スライマーン・シャー廟破壊・棺持ち出し作戦をめぐるトルコ政府、シリア外務省の動き(2015年2月23日)

トルコのイブラヒム・カリン大統領府報道官は、21~22日にかけてのトルコ軍が行ったスライマーン・シャー廟の破壊と棺持ち出しのための越境作戦に関して、同廟の警備に当たっていた駐留部隊38人の「救出」に成功したと発表する一方、「トルコ軍によるシリアでの軍事作戦を通じて、政府は廟およびその警護のために駐留する部隊に対して行われるかもしれない攻撃の脅威を根絶した」と強調した。

スライマーン・シャー廟は、ダーイシュ(イスラーム国)による攻撃の脅威に曝されたとされているが、1月以降、同地を含むアレッポ県北部では西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊が攻勢を強めており、ダーイシュの後退が続いている。

こうした実情を踏まえたで、記者の一人が行った「民政局を主導する民主統一党や米国との連携はあったか」との質問に対して、カリン報道官は、越境作戦が「トルコだけの決定」に基づくと強調したうえで、以下のように述べた。

「我々の同盟国(有志連合)には作戦を保証するため(事前)告知がなされた。シリア政府に対してもこれに関する覚書が送付された。しかし、あなたが言及した組織(民主統一党)に関して、いかなる連絡、調整、支援もない…。なぜなら民主統一党はトルコにとってテロ組織だからだ」。

アナトリア通信(2月23日付)が伝えた。

このほか、またカリン報道官は、トルコ当局が「テロリストだと思われる」1,400人を国外追放に処したことを明らかにした。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、21~22日にトルコ軍が行ったスライマーン・シャー廟破壊と棺持ち出しの越境作戦に関して、「これは撤退では決してない。我々の兵の命を守るための一時的な再配置だ」と述べた。

『ハヤート』(2月24日付)が伝えた。

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一方、シリアの外務在外居住者省は、国連事務総長と安保理議長宛に書簡を提出、21~22日にかけてのトルコ軍によるスライマーン・シャー廟破壊・棺持ち出し作戦に関して、「シリアの領土に対する主権侵害」と非難、国連憲章と安保理決議に基づきトルコ政府に対して必要な措置を講じるよう要請した。

外務在外居住者省はまた書簡のなかで、トルコ政府がスライマーン・シャーの棺をトルコに持ち去ったことは、シリア領内における一切の領有権をトルコから喪失させるものだと明記した。

またトルコ政府がシリア政府の了解を得ず、一方的にシリア領内の別の地域に廟を移設することは、1921年のアンカラ合意に従った場合、正当化し得ず、同合意第9条への違反だとみなされる、とも指摘した。

SANA(2月23日付)が伝えた。

AFP, February 23, 2015、Anadolu Ajansı, February 23, 2015、AP, February 23, 2015、ARA News, February 23, 2015、Champress, February 23, 2015、al-Hayat, February 24, 2015、Iraqi News, February 23, 2015、Kull-na Shuraka’, February 23, 2015、al-Mada Press, February 23, 2015、Naharnet, February 23, 2015、NNA, February 23, 2015、Reuters, February 23, 2015、SANA, February 23, 2015、UPI, February 23, 2015などをもとに作成。

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