April 11, 2012、Reuters, April 11, 2012、SANA, April 11, 2012などをもとに作成。

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