イスラーム国(ダーイシュ)をめぐる動き(2014年7月8日)

シリア国内の動き

シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル県西部の名士・部族長、ジハード主義武装集団がダーイシュ(イスラーム国)と停戦交渉を続けた。

同監視団によると、ジハード主義武装集団らは、①県西部に現状の組織を維持したまま残留し、ダーイシュに忠誠を誓う、②軽火器、重火器のいずれもダーイシュには引き渡さない、③ダーイシュの進駐は限定的なものとし、進駐する部隊はムハージリーン(外国人)のみとする、④ダーイシュはいかなる指名手配者も逮捕しない、⑤アサド政権に対する戦闘を共同で行う、⑥合同のシャリーア委員会を設置する、ことを求めているという。

しかし、ダーイシュは、交渉の前提条件としてジハード主義武装集団の武器の放棄を要求しているという。

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シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル県西部での停戦交渉を尻目に、反体制武装集団17組織と、ユーフラテス河畔のスバイハーン市、ダブラーン村、ガリーバ村、キシュマ村、ドゥワイル村住民が、ダーイシュ(イスラーム国)とカリフを名乗るアブー・バクル・バグダーディー氏への忠誠を表明した。

ダーイシュに忠誠を誓ったのは武装集団は以下の通り:

1. ムウタスィム・ビッラー

2. ヌール・イスラーム

3. ジュンドッラー

4. ハーリス

5. ハーリド・ブン・ワリード

6. 信徒の母アーイシャ

7. 戦線

8. ユーフラテスの鷹

9. スバイハーン殉教者

10. イスラームの盾

11. ジャッラース・アキード

12. ユーフラテス特殊部隊

13. 誇り高きスバイハーン革命家大隊

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イドリブ県で活動するシャーム軍ダーウド旅団が、ダーイシュ(イスラーム国)への忠誠を誓った。

ARA News(7月8日付)によると、ダーウド旅団は、アレッポ市北東部へのシリア軍の攻勢を受け、同地で戦う反体制武装集団を支援するためにイドリブ県からアレッポ県に向かったが、その後、ラッカ県に進路を変更し、タッル・アブヤド市一帯で西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊と戦うダーイシュに参加したという。

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ハサカ県では、ARA News(7月8日付)が地元活動家の話として、シャッダーディー市を制圧しているダーイシュ(イスラーム国)が、ラマダーン月を祝して、市内の貧困層に穀物などの食糧を配給していると報じた。

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ダーイシュ(イスラーム国)は、機関紙『ダービク』を創刊し、ウェブ(https://ia902504.us.archive.org/14/items/HMC_DBQ1/dbq01_mobile_en.pdf)上で公開する一方、シリア国内の制圧地域での配布を開始した。

創刊号は英語で書かれている。

「ダービク」という紙名は、アレッポ県北部の「マルジュ・ダービク」地方に由来しており、同地は16世紀、オスマン朝のセリム1世の軍とカーンスーフ・ガウリー率いるマムルーク軍が戦った「マルジュ・ダービクの戦い」の古戦場として知られる。

Dabiq
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダーイシュ(イスラーム国)が、シャームの民のヌスラ戦線の拠点だったシュハイル市で、ヌスラ戦線司令官の自宅2件を爆破、破壊した。

一方、シリア軍はダーイシュが制圧するマヤーディーン市各所を空爆した。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、タッル・アブヤド市南西部郊外で、ダーイシュ(イスラーム国)と西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊が交戦した。

またラッカ市北部のアイン・イーサー市にある人民防衛隊の検問所に対して、ダーイシュ戦闘員が自爆攻撃を仕掛け、クルド人隊員4人を殺害した。

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ダマスカス郊外県では、ARA News(7月8日付)によると、ミスラーバー市一帯で、ダーイシュ(イスラーム国)とイスラーム戦線所属のイスラーム軍が交戦し、後者の戦闘員6人が死亡した。

レバノンをめぐる動き

LBCI(7月8日付)によると、ベカーア県バアルベック郡アルサール村郊外からダーイシュ(イスラーム国)メンバー複数名が同村に侵入し、住民のムスタファー・ナジーブ・イッズッディーン氏を自宅で処刑した。

ダーイシュはイッズッディーン氏に死刑宣告をしており、同氏の息子ハーリド氏(14歳)も6月5日に同じように処刑されたという。

しかし2人の殺害に関して、レバノンの声(7月8日付)は、ダーイシュではなく、シャームの民のヌスラ戦線のメンバーの犯行だと報じ、またLBICもハーリド氏殺害はヌスラ戦線の犯行だと報じていた。

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『アフバール』(7月8日付)は、7日にイラクの首都バグダードでの自爆テロの実行犯が、北部県トリポリ市出身のムスタファー・アブドゥルハイ氏(22歳、自称アブー・ハファス)だったと報じた。

同紙によると、アブドゥルハイ氏は2年前に、シリアで武装活動を行うシャーム自由人イスラーム運動に参加、その後レバノンに帰国し、イスラーム国(ダーイシュ、当時はイラク・シャーム・イスラーム国)に忠誠を誓い、イラクに転戦していたという。

イラク国内の戦況

サラーフッディーン県では、マダー・プレス(7月8日付)によると、ダーイシュ(イスラーム国)がバイジ市北部のザウィーヤ地方を制圧した。

同地方制圧に際して、ダーイシュは迫撃砲約60発を発射、住民13人が死亡、民家10棟が破壊された。

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バービル県では、マダー・プレス(7月8日付)によると、ジュルフ・サフル地方で、軍・警察合同部隊が、空軍の支援のもとにダーイシュ(イスラーム国)の掃討を継続し、ダーイシュ戦闘員16人を殺害した。

また掃討作戦に参加したイラク軍戦闘機は、ダーイシュ拠点などを空爆し、戦闘員24人を殺害した。

さらに、イスカンダリーヤ地方では、警察部隊がダーイシュ(イスラーム国)戦闘員5人を逮捕した。

諸外国の動き

エリック・ハンプトン・ホルダー米法務長官は、シリアとイラクに戦闘目的で渡航した米国人約100人の調査を法務省が開始したと発表した。

AFP, July 8, 2014、al-Akhbar, July 8, 2014、AP, July 8, 2014、ARA News, July 8, 2014、Champress, July 8, 2014、al-Hayat, July 9, 2014、Kull-na Shuraka’, July 8, 2014、LBCI, July 7, 2014、al-Mada Press, July 8, 2014、Naharnet, July 8, 2014、NNA, July 8, 2014、Reuters, July 8, 2014、SANA, July 8, 2014、UPI, July 8, 2014、Voice of Lebanon, July 8, 2014などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

レバノンの動き(2014年7月8日)

NNA(7月8日付)によると、ベカーア県バアルベック郡のファキーハ村近郊に何者かが撃ったロケット弾1発が着弾した。

AFP, July 8, 2014、AP, July 8, 2014、ARA News, July 8, 2014、Champress, July 8, 2014、al-Hayat, July 9, 2014、Kull-na Shuraka’, July 8, 2014、al-Mada Press, July 8, 2014、Naharnet, July 8, 2014、NNA, July 8, 2014、Reuters, July 8, 2014、SANA, July 8, 2014、UPI, July 8, 2014などをもとに作成。

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シリア国内の暴力(2014年7月8日)

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ハーミディーヤ航空基地近くに位置するタッラーフ検問所をジハード主義武装集団が軍との戦闘の末に制圧した。

これに対して、軍戦闘機は同地一帯を13回にわたり空爆、同地で武装集団と交戦した。

また、クッルナー・シュラカー(7月7日付)によると、「イドリブの革命家」がハーリム市のムワッファク・ナッファーフ検事を暗殺した。

一方、SANA(7月8日付)によると、マルイヤーン村、カフルラーター村、カフルルーマー村、マジュダリヤー村、バーラ村、マラーナ村、ハーッジ・ハンムード農場、タイバ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市サーフール地区、バーブ街道地区、ジャバル・バドルー地区に軍が「樽爆弾」を投下、また旧市街のウマイヤ・モスク近く、ライラムーン地区、ラームーサ地区、シャイフ・サイード地区、ザフラー地区(空軍情報部一帯)、で、軍、国防隊が、ムハージリーン・ワ・アンサール軍(外国人)、シャーム軍団などからなるジハード主義武装集団が交戦した。

このほか、シャイフ・ナッジャール市工業団地地区第1、2ブロック周辺、カフルサギール村周辺、ブライジュ村郊外、アレッポ中央刑務所周辺で、軍とジハード主義武装集団が交戦、ジャバル・アッザーン周辺でも、軍がシャームの民のヌスラ戦線などからなるジハード主義武装集団と交戦した。

クッルナー・シュラカー(7月7日付)によると、ジャバル・アッザーン周辺での戦闘では、シリア軍のアクル・アリー大佐が戦死した

一方、SANA(7月8日付)によると、アレッポ市ハナーヌー地区、シャッアール地区、旧市街、アンサーリー地区、バニー・ザイド地区、ライラムーン地区、ジャンドゥール地区、カースティールー地区、ハイダリーヤ地区、シャイフ・サイード地区、ナアナーイー広場、シャイフ・ルトフィー村、ズィルバ村、ハーン・アサル村、カシーシュ村、フライターン市、マーリア市、ジュバイラ村、カフルダーイル村、マンスーラ村、ハンダラート・キャンプ、ダーラト・イッザ市、ウワイジャ地区、バヤーヌーン町、アターリブ市、タッル・リフアト市、シャイフ・アフマド村、クワイリス村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、インヒル市、ムザイリーブ町、ジーザ町、東ガーリヤ村、サイダー町、ナスィーブ村、ナワー市、ダーイル町、ヤードゥーダ村を軍が「樽爆弾」などで空爆、またシャイフ・マスキーン市、東カラク村、ヤードゥーダ村、ジャムリーン村で軍とジハード主義武装集団が交戦した。

一方、SANA(7月8日付)によると、東カラク村・ムサイフラ町街道、ダルアー市マンシヤ地区、バジャービジャ地区など、アトマーン村、アトマーン村・ヤードゥーダ村街道、ヤードゥーダ村・ヒルバト・シャフム村街道、ヤードゥーダ村、インヒル市、東カラク村、ブスラー・シャーム市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ザバダーニー市各所、カーラ市郊外の無人地帯に軍が「樽爆弾」を投下した。

またサクバー市でイスラーム軍の司令官の車に仕掛けられた爆弾が爆発し、同司令官が死亡、またドゥーマー市でも東グータ統一司法評議会メンバーでイスラーム・フダー機関代表の車に仕掛けられた爆弾が爆発し、同代表が負傷した。

一方、SANA(7月8日付)によると、マイダアー町郊外、ナシャービーヤ農場、マルジュ・スルターン農場、アーリヤ農場、アイン・タルマー渓谷、ムライハ市郊外、アッサール・ワルド村郊外の無人地帯で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム戦線、イスラーム軍の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(7月8日付)によると、軍はウンム・シャルシューフ村のバドゥウ地区と南部の建物郡を制圧した。

また軍は、ガントゥー市、アブー・ハワーディース村、西サラーム村、ハブラ村、ウンク・ハワー村、ラスタン市、サムアリール村などで、反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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クナイトラ県では、SANA(7月8日付)によると、ラスム・フール村、西バイダ村、ビイル・アジャム村、ウーファーニヤー村、カフターニーヤ町などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(7月8日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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SANA(7月8日付)によると、ダマスカス県、ダマスカス郊外県、ヒムス県、イドリブ県、ダイル・ザウル県、ラタキア県、ハマー県、ハサカ県カーミシュリー市で、反体制武装集団メンバー278人が当局に投降した。

AFP, July 8, 2014、AP, July 8, 2014、ARA News, July 8, 2014、Champress, July 8, 2014、al-Hayat, July 9, 2014、Kull-na Shuraka’, July 8, 2014、al-Mada Press, July 8, 2014、Naharnet, July 8, 2014、NNA, July 8, 2014、Reuters, July 8, 2014、SANA, July 8, 2014、UPI, July 8, 2014などをもとに作成。

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シリア反体制勢力の動き(2014年7月8日)

イドリブ県とハマー県で活動する「穏健な反体制武装集団」とシャームの民のヌスラ戦線が共同声明を出し、アレッポ市北部でのシリア軍の攻勢に対応するため、600人の戦闘員からなる新部隊を編成し、同地に派遣したと発表した。

声明によると、新部隊は「シリア政府とダーイシュ(イスラーム国)の攻撃からアレッポ各戦線を救済する」ことを目的としている。

Kull-na Shuraka', July 8, 2014
Kull-na Shuraka’, July 8, 2014

新部隊の編成に参加した武装集団は以下の通り:

1. シャーム軍団

2. シャームの鷹

3. ハズム運動

4. サラーキブ革命家戦線

5. シリア革命家戦線

6. 真実の騎士旅団

7. 第13師団

8. 第101師団

9. シャームの民のヌスラ戦線

 

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Kull-na Shuraka', July 8, 2014
Kull-na Shuraka’, July 8, 2014

シャームの民のヌスラ戦線シャリーア諸委員会のムハンマド・アブドゥッラフマーン・アブー・ジャービル代表は声明を出し、ヌスラ戦線がアレッポ市および同市郊外のシャリーア委員会を脱会したと発表した。

脱会は、アレッポ市および同市郊外のシャリーア委員会の参加団体の一部が、当初の合意に反して、シリア革命反体制勢力国民連立の傘下にあるアレッポ県評議会の活動に寄与していることが理由だという。

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7月6日からトルコのイスタンブールで開催されている新議長選出のためのシリア革命反体制勢力国民連立の総合委員会会合に関して、ダマスカス宣言事務局長のサミール・ナッシャール氏は、AFP(7月8日付)に「アラブ諸国、諸外国の外圧」のもと各派の「コンセンサス」に基づく議長選出が推し進められていると述べた。

ナッジャール氏によると、「米国のあからさまな圧力を示す政治的兆候がある」としたうえで、ジュネーブ2会議で連立代表団を率いたハーディー・バフラ氏を議長に、ハーリド・ハウジャ氏を事務局長に選出するかたちでの「取引」がなされているという。

バフラ氏は、アフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長などが属す民主ブロック(ただしミシェル・キールー氏は排除)が支援、これに対してハウジャ氏は地元評議会ブロック代表を務めるムスタファー・サッバーグ氏らが支援している。

両陣営の「取引」は、シリア・ムスリム同胞団の排除を前提としているという。

AFP, July 8, 2014、AP, July 8, 2014、ARA News, July 8, 2014、Champress, July 8, 2014、al-Hayat, July 9, 2014、Kull-na Shuraka’, July 8, 2014、al-Mada Press, July 8, 2014、Naharnet, July 8, 2014、NNA, July 8, 2014、Reuters, July 8, 2014、SANA, July 8, 2014、UPI, July 8, 2014などをもとに作成。

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最新論考「イラクとシャームのイスラーム国」は何に挑戦しているのか」(『世界』)

髙岡豊「イラクとシャームのイスラーム国」は何に挑戦しているのか」
『世界』第859号、2014年8月、 pp. 20-24

中東が大きく揺れている。内戦の続くシリアから国境を越えてイラクへ進撃し、首都バグダッドに迫る勢いのイスラーム過激派武装勢力ISIS。どういう組織なのか。そしてその登場の歴史的意味とは?・・・