各都市でアサド大統領による包括的改革プログラム、国民対話を支持するデモが行われるなか、米国務省が駐米シリア大使を召還(2011年7月9日)

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反体制勢力の動き

民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表はAKI(7月9日付)に、「アサド政権は政治的解決を望んでいない」と述べた。

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シリア人権監視団はAFP(7月9日付)に対して、8日の反体制デモで治安当局が200人以上を逮捕したと発表した。

同監視団によると、治安当局はヒムス県、ダマスカス県、ダマスカス郊外県、バーニヤース市(タルトゥース市)、イドリブ県でのデモで200人以上を逮捕したという。

シリア政府の動き

SANA, July 9, 2011

SANA, July 9, 2011

SANA(7月9日付)によると、サラミーヤ市(ハマー県)、アレッポ市、ハサカ市、タルトゥース市、ダマスカス県ティシュリーン公園など各地でアサド大統領の包括的改革プログラム、国民対話を支持するデモ集会が行われ、多数の市民が参加した。

またダマスカス県ジスル・アブヤド地区のフランス大使館前、ラウダ地区の米大使館前では、両国大使のハマー市訪問に抗議するデモが行われ、若者数百人が参加した。

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al-Hayat, July 10, 2011

al-Hayat, July 10, 2011

シリア・アラブ・テレビ(7月9日付)は、アドナーン・ディーブを名乗る市民が、「6月7日にダマスカス県で武装集団に拉致され…、ラーミー・マフルーフに協力し、金銭を受け取り、抗議デモで破壊行為を行ってきたとカメラの前で証言するよう強要された」と語る映像を放映した。

ディーブ氏によると、武装集団はまた「雇われたグループのなかにヒズブッラーがいたかどうかは分からないが、ペルシャ語を話す者がいた」と証言するよう強要されたとも付言した。

国内の暴力

ハマー県では、『ハヤート』(7月10日付)によると、ハマー市で8日のデモの犠牲者14人の葬儀が行われた。

諸外国の動き

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、シリアの治安部隊兵士が、命令を拒否すれば処刑されると脅されながら、追い込んだデモ参加者への発砲を余儀なくされていたとする報告書を発表した。

この報告書は、レバノンとトルコに脱走した兵士12人の証言をもとに作成され、「デモ参加者への発砲を拒否した者は自らを死に至らしめることになる」と指摘している。

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米国務省は声明を出し、「駐米シリア外交使節団が米国内で平和的デモに参加したシリア人を監視していたとの報告書を受け取った」と発表、イマード・ムスタファー駐米シリア大使を呼び出したと発表した。

声明によると、エリック・ボスウェル国務次官補(安全保障担当)が7月6日、ムスタファー大使を国務省に呼び出し、「シリア大使館職員の活動にかかる懸念すべき問題について解答を求めた」という。

そのうえで声明は、国務省が「シリア大使館職員が、ムスタファー大使の指示のもと、米国で平和的デモに参加するシリア人をビデオや映像を駆使して監視しているとの報告を受けた」と続けた。

『ハヤート』(7月10日付)が得た情報によると、ムスタファー大使は7日に「年休」でシリアに一時帰国した。

シリアには数週間滞在するものと見られる。

AFP, July 9, 2011、Akhbar al-Sharq, July 9, 2011、AKI, July 9, 2011、al-Hayat, July 10, 2011, July 11, 2011、Kull-na Shuraka’, July 9, 2011、Naharnet,
July 9, 2011、Reuters, July 9, 2011、SANA, July 10, 2011などをもとに作成。

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