アサド大統領は、シリア・チャンネルとイフバーリーヤ・チャンネルの共同インタビューに応じ、米国によるダーイシュ(イスラーム国)のアブー・バクル・バグダーディー指導者の殺害を、米国が言うことは証拠がなければ信じられないとしたうえで、同じような人間が再生産され、ダーイシュも必要に応じて別の名前で再生され、米国がこれを操ることになるだろう、と述べた。
また、シリア北東部の処遇にかかるロシアとトルコの合意に関しては、あくまでも暫定的なもので、すべてを実現するものではなかったが、トルコや米国の侵略や占領を抑止する効果があったと前向きな評価を下し、最終的にはこの地域の支配を完全に回復するとの意志を強調した。
一方、クルド人については、そのほとんどが常に国家と良い関係を築いており、真に愛国的な考えを持っていると評価した。
30日にジュネーブで開幕した制憲委員会(憲法委員会)については、その設置において決して譲歩はしなかったと振り返る一方、そこで国益に合致したものが案出されるのであれば、新憲法であっても同意するが、国益に反するのであれば、いかなる憲法改正・改悪も拒否すると述べた。
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(ドナルド・トランプ米大統領が、米軍によるダーイシュ(イスラーム国)のアブー・バクル・バグダーディー指導者を殺害作戦に対するシリアの支援に謝意を示したことに関して)「この作戦にはまったく関与していない。メディアで耳にしただけだ…。我々は米国のいかなる機関ともコミュニケーションをとっていない。より重要なこととして、我々はこの作戦が実際に行われたかどうかも承知していない。レーダーには航空機は映っていなかった。なぜ、バグダーディーの遺体を見せないのか?! 彼らは(遺体の)残骸と言っている。ビン・ラーディンと同じシナリオだ…。なぜ彼らはビン・ラーディンに対する作戦の全貌を隠したのか。そして、今度はバグダーディーに対する作戦だ。米国の偽りの一部だ。我々は証拠が示されなければ、彼らの言うことは信じない」。
「バグダーディーが…体現していた思想は過激なワッハーブ思想だ。この思想は200年以上も続いている。この思想がなくならないかぎり、バグダーディーの死は何の影響も及ぼさない…。個人としてのバグダーディーについてだが、彼がイラク領内の米国の刑務所にいたことは周知の通りだ。彼らが出獄させ、役割を演じさせたのだ。いつでも交換できる個人に過ぎない…。米国の政策はハリウッドと違わない。想像に頼っている…。バグダーディーは別の名前で、別の人物として再生されるだろう。おそらくダーイシュそのものも、必要に応じて、別の名前で再生される。思想そのものは、その利用そのものは続く。そしてこれを操るのは米国だ」。
(シリア北東部の処遇に関するロシアとトルコの協議・合意に関して)「ロシアの政策は現実に対処するかたちで行われており、これまでに二つのことが実現された。第1に、武装部隊(人民防衛隊YPG)主体のシリア民主軍」の北部から南部への撤退であり、これはシリア軍との連携のもとに行われ、(これを受けて、第2に)同軍はトルコが占領していない北部に展開した。これはトルコの存在を廃するものではないが、良いことだ…。しかし、この合意は暫定的なものであって、持続的なものではない…。我々は最終目標と戦略を区別しなければならない…。この合意は良い合意だ…。なぜなら、もう一つの側面があるからだ。トルコの進駐は…米国が望むところでもあったからだ。トルコには野望があるが、ロシアとの関係…が、それを抑制した。さらに、米国が北部をもてあそぶ道を絶った…。だから、我々はこの合意が前向きな一歩だと言っている」。
「アスタナ(・プロセス)を通じてトルコの撤退についての合意がなされたが、まだそれは履行されていない。だが、我々はイドリブ県を解放する。政治プロセス、政治対話、テロリストを退去させるさまざまな試みが行われるなかで1年間の遅れが生じているが、すべての機会を活かすことで、最終的には、軍事プロセスを通じて解放する。もちろん、漸進的にではあるが…。北部でも同じことが起こるだろう」。
「トルコは(シリアでの)この戦争における米国の代理人に過ぎない。そして、我々が戦ってきたあらゆる戦場で、トルコの代理人に対峙してきた。この代理人が出て行かないのであれば…、戦争以外の選択肢はない。これは自明のことだ…。だが、我々はさまざまな政治プロセスが行われる余地を残している」。
(米軍の撤退は米国、トルコ、そしてロシアの合意の一環ではなかったのかとの問いに対して)「ロシアはこの合意(米軍撤退)の一部をなしていないのは確実だ。ロシアの合意は常に公表されているからだ。トルコとの合意、ロシア仲介による我々とクルド勢力の合意…も当初から公表されてきた」。
「私は彼(トランプ大統領)はましな大統領だと言いたい。なぜか? 彼の政策が良いからではない。彼はより透明性のある大統領だからだ。これまでの大統領は…人権、米国の崇高な価値観…を擁護するような姿勢を示して、犯罪を繰り返してきた…。だが、トランプは「我々は石油が欲しい」とはっきり言う。これが米国の政策の真実だ」。
「米国が言うことは、これまでと同じように…、いずれも信用ならない。敵に対するものであれ、友人に対するものであれ、結果は一つだ」。
「シリア軍の進駐は単に治安・軍事活動を行うためだけではない。シリア軍が進駐するということは、国家が入るということだ。国家が入るというのは、国家が提供しなければならないすべてのサービスが入るということだ。このような合意が(ロシア仲介のもとにシリア民主軍との間で)交わされた。我々は、全域ではないが、ほとんどの地域に入った。いぜんとして困難はある。我々が介入できたのは、トルコの侵攻に先だって、これらのグループ(シリア民主軍)と直接、そして古くからの関係があったからだ」。
(クルド人との共存は可能かとの問いに対して)「クルド人のなかに、米国の手先のような地位にいた者がいたことは確かだ。だが、アラブ人にも似たようなことはあった…。こうした状況はシリアのほとんどの階層にもあてはまる。一部のクルド人グループがこうした活動をするなかで、自分たち自身をクルド人だけではく、アラブ人の代表、さらにはジャズィーラ地方におけるそれ以外のすべての階層を代表していると位置づけ、米国が武器や資金を支援したことが間違いだった…。そこで暮らしている人々はいずれもクルド人だ。現在対処しているのは一部の(クルド人からなる)政党だと言うべきだ。ほとんどのクルド人は、常にシリアの国家と良い関係を築いており、つねに我々とコミュニケーションをとり、真に愛国的な考えを示してきた…。だから、もちろん我々は共存できる」。
「こうしたグループは、シリアという国家が排外主義的だと疑う。バアス党が排外的な党だと疑う。だが、統計問題が生じた1962年に、バアス党は政権の座にいなかった…。(しかし)分離主義なアジェンダが存在する。ここが「シリアのクルディスタン」で、クルディスタンの一部だと表記するような地図があったりする。我々には、領土の統一性を守る権利があり、こうした分離主義的なアジェンダに警戒する権利がある。とはいえ、我々にとって、シリアが多様でアルということには何らも問題もない。むしろ、シリアの多様性とは美しく、豊かなものであり、力を意味する。豊かさや多様性と、分離、分割、国家解体は別問題だで、それが問題なのだ」。
(シリア政府の支配下で数年にわたりクルド人が暮らしたことの弊害に関して)「第1に子供たち、そして第2に若い世代にとって問題だ。多くの問題があるが、こうした世代は、国家や法が何を意味するのかを知らずに育ってしまった…。だが、より深刻なのは、アラビア語を学ばないで育ってしまった子供たちが一部の地域にいることだ。あるいは、その一部は過激主義の概念、国家に反する概念、さらには祖国に反する概念を学んでしまった…。こうした問題に関して、特に教育省、国防省、内務省が対応を検討している」。
「米国は占領者だ…東部にいようが、北部にいようが、南部にいようが…。だが我々はどのようにこの現実に対処すべきか? 我々は米国と対決するために軍を送るだろうか…。我々にその能力はあるのか? 我々シリア人にとって、こうした言葉の意味は明白だと思う…。もし抵抗が生じれば、米国が辿る道は、イラクで起きたのと同じものとなろう。だが、抵抗という言葉は、買弁とは逆の意味の大衆的な状態を必要とする。大衆的で愛国的な状態が抵抗であり、こうした状態において国家は、占領者に対する大衆的な抵抗を全面支援するのが当然の役割となる…。だが、米国であれ、米国以外の国であれ、トルコであれ、こうした国をこの地域にもたらしたのが、シリア人の手先、裏切り者のシリア人であることを忘れてしまうというのは、非論理的ではない…。我々はこうしたシリア人に対処し…、愛国心を取り戻させねばならない…。我々は占領に対して一つになる必要があり、そうした段階にいたったとき、米国は撤退し、シリアにとどまる機会はなくなるだろう」。
「(ゲイル・)ペデルセン氏(シリア問題担当国連特別代表)が包括的な軍事作戦なしにその問題(イドリブ県の問題)を解決するツールと能力を持っているのであれば、それはすばらしい…。我々はそれを妨げはしない。問題は簡単だ。トルコに言って、トルコ人を説得して、民間人と戦闘員を分けてもらえばいい…。もっと簡単なのは、誰が戦闘員で誰が非戦闘員なのかを区別する方が手っ取り早い。だが、実際のところ、テロとの戦いは理論、演説、説教では済まされない」。
「しかし、こうした機会(政治的行動)が潰えた場合、民間人を救出するために軍事行動を実行せざるを得ない。民間人を戦闘員の支配下に留めたままでは、彼らを救出できない。西側の論理は、民間人を救出するために軍事行動を停止せよ、というものだ。だが、これは逆の論理だ。もちろん、それは意図的で小賢しいものなのだが。テロリストの支配下に民間人がいるというのが、西側にとっての民間人保護なのだ…。しかし、実際は軍が介入することが民間人を保護することになる。民間人をテロリストの支配下に留めれば、テロリストを資することになるし、民間人殺害に貢献することになる」。
(ロシアの圧力でイドリブ県への総攻撃が中止されたとの記者の言葉に対して)「圧力という言葉は正確ではない。我々はロシア、イランと一つの戦いを行っている…。我々は何度も、作戦の日程について三者で合意してきた。作戦が延期されることも何度もあった…。一方、我々はこれらの地域(イドリブ県)の民間人とコミュニケーションをとっている。事実、これらの地域の民間人を我々の支配地域に移送する余地を可能な限り設けている」。
「(ロシアの・ヴラジミール・プーチン大統領によるシリア国内での)大規模軍事作戦の終了宣言はテロとの戦いの終わりを意味しない」。
(イドリブ県の反体制武装集団を追放するかとの問いに)「トルコはそれを受け入れてない。ただ、これは我々には関係のないトルコの問題だ…。トルコに去らない者の前には二つの選択肢がある。国家の庇護のもとに復帰し、社会復帰をめざすか、戦争かだ。我々にとっても、彼らにとっても、それ以外の選択肢はない」。
(トルコ政府との接触を行っているかとの問いに対して)「こうした会談はすべてのレベルにおいて治安関連のものだ。ただし、レベルは様々だ。その一部、2、3階は両国国境に近いシリア側のカサブ市(ラタキア県)で行われた。ロシアでも何度も行われた…。ただし、真の成果は得られなかった…。会談は二国間ではなく、すべて三カ国(ロシアの仲介)によるものだ」。
(占領国であるトルコ政府の高官となぜ接触してきたのかとの問いに対して)「トルコとイスラエルの間には幾つか違いがある。我々はイスラエルの存在を法的に承認していない。イスラエル国民の存在を承認していない。イスラエルの民というのは紀元前に存在していただけだ…。一方、トルコ国民は存在する。彼らは隣人であり、彼らとの間には共通の歴史がある…。トルコは現存する国家であり、隣国だ」。
「彼ら(制憲委員会の反体制派代表)の一部は…いわゆる「穏健な反体制派」を装っている…。しかし、かれらはヌスラ戦線(シャーム解放機構)と直接つながりがある(組織の)名前を挙げることを余儀なくされてきた。我々はそれらがヌスラ戦線だという理由で拒否してきた…。彼らはテロリストだ。だが、結局のところ、我々はこうした人物に同意した。それがおそらくサプライズ(妥協)に見えたのだろう。なぜなら、我々は、結果、背景、所属、メンバーが同じだと言ってきたからだ…。操り人形そのものだ」。
「制憲委員会は、テロリストが残留したままでは、問題を解決しない?!… 問題解決はテロ撲滅から始められる。問題解決は外国の干渉を停止することから始められる。シリア人どうしの対話はこれを保管し、これに貢献するものだが、これら二つにとって代わるものではない…。選挙は徹頭徹尾、(国連の監視下ではなく)国家の監督のもとに行われるだろう」。
「我々は憲法を改正するのか、新憲法を前にするのか? 我々が憲法の条項を改正し、投票にかけたことで、それは新憲法となった。改正と新憲法の間には違いはない…。我々にとっての関心は、この委員会(制憲委員会)の会合で何がもたらされ、それが国益と合致すると考えられるかということだ。(国益に合致するなら)新しい憲法になったとしても、我々は同意する。たとえ、1項目だけであったとしても、それが国益に反するのであれば、我々はこれに反対するだろう」。
(国内で複数のビジネスマンが汚職で逮捕されていることに関して)「汚職撲滅の一環というのは正しいが、それはキャンペーンではない。なぜなら、キャンペーンという言葉は、我々がそれを今始めたかのような印象を与える。キャンペーンとは、始まりと終わりがあり、一時的なものだ」。
AFP, October 31, 2019、ANHA, October 31, 2019、AP, October 31, 2019、al-Durar al-Shamiya, October 31, 2019、Reuters, October 31, 2019、SANA, October 31, 2019、SOHR, October 31, 2019、UPI, October 31, 2019などをもとに作成。
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