「シリア難民・避難民の帰還に関する国際会議」の第5回シリア・ロシア合同会合が4日間の日程を終えて閉幕:西側諸国によるシリアへの違法な一方的制裁、シリアの天然資源の盗奪が、難民とIDPsの帰還を阻害していると非難(2022年10月20日)

10月17日に首都ダマスカスのコンベンション・センター(ウマウィーイーン宮殿)で開幕した「シリア難民・避難民の帰還に関する国際会議」の第5回シリア・ロシア合同会合が4日間の日程を終えて閉幕した。

最終日となる20日には、コンベンション・センターで、ロシア合同連携センターとシリア国外難民帰還調整委員会の合同会合が開催された。

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フサイン・マフルーフ地方行政環境大臣は、ロシアとの連携のもとに難民、国内避難民(IDPs)の帰還を引きつづき奨励することを確認するとともに、2018年以降500万人以上が西側諸国による一方的制裁などを通じた妨害にもかかわらず帰還を果たしたと成果を強調した。

また、米国がシリアの天然資源や農産物を盗奪し、「分離主義テロ組織」を支援していると非難した。

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ファイサル・ミクダード外務在外居住者大臣は、今回の会合が難民とIDPsの帰還促進の支えになるとしたうえで、会合に対するロシアの支援を高く評価した。

ミクダード外務大臣は、これまでに2022年法令第7号を含む22の恩赦を実施し、国内での和解、社会復帰、そして難民とIDPsの帰還を促してきたことを強調する一方、一部諸外国がテロ支援などを通じて難民帰還に向けたシリアや友好国の努力を妨害していると批判した。

そのうえで、人権問題に関心を示す国々が、越境(クロスボーダー)支援から境界経由(クロスライン)支援への移行や生活インフラへの早期復旧プロジェクトの実施を定めた国連安保理決議第2642号に沿って支援を行う必要があると述べた。

また、ウクライナ情勢に関して、ロシアの安全保障と安定に対する西側の独断的な敵対行動が主因だと述べた。

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ロシアのアレクサンドル・ラヴレンチエフ・シリア問題担当大統領特使は、ロシアが引きつづき、国民の困難や欧米諸国の制裁を克服しようとするシリア政府の試みと、「テロとの戦い」を続けるシリア軍を支援すると表明するとともに、国際社会にシリアの人道状況を改善するため、実効的な措置を講じるよう呼びかけた。

また、シャーム解放機構によるアレッポ県北部への勢力拡大に関して、トルコがシャーム解放機構を「穏健な反体制派」にしたてようとしていると非難した。

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ロシア国防省のミハイル・ミジンツェフ次官はオンラインで会合に参加し、ロシアの支援のもとにシリアがテロを敗北させたことで、復興と難民・IDPs支援がシリア・ロシア両国にとって共通の優先的な関心事となっているとしたうえで、西側諸国の違法な一方的制裁が国民の苦難と難民帰還阻止の主因となっていると述べた。

このほか、ロシアのオレグ・ゴルシニン・ロシア合同連携センター議長(大佐)、マリア・ルヴォヴァ=ベロヴァ・大統領府子供の権利のための弁務官、ウラジミール・グテネフ下院(ドゥーマ)使節代表、カズベク・タイサエフ下院第1副議長、デニス・グリポフ教育副大臣、ピョートル・パニコフ・ニジニ・ノヴゴロド州知事、シリアのアイマン・スーサーン外務在外居住者省次官、ヤースィル・アフマド社会問題労働省次官、ハーリド・アルカスースィー・シリア・アラブ赤新月社事務総長が演説を行った。

https://www.youtube.com/watch?v=qFnwe34mF3U

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ロシア合同連携センターとシリア国外難民帰還調整委員会の会合の閉会に合わせて声明を発表し、西側諸国によるシリアへの違法な一方的制裁、シリアの天然資源の盗奪といった行為が、国内避難民(IDPs)と難民の帰還を妨げ、数百万におよぶシリア人の苦難をもたらしていると非難、日常生活を回復するためにシリアが講じている措置が、国を強制的に追われた避難民の帰還にふさわしい状況を作り出すと強調した。

声明では、2018年以降に413,527人の難民がシリアへの帰国を果たすとともに、会合開催前日から21日までの間に、ロシア側から170トンの人道支援が提供されるとして両国の連携の成果を強調する一方、米国がシリアでの日産石油生産量の80%にあたる66,000バレルの石油を連日シリア国内から盗奪していると指弾した。

また、越境人道支援が、テロ組織の支援につながっており、シリアの危機を解決することに示唆内と警鐘を鳴らした。

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SANA(10月20日付)が伝えた。

AFP, October 20, 2022、ANHA, October 20, 2022、al-Durar al-Shamiya, October 20, 2022、Reuters, October 20, 2022、SANA, October 20, 2022、SOHR, October 20, 2022などをもとに作成。

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