イドリブ県でロシア・トルコ軍合同パトロールが座り込みデモの妨害を受ける(2020年4月8日)

英国を拠点に活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、ロシア・トルコ首脳会談で合意された停戦が発効(3月5日深夜)してから34日目となる4月8日、シリア・ロシア軍、トルコ軍の爆撃は確認されなかった。

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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を確認しなかったと発表した。

トルコ側の監視チームも停戦違反を確認しなかった。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ロシア軍とトルコ軍がアレッポ市とラタキア市を結ぶM4高速道路で合同パトロールを実施したが、これに反対する座り込みデモの参加者に進行を妨害された。

両軍合同部隊はサラーキブ市からムサイビーン村に向かってパトロールを開始したが、タルナバ村近くでデモ参加者の投石を受け、パトロールを中止、サラーキブ市に引き返した。

これに関して、トルコのフルシ・アカル国防大臣は声明を出し「我々はイドリブ県でロシア軍との3度目となる合同パトロールを完了した」と発表し、パトロール継続の意思を示した。

アカル国防大臣はまた、イドリブ県内で多くの停戦違反があるとしつつも、こうした違反は「個人行動」であり、戦闘の収束状態は続いているとの見方を示した。
アナトリア通信(4月8日付)が伝えた。

ドゥラル・シャーミーヤ(4月8日付)によると、合同部隊はナイラブ村で座り込みデモの妨害を受けた。

一方、トルコ軍は、コンクリート・ブロックや兵站物資を積んだ貨物車輌30輌をカフル・ルースィーン村に違法に設置されている国境通行所からシリア領内に進入させた。

車列はM4高速道路沿線方面に向かった。

トルコ軍はまた、アリーハー市に新たな拠点を設置した。

これにより、シリア領内のトルコ軍監視所・拠点は59カ所となった。
(シリア人権監視団の計算だと57。なぜならサラーキブ市が3カ所のはずなのに、2カ所で計算されているため)

トルコ軍の監視所・拠点が設置されている場所は以下の通り:

監視所

イドリブ県:サルワ村、タッル・トゥーカーン村、サルマーン村、ジスル・シュグール市(イシュタブリク村)
アレッポ県:登塔者聖シメオン教会跡、シャイフ・アキール山、アナダーン山、アレッポ市ラーシディーン地区(南)、アイス村(アイス丘)
ハマー県:ムーリク市、シール・マガール村
ラタキア県:ザイトゥーナ村

拠点

イドリブ県:マアッル・ハッタート村、サラーキブ市(3カ所)、タルナバ村、ナイラブ村、クマイナース村、サルミーン市、タフタナーズ航空基地、マアーッラト・ナアサーン村、マアッラトミスリーン市、マストゥーマ軍事キャンプ、タルマーニーン村、バルダクリー村、ナフラヤー村、ムウタリム村、ブサンクール村(2カ所)、ナビー・アイユーブ丘、バザーブール村、ラーム・ハムダーン村、アブザムー町、ムシャイリファ村、タッル・ハッターブ村、ビダーマー町(2カ所)、ナージヤ村、ズアイニーヤ村(2カ所)、ガッサーニーヤ村、クファイル村、バクサルヤー村、フライカ村、バルナース村、アリーハー市
アレッポ県:アナダーン市、アレッポ市ラーシディーン地区、ジーナ村(2カ所)、カフル・カルミーン村、タワーマ村、第111中隊基地、アターリブ市、ダーラト・イッザ市、カフル・ヌーラーン村、バータブー村
ハマー県:ムガイル村

なおこのほかにも、トルコ軍はM4高速道路沿線に監視ポスト14カ所を設置している。

このほか、シリア軍が「決戦」作戦司令室の支配下にあるアーフィス村を砲撃した。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍がカフル・ハラブ村、アターリブ市一帯で「決戦」作戦司令室と交戦した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ジッリーン村で住民1人がオートバイに乗った2人組の武装集団に撃たれて死亡した。

AFP, April 8, 2020、Anadolu Ajansı, April 8, 2020、ANHA, April 8, 2020、AP, April 8, 2020、al-Durar al-Shamiya, April 8, 2020、Ministry of Defence of the Russian Federation, April 8, 2020、Reuters, April 8, 2020、SANA, April 8, 2020、SOHR, April 8, 2020、UPI, April 8, 2020などをもとに作成。

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