シリア革命反体制勢力国民連立のジャルバー議長が約6,000人の戦闘員からなる「シリア国民軍の中核」を結成すると発表するなか、イドリブ県では反体制武装集団との合意をうけて軍・国防隊兵士約600人がアリーハー市に展開(2013年8月9日)

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反体制勢力の動き

シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長は、ヨルダンの首都アンマンで、紛争の犠牲者家族を支援するための慈善団体が企画した慈善パーティー(リーマー・フライハーン主催)に出席、約6,000人の戦闘員からなる「シリア国民軍の中核」を結成すると述べた。

ジャルバー議長はまた、「数週間で、現地で革命家に有利な真の進展があるだろう」と述べ、トルコ、エジプト、ヨルダンで、在外シリア人の旅券などの更新手続きを円滑化するための事務所開設などを具体的に進めていると明かした。

しかしこれに関して、ヨルダンのムハンマド・ムーマニー内閣報道官は「ほかの国とは違う。アンマンにはアサド政権の大使館があり…、両国の外交関係は続いている」と否定的に述べた。

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シリア革命反体制勢力国民連立政治委員会のメンバーが『ハヤート』(8月10日付)に明らかにしたところによると、「シリア国民軍中核」設立構想は自由シリア軍参謀委員会によるもので、参謀委員会指揮下の部隊の統合と義勇兵参加の門戸開放を基軸とし、3,000~4,000人の兵力を持つ組織として発足、人員を拡大させるのだという。

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『ハヤート』(8月10日付)は、クルド系の複数のサイトからの情報として、イラク訪問を控えた民主統一党のサーリフ・ムスリム共同党首が、「シリアの反体制勢力が過激派によるクルド人のアイデンティティへの攻撃に沈黙を続けるなか、シリア問題に影響力を持つ地域の国々と外交関係を持つことは、クルド人にとって合法的な権利だ」と述べた、と報じた。

シリア政府の動き

クッルナー・シュラカー(8月9日付)は、ラタキア県で反体制武装集団と戦闘中の国防隊を指揮するヒラール・アサド氏が、兵士に対して、戦闘から逃げる戦闘員を射殺するよう命令するとともに、同県山岳地帯の村人たちに対し、非難した者を罰すると脅迫している、と報じた。

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クッルナー・シュラカー(8月9日付)は、ヒムス市の複数の消息筋の話として、軍が戦死した兵士・「シャッビーハ」の遺体200体以上を工業地区の集団墓地に埋葬した、と報じた。

国内の暴力

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、アリーハー市では、反体制武装集団の「安全な退却」と、軍および国防隊への開放に関する「合意」が成立し、軍・国防隊兵士約600人がアリーハー市に展開した。

またこの「合意」と合わせて、反体制武装集団は、アブー・ズフール航空基地での戦闘で捕捉したラージフ・ジャアファル・ワンヌース空軍大佐を釈放した。

複数の消息筋によると、この「合意」はアリーハー市からの反体制武装集団の「安全な退却」を保障するためのもので、軍は同市に対して「焦土」作戦を仕掛けると脅迫・警告していたという。

またアウラム・ジャウズ市、ラーミー村の検問所を反体制武装集団が制圧した。

さらにブサンクール村での軍と反体制武装集団の戦闘で、市民3人が死亡したほか、軍はザーウィヤ山の村々、サラーキブ市を空爆・砲撃した。

一方、SANA(8月9日付)によると、シャグル市、アーリヤ市、ハッルーズ村、サルマーニーヤ村、シャイフ・スィンディヤーン市、ビダーマー町、カンダ市、カストゥーン村、カフルルーマー村、マジュダリヤー村、マアッラト・ヌウマーン市、ナイラブ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、バルザ区、ティシュリーン地区、カーブーン区、ジャウバル区、カダム区、ヤルムーク区を軍が砲撃した。

一方、SANA(8月9日付)によると、バルザ区、カーブーン区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アイン・タルマー渓谷が軍は反体制武装集団を要撃し、戦闘員3人を殺害した。

またダーライヤー市などを軍が砲撃した。

一方、SANA(8月9日付)によると、ザマーニーヤ市郊外、アルバイン市、ドゥーマー市郊外、ズィヤービーヤ町、ダーライヤー市、ザバダーニー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ナマル町・ジャースィム市街道に軍が砲撃を行い、子供2人を含む9人が死亡した。

またブスル・ハリール市、ダルアー市、ハーッラ市などにも軍は砲撃を加えた。

一方、SANA(8月9日付)によると、ハーッラ市で軍が反体制武装集団の掃討を完了、同市の治安を回復した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、軍がクワイリス航空基地周辺、アレッポ市シャイフ・マクスード地区などに、砲撃・空爆を行った。

一方、SANA(8月9日付)によると、カフルハムラ村、ズィヤーラ村、フライターン市、ジャマージマ村、ラスム・アッブード村、ハーン・アサル村、アブドゥラッブフ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

アレッポ市旧市街、ラーシディーン地区、サラーフッディーン地区、サーフール地区、シャイフ・ヒドル地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、アシャーラ市・クーリーヤ市間の街道、ダイル・ザウル市ハウィーカ地区などに軍が砲撃・空爆を加えた。

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ヒムス県では、SANA(8月9日付)によると、ハダス村、フワーリーン村、タッルカラフ市郊外、タッルドゥー市、タッルダハブ市、キースィーン市、ラスタン市、サアン村、ザアフラーナ村、ダイル・フール村、アーミリーヤ市、ウユーン・フサイン市、ヒムス市バーブ・フード地区、バーブ・トゥルクマーン地区、クスール地区、カラービース地区、ワルシャ地区、ハミーディーヤ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、軍がサルマー町、キンサッバー町の郊外を空爆した。

一方、SANA(8月9日付)によると、サルマー町、シャイフ・ナッバハーン村、ハンブーシーヤ村、ドゥッラ村、ワーディー・シャイハーン村、アイン・ジャウラ村で、軍が反体制武装集団の掃討を完了、治安を回復した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、ジュワーディーヤ(ジル・アーガー)市郊外のマアバダ(カルキールキー)市に向かう街道で、爆弾を積んだ自転車が自爆した。

またジュワーディーヤ市郊外のユースフィーヤ村では、イラク・シャーム・イスラーム国とシャームの民のヌスラ戦線が民主統一党人民防衛隊の拠点を重火器で攻撃した。

レバノンの動き

ジャディード・チャンネル(8月9日付)は、ベカーア県バアルベック郡ブリタール市郊外で、シリア領から潜入した自由シリア軍がレバノン人一家3人を誘拐、連れ去ったと報じた。

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NNA(8月9日付)によると、北部県アッカール郡ジャニーン村に、シリア領内から発射された迫撃砲弾が着弾し、民家が被害を受けた。

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ベイルート県で、武装集団がトルコ航空の操縦士ら6人が乗った車を襲撃、操縦士、副操縦士の2人を連れ去った。

諸外国の動き

ワシントンDCで、ロシアと国の外務・国防相会談(2プラス2)が開かれ、シリア情勢などに関する協議が行われたが、進展はなかった。

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ロシア日刊紙『ベドモスチ』(8月9日付)は、ロシアの武器製造会社の話として、シリアへの供与が予定されているS-300の部品の製造が完了した、と報じた。

同報道によると、部品の供与は2013年春に予定されていたが、2014年に延期されたという。

AFP, August 9, 2013、al-Hayat, August 10, 2013、Kull-na Shuraka’, August 9, 2013、al-Jadeed, August 9,
2013、Kurdonline, August 9, 2013、Naharnet, August 9, 2013、NNA, August 9,
2013、Reuters, August 9, 2013、SANA, August 9, 2013、UPI, August 9, 2013などをもとに作成。

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