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国内の暴力
ハマー県では、ハマー市で、治安維持部隊のアーディル・ムスタファー准将と治安部隊兵士8人が殺害された。
この事件に関して、SANA(1月19日付)は、「武装テロ集団」の発砲により、同准将と治安維持部隊兵士2人が「戦死」したと報じた。
しかし地元調整諸委員会は、ムスタファー准将が市民への発砲命令を拒否した離反兵に射殺されたと発表した。
また同諸委員会によると、ムスタファー准将は軍事情報局付で、ハマー市内で市民発砲命令など反体制運動弾圧を指揮してきた。
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シリア革命総合委員会によると、軍・治安部隊がハマー市に対して「非常に大規模な治安(回復)作戦」を展開し、民間人5人を殺害した。同市は現在軍・治安部隊によって封鎖されており、各地区で銃声が聞こえている、という。
革命調整諸組織によると、ハマー県ハマー市では軍と離反が激しく交戦市、少なくとも25人が殺害された。
一方、SANA(1月19日付)によると、ムハルダ市で獣医のナビール・サクルージュ氏が武装テロ集団に誘拐され、その遺体が発見された。
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イドリブ県ではシリア人権監視団によると、ザーウィヤ山のバスナクール村での治安部隊の要撃により、4人の反体制活動家が殺害された。
またハントゥーティーン村の離反兵の援護を行っていたファルキヤー村出身の離反兵1人が殺害された。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のバーブ・フード地区で市民2人が迫撃砲や狙撃によって死亡した。
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ダルアー県では、複数の活動家によると、ダーイル町で離反兵1人が殺害された。
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アレッポ県では、複数の活動家によると、アレッポ市で大学寮で反体制デモが発生し、治安部隊により強制排除された。
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ダイル・ザウル県では、複数の活動家によると、マヤーディーン市で拷問を跡が残った市民の遺体が発見された。
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SANA(1月19日付)によると、ダマスカス郊外県ダーライヤー市で、武装テロ集団がハサン・ブーシュナーク前市長を狙撃、暗殺した。
またダマスカス郊外県電力課のフィラース・カッダール課長が武装テロ集団に襲撃され殺害された。
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なおシリア革命総合委員会は、治安部隊の発砲で離反兵3人を含む、少なくとも16人が殺害されたと主張している。
また革命調整諸組織によると、またダイル・ザウル県、イドリブ県、ヒムス県の各都市、ダマスカス郊外県キスワ市でも交戦があったという。
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シリア人権監視団は、アラブ連盟監視団派遣後、445人の民間人が殺害されたと発表した。
同監視団によると、加えて治安部隊兵士146人が殺害され、うち27人は離反兵だったという。
(なおこの犠牲者数には1月の自爆テロでの犠牲者は含まれていない)
反体制勢力の動き
自由シリア軍のリヤード・アスアド大佐(自称)は、声明を出し、自身が「自宅監禁」下に置かれているとのクウェート日刊紙『スィヤーサ』(1月18日付)の報道を否定した。
同声明では自身の階級を「少将」ではなく「大佐」としている。
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シリア・ムスリム同胞団も広報局が声明を出し、クウェート日刊紙『スィヤーサ』(1月18日付)の報道をねつ造と避難し、否定した。
一方、シリア・ムスリム同胞団のムハンマド・リヤード・シャカファ最高監督者はロイター通信(1月19日付)のインタビューに応じ、そのなかで、国連安保理にアサド政権の弾圧に対する「抑止的措置」を講じるようアラブ連盟は圧力をかけるべきだと述べた。
外国の干渉に関しては、「航空禁止空域と安全地帯」の設置を求める一方、軍事干渉には反対との姿勢を示した。
また自由シリア軍を名のる離反兵(脱走兵)の武力行使に関しては、「自衛のみに限定されるべき」と述べた。
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反体制活動家へと転身したイマード・ガルユーン人民議会議員は『デイリー・テレブラフ』(1月19日付)に対して、アサド政権が3ヵ月以内に崩壊するだろうとの見方を示した。
アサド政権の動き
SANA(1月19日付)は、アサド大統領が「シリアへの外国の干渉を拒否し、対話と改革を支持するアラブ人民イニシアチブ使節団」と会談し、「シリア国民は現下の状況を克服し、強力なシリア建設の能力を持っている」と応えたと報じた。
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『クッルナー・シュラカー』(1月19日付)は、信頼できる複数の消息筋の話として、アサド政権が、ヒズブッラーの拠点であるベイルート郊外(ダーヒヤ)を模した政治的拠点(地盤地域)をダマスカス県南部のマッザ区、オートストラード地区、スーマリーヤ地区、ダマスカス郊外県のラブワ市、ダマスカス国際空港、ムウダミーヤト・シャーム市に建設しようとしている、と報じた。
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『クッルナー・シュラカー』(1月19日付)は、アサド政権中枢で、アサド大統領の指導力、とりわけ軍事的指導力を疑問視する共和国護衛隊などの軍・治安部隊の高官がアサド大統領を退任させ、弟のマーヒル・アサド大佐(共和国護衛隊)を後任に推すべきだと主張するようになっていると報じた。
同報道によると、アサド大統領退任に向け、マーヒル・アサド大佐、おじのリフアト・アサド前副大統領、マフルーフ家などで調整が行われているという。
(ただし上記報道の真偽は定かではない。)
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スフィヤーン・アッラーウ石油鉱物資源大臣は、西側諸国の経済制裁により国内の石油セクターの損失額が2011年9月以降で2,000,000,000米ドル以上に昇ったことを明らかにした。
アラブ連盟および国際社会の動き
アラブ連盟監視団のアドナーン・ハディール作業部長は、1月22日に開催されるシリア問題閣僚委員会会合と外相会合に関して、監視団の任務延期などに関して依然として何らの指示も受けてないと述べた。
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国際人権団体のAvaazはアラブ連盟監視団派遣後のシリアで746人が殺害され、治安部隊が20以上の反体制デモに攻撃を加えたと発表した。
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アラブ諸国(シリア、エジプト、アルジェリア、サウジアラビア、スーダンなど)の142の人権団体、NGOから構成されるアラブ市民組織連立は共同声明を出し、アラブ連盟に対して監視団をシリアから撤収するよう呼びかけた。
また国連安保理に対して「シリアでの暴力に対処するための決定を下す」よう求めた。
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NATOのバルテレス事務局長は、シリアへの軍事干渉の可能性を改めて否定した。
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フランスのアラン・ジュペ外務大臣は『Ouest France』(1月19日付)に対して、カタールのハマド・ブン・ハリーファ首長が提案したシリアへのアラブ軍の派遣に関して、「現下の地域情勢において、我々はこのようなシナリオに動くことはない」と述べた。
そのうえで、アラブ連盟に対して監視団報告書を国連安保理に提出するよう呼びかけた。
AFP, January 19, 2012、Akhbar al-Sharq, January 19, 2012, January 20, 2012、The Daily Telegraph, January 19, 2012、al-Hayat, January 20, 2012、Kull-na Shuraka’, January 19, 2012、Ouest France, January 19, 2012、Reuters, January 19, 2012、SANA, January 19, 2012などをもとに作成。
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