2011年6月30日のシリア情勢

反体制勢力の動き

反体制活動家のハサン・アブドゥルアズィーム弁護士(シリア国民民主連合スポークスマン、アラブ社会主義連合民主党書記長)が、反体制組織の政治連合体「国民民主的変革諸勢力国民調整委員会」を発足すると発表した。

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アブドゥルアズィーム弁護士によると、この組織は「国内の反体制勢力の努力を統合し、国外の反体制勢力を国内の反体制勢力の一部と位置づける」もので、シリアの左派系政治連合(4組織)、シリア国民民主連合加盟政党、11のクルド民族主義政党、反体制活動家が加わっているという。

しかし、2005年に発足した反体制政治同盟の「ダマスカス宣言」運動は、委員会には参加していないという。

記者会見で発表された政治文書において、委員会は、「治安・軍事的選択肢の停止」、「逮捕者、政治犯全員の釈放」、「非常事態および戒厳令の実質的解除」、「平和的デモ権の承認」、憲法第8条廃止の必要性の承認など8項目の実施を掲げた。

これらを実施するため、委員会は「全国規模の包括的国民大会」を開催し、「包括的な政治・憲政上の変革の行程」の策定を進める必要があると強調した。

そのうえで、移行期政府に一連の改革措置の実施を委託し、新憲法制定などを進めるとの方針を示した。

また「クルド民族をシリアの国民構成の基本的・歴史的一部とみなす」とともに、「領土および国民といった面での国の統合」を保障する策の案出が目標として掲げられた。

委員会はまた、「国民誓約」と題した別の文書も発表し、「騒乱や対立を助長するようないかなる言動も非難する」、「国益、主権、領土および国民といった面での国の統合を損ねる外国の干渉を拒否する」と主張した。

アブドゥルアズィーム弁護士は、これらの文書での提案を「政治的解決にふさわしい基礎」と位置づけ、国民対話を促したいと述べた。

なお、民主的変革諸勢力国民調整委員会は、執行部、(総合)調整委員会、運営委員会の三つの機関から構成されているという。

執行部を構成する活動家は以下19人:ハサン・アブドゥルアズィーム弁護士(総合調整役)、フサイン・アウダート氏、(副調整役)、ブルハーン・ガルユーン氏(在外担当副調整役)、アーリフ・ダリーラ氏、ミシェル・キールー氏、ファイーズ・サーラ氏、ハーズィム・ナハール氏、アブドゥルアズィーズ・ハイイル氏、ラジャー・ナースィル氏、ムニール・ビーダール氏、イリヤース・ダッバーナ氏、ムハンマド・サイイド・ラッサース氏、ジャマール・ムッラー・マフムード氏、ムハンマド・ムーサー氏、サーリフ・ムスリム・マフムード氏、ルーザー・ブー・アリー・ヤースィーン氏、バッサーム・マリク氏、ムハンマド・アンマール氏。

運営委員会には、アブドゥルアズィーム代表、国内担当副調整役のアウダート氏、国外担当副調整役のガルユーン氏などからなる。

シリア政府の動き

DP-News(6月30日付)によると、アサド大統領はダマスカスの大統領公邸で、「我々と最大のシリア国旗を掲げよう、手に手をとって、明日は我々のもの」キャンペーン(6月15日)を発案した若者らと会談した。

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SANA, June 30, 2011

SANA, June 30, 2011

SANA(6月30日付)によると、アレッポ市サアドゥッラー・ジャービリー広場、マーリア市(アレッポ県)、タルトゥース市、ハドル村(クナイトラ県)、サフナーヤー市(ダマスカス郊外県)、ダルバースィーヤ市(ハサカ県)で、アサド大統領の包括的改革プログラムを支持するデモが行われ、各会場には数千人の市民が集まった。

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権連盟によると、アレッポ市複数の地区で、一般的自由と民主主義を求めるデモが発生した。

同連盟によると、デモが発生したのは、サラーフッディーン地区、サイフ・ダウラ地区、アアザミーヤ地区、バーブ・ファラジュ地区、ブスターン・カスル地区、マシャーリカ地区、シャッアール地区、ファイイド地区、裁判所前で、参加者は数百人程度だった。

しかし複数の目撃者によると、治安部隊が警棒を用いてデモを強制排除し、参加者複数を逮捕して、事態を収拾、デモの一部は「ほどなく政権を支持するデモにとって代わられてしまった」という。

また活動家のラーマーン・カンジュー氏は「目的は公共の広場での集会だった。だが参加者は体制支持者に排除されてしまった」としたうえで、「数十人が負傷し、10人以上が逮捕された」と述べた。

一方、SANA(6月30日付)によると、アレッポ市内のサアドゥッラー・ジャービリー広場(サアドゥッラー・ジャービリー地区)で「改革方針を支持し、単一の人民の騒乱と分断の試みを拒否するための大規模行進」が行われた。

同通信はまた「アレッポのさまざまな国民・青年諸団体が車で行進を行い、参加した車は3,000台に及んだ。行進はアレッポからダマスカス、すなわち国の北部から南部へと向かった」と報じた。

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イドリブ県では、『ハヤート』(7月1日付)によると、軍の戦車約60輌、兵員輸送車輌100輌がカフルナブル市とカンスフラ村に進入した。

複数の活動家・目撃者によると、軍の展開によってバーラ村、ラーミー村、マルイヤーン村、カフルラーハー市から南部およぶ西部へと住民は避難し、イドリブ市での死者数は16人に増加したという。

一方、SANA(6月30日付)によると、ザーウィヤ山で28日に反体制武装集団の要撃を受け、拉致され炊いた軍・治安部隊兵士を解放するための特殊作戦が行われ、兵士の解放に成功、武装集団メンバーを殺傷、逮捕した。

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ダマスカス県では、クッルナー・シュラカー(6月30日付)によると、ダマスカス大学学生寮で多数の学生が治安当局に一時身柄を拘束された。

諸外国の動き

アナス・フォー・ラスムセンNATO事務局長は、アサド政権による民間人への暴力行使に反対の意を示しつつも、NATOがシリアに介入する意思がないと明言した。

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ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外務大臣は、アラブ世界の体制転換をめざす西側の呼びかけが「無責任で、人類の利益に反している…。革命ではなく発展的方法で変革はなされねばならない」と述べた。

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『ガーディアン』(6月30日付)は、反体制勢力筋の話として、米国務省高官が、反体制勢力に対し、アサド政権との対話に応じるよう求めていると報じた。

AFP, June 30, 2011、Akhbar al-Sharq, June 30, 2011、DP-News, June 30, 2011、The Guardian, June 30, 2011、al-Hayat, July 1, 2011, July 2, 2011、Kull-na Shuraka’, June 30, 2011、Naharnet, June 30, 2011、Reuters, June 30, 2011、SANA, June 30, 2011などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

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