米軍によるシリア爆撃:ダーイシュ、ヌスラ、ホラサンの拠点を攻撃(2014年9月23日)

米中央軍は23日未明から早朝にかけて、サウジアラビアなどアラブ諸国5カ国の軍とともに、シリア北部および東部のダーイシュ(イスラーム国)、シャームの民のヌスラ戦線、ホラサン拠点などに対して空爆を行った。

米国防総省が発表した。

空爆が行われたのは、ラッカ県、アレッポ県、ハサカ県、ダイル・ザウル県、イドリブ県郊外のダーイシュ、ヌスラ戦線、ホラサンの司令部、指揮系統・保管・資金・関連施設、車輌などで、複数の戦闘員が死傷したという。

BBC(9月23日付)によると、空爆はF-15Es、F-16s、FA-18s戦闘機、B-1爆撃機、F-22ステルス戦闘機、RQ-1無人戦闘機などが14回にわたって実施、また紅海、アラビア湾に展開する米軍艦艇からトマホーク・ミサイル47発が発射された。

『ハヤート』(9月24日付)によると、ダーイシュ拠点への空爆が14回、ホラサン拠点への空爆が8回行われ、160発以上のミサイルが使用され、またトマホーク巡航ミサイルによる攻撃も47回行われたという。

空爆には、米軍のほか、サウジアラビア、ヨルダン、カタール、UAE、バーレーンの5カ国が参加した。

シリア人権監視団によると、米軍によるシリア空爆で、ダーイシュ戦闘員70人以上(外国人を含む)が死亡、約300人が負傷した。

負傷したダーイシュ戦闘員のうち100人以上が重態で、その一部はイラク領内に搬送されたという。

また米軍の空爆では、ヌスラ戦線の戦闘員50人以上も殺害された。

死亡したヌスラ戦線戦闘員のほとんどは外国人なのだという。

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空爆の数時間前に、米国のサマンサ・パワー国連代表大使が、国連総会に出席するためにニューヨークを訪問しているイラクのイブラーヒーム・ジャアファリー外務大臣を通じて、シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表に、書簡で空爆を行う旨、通告した、という。

これに関して、ジェニファー・サキ米国務省報道官は、「空爆実施について軍事レベルでシリア政府には通告しなかった…。(9月10日のオバマ大統領の)演説以降、我々はシリア政府に直接、そしてパワー国連大使経由でシリアの国連代表に、行動する意思を知らせてきた」と述べた。

また、シリア外務在外居住者省は声明を出し、「米国とその同盟国が攻撃の数時間前に、シリア国内の複数地域でダーイシュに対する攻撃を行う報告がシリア国連代表に対して昨日(22日)なされた」と発表した。

そのうえで声明は「シリアは、主権を完全に尊重したかたちでテロとの戦いに協力すると折に触れ、表明してきた。また国連憲章を尊重する必要があるとする多くの国を支持してきた」と述べ、空爆への批判を明言することを避けた。

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ラッカ県では、クッルナー・シュラカー(9月23日付)によると、米軍の空爆は20回以上(ラッカ市が18回、タブカ航空基地一帯が5回、タッル・アブヤド市が3回、アイン・イーサー市が3回)にわたって行われた。

標的となったのは以下の通り:

1. ラッカ市県庁

2. ラッカ市フルースィーヤ検問所・施設(市西部)

3. ラッカ市前哨基地(市南部)

4. ラッカ市総合情報部ラッカ支部(国立病院横)

5. タブカ航空基地

6. タブカ市東部

7. タッル・アブヤド市

8. 第93旅団基地(アイン・イーサー市)

一方、ラッカ報道センター(9月23日付)は、米軍の偵察機がラッカ市内の通信塔に衝突し、墜落したと報じ、倒壊した通信塔の写真を公開した。

RMC, September 23, 2014

RMC, September 23, 2014

他方、SANA(9月23日付)によると、ダーイシュによって制圧されているマアダーン町に対しても米軍は空爆を行った。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、米軍は、ダイル・ザウル市西方のダーイシュの軍事教練キャンプ、司令部、ブーカマール市などを9回にわたって空爆したという。

一方、SANA(9月23日付)によると、米軍は、ダーイシュが占拠するブーカマール市の農業高等学校、穀物サイロ、スワイイーア村、ティブニー町を空爆し、ダーイシュ戦闘員を殺傷、車輌などを破壊した。

また、ダイル・ザウル市ミウバーラ地区、スィヤーサ橋一帯、ハウィーカ地区で、シリア軍がダーイシュへの攻撃を続け、複数の戦闘員を殺傷した。

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イドリブ県では、ハラブ・ニュース(9月23日付)によると、米軍がカフルダルヤーン村にあるシャームの民のヌスラ戦線拠点を空爆し、ヌスラ戦線戦闘員15人のほか、子供4人を含む住民11人が死亡した。

また、Orient Net(9月23日付)によると、カフルダルヤーン村にあるヌスラ戦線戦闘員の住居や武器弾薬庫などを標的とした米軍によるこの空爆(2度にわたって行われたという)、「世界6強の狙撃手」の異名をとっていたクウェート人ヌスラ戦線戦闘員のアブー・ユースフ・クワイティー氏が死亡した。

Orient Net, September 23, 2014

Orient Net, September 23, 2014

一方、ARA News(9月23日付)によると、米軍はカフルダルヤーン村のほか、サルマダー市にあるヌスラ戦線の武器弾薬庫を空爆した。

また『ハヤート』(9月25日付)によると、米軍の空爆により、ヌスラ戦線の狙撃手アブー・ユースフ・トゥルキー市(アブー・バッラー)が死亡した。

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アレッポ県では、『ハヤート』(9月24日付)によると、米軍はアレッポ県郊外のホラサン拠点複数カ所に対して空爆を行った。

ARA News(9月23日付)によると、米軍はアウラム・スグラー村、アレッポ市郊外のムハディスィーン地区にあるヌスラ戦線、ムハーリジーン軍の拠点2カ所をミサイル3発で攻撃した。

また米軍はダーイシュが包囲するアイン・アラブ市西方のタアラク村一帯に対しても空爆を行った。

ARA News(9月25日付)が、複数の地元筋の情報として報じたところによると、米軍主導の有志連合は23時30分頃に、アイン・アラブ市周辺のダーイシュ(イスラーム国)の拠点複数カ所に対して空爆を行ったという。

この空爆は、同市東部のカラフ・ムーグ村一帯、南部のルーフィー村一帯、西部のスィフティク村一帯に及んだという。

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ハサカ県では、ARA News(9月23日付)によると、米軍は、イラク国境に近いフール村西方のハーヌーティーヤ湖畔にあるダーイシュの基地を空爆したが、ダーイシュは戦闘員を(ハサカ市方面へ)避難させており、死傷者はほとんどでなかった。

なお米軍による空爆に先だって、ハサカ県南部一帯で国籍不明の航空機が偵察活動を行い、また空爆の直後には、スホーイ戦闘機(シリア軍と思われる)による空爆が継続されたという。

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バラク・オバマ米大統領は、シリア領内での空爆開始に関して、「我々は米国民を脅かすテロリストに「聖域」を与えない」と強調した。

また米統合参謀本部のウィリアム・メイビル作戦部長は、シリアへの空爆が「始まりに過ぎない」と述べ、作戦が長期化する見通しを示した。

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ヨルダンのムハンマド・ムーマニー情報通信担当国務大臣(内閣報道官)は「シリア国内のダーイシュ拠点に対する米国の空爆にほかのアラブ諸国4カ国とともに参加した」ことを明らかにした。

これに関して、ヨルダン軍は声明を出し、戦闘機複数が作戦に参加し無事帰還したと発表した。

またヨルダン軍は声明を出し、「北部国境近く」(シリア南部)で、「テロ集団がヨルダン領内での作戦実施の拠点としていた複数カ所」を空爆したと発表した。

空爆がシリア領内、ヨルダン領内のいずれにおいて行われたかは不明。

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UAE外務省は声明を出し、同国空軍がダーイシュに対する空爆に参加したことを明らかにした。

さらに、バーレーン国営通信(9月23日付)は、バーレーン軍総司令部からの情報として、同国軍がダーイシュ拠点への空爆に参加した、と報じた。

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ロシア外務省は声明を出し、米軍によるシリア領内への空爆に関して「国際法に合致するかたちでのみ行うことができるが、一方の当事者からの正式の通知だけでなく、シリア政府との明確な合意、ないしは国連安保理決議での合意が必要」との見解を示し、異議を唱えた。

そのうえで「地域諸国の主権を侵害するような地政学的な目的を実現しようとする試みは、緊張と不安定を助長するだけだ」と批判した。

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イランのハサン・ロウハーニー大統領は、米軍によるシリア空爆に関して「主権国家に対するいかなる空爆も、国連安保理決議の枠内か、空爆対象国首脳からの正式要請のもとになされねばならない」と述べ、批判的な姿勢を示した。

IRNA(9月23日付)が伝えた。

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ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長はテレビ演説を行い、米軍によるシリア空爆に関して、「米国こそがテロの生みの親、元凶であり、シオニスト・テロ国家の絶対的な支援者だ…。我々は、ダーイシュを標的としようとしまいと、米国の軍事介入、国際的な同盟に反対する」と述べた。

またレバノン情勢をめぐっては、シリアとイラクでの軍事行動に参加している「国際的な同盟が、レバノン支援を望んでいるのなら、まずテロ組織への資金供与と教練を停止し…、レバノン軍に武器を供与し…、シリア人避難民の問題を解決すべきだ」と強調した。

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PKK元指導者で現在、終身刑を受けてトルコ国内で服役中のアブドゥッラ・オジャラン氏は弁護士を通じて声明を出し、「すべてのクルド人民に、広範にわたるこの戦争のなかで包括的な抵抗を開始することを呼びかける」と発表した。

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シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、米国によるシリア領内への空爆に関して「バッシャール・アサド大統領に対する戦いに資するだろう」と歓迎の意を示した。

またシリア革命反体制勢力国民連立ハーディー・バフラ議長は、米軍によるシリア空爆に関して「シリア政府が民間人を攻撃しないよう飛行禁止空域を設置すべき」と述べる一方、「我々のパートナーの支援のもと、我々は早急に武装部隊を教練するための計画を実施し、現地での戦闘を担う」との希望を述べた。

『ハヤート』(9月24日付)が伝えた。

AFP, September 23, 2014、AP, September 23, 2014、ARA News, September 23, 2014、September 25, 2014、BNA、September 23, 2014、Champress, September 23, 2014、al-Hayat, September 24, 2014、September 25, 2014、HNN, September 23, 2014、IRNA, September 23, 2014、Kull-na Shuraka’, September 23, 2014、al-Mada Press, September 23, 2014、Naharnet, September 23, 2014、NNA, September 23, 2014、Orient Net, September 23, 2014、Reuters, September 23, 2014、RMC, September 23, 2014、SANA, September 23, 2014、UPI, September 23, 2014などをもとに作成。

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