トルコ軍と国民軍による水道水供給停止でハサカ市および周辺の農村地帯が深刻な水不足に(2020年8月20日)

シリア人権監視団は、シリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるハサカ県ハサカ市およびその周辺の農村地帯が深刻な水不足に見舞われていると伝えた。

これに関して、SANA(8月20日付)は、100万人の住民が水不足と新型コロナウイルス感染症拡大の脅威という二重苦に晒されていると伝えた。

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トルコとその支援を受ける国民軍が8月に入り、ラアス・アイン市近郊のアルーク村にある揚水所からの水道水の供給を保守点検を口実に断続的に停止していることが、水不足の原因。

もっとも最近では、8月13日に水道水の供給が停止された。

トルコ軍と国民軍が水道水の供給停止に踏み切るのはこれが8度目。

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ハサカ県水道局のマフムード・アクラ局長は、SANAの特派員に対して、「アルーク村の揚水所での復旧作業は未だに行われていない」としたうえで、「住民の苦難は気温が上昇しているなかで続いており、現時点でアルーク揚水所以外に水の供給源がないなかで、より多くの水が必要になっている」と危機感を露わにした。

アクラ局長によると、緊急対策として、カンシャーファ村、タッル・ブラーク町、ハンマ村で表層取水を行い、政府や関連機関のタンクローリーで水道水を運搬する一方、住民が井戸を堀って地下水を汲み上げるなどしているが、井戸水は飲料には適していないという。

そのうえで、局長は「占領国のトルコがアルーク村の揚水所を水道局の労働者に引き渡すのが唯一の解決策だ。それ以外の方法で一時的に解決したとしても、問題は続くことになる」と強調した。

シリア人権監視団の複数の情報源によると、トルコは北・東シリア自治局に対して支配地域から「平和の泉」地域への電力供給量を増加するよう要求しているが、北・東シリア自治局がこれを拒否しているために、対抗措置としてアルーク村の揚水所からの水道水供給を停止しているという。

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水道水供給停止に対抗して、北・東シリア自治局もラアス・アイン市への電力の供給を停止している。

また、ANHA(8月20日付)は、北・東シリア自治局のジャズィーラ地域ハサカ地区の水道局が、アルーク揚水所の代替施設として、ハンマ村で新たな井戸を掘削し、水道水の供給を行っていると伝えた。

ハサカ地区の水道局は、50の井戸を新たに掘削することを計画、現在までに25の井戸を掘削、稼働させているという。

AFP, August 20, 2020、ANHA, August 20, 2020、AP, August 20, 2020、al-Durar al-Shamiya, August 20, 2020、Reuters, August 20, 2020、SANA, August 20, 2020、SOHR, August 20, 2020、UPI, August 20, 2020などをもとに作成。

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