イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シャームの民のヌスラ戦線などアル=カーイダ系組織からなるファトフ軍作戦司令室の戦闘員が、イドリブ市、ジスル・シュグール市に続いて煉瓦工場軍事基地を制圧した。
ファトフ軍作戦司令室は、戦闘員2人が爆弾を積んだ車2台によって自爆攻撃を行うことで、戦闘を開始、戦車7輌、迫撃砲6門、兵員輸送車、武器弾薬など多数を捕獲した。
また自爆攻撃ではシリア軍兵士、国防隊隊員15人が死亡した。
マサール・プレス(4月27日付)は、煉瓦工場軍事基地攻略を指揮したとされるヌスラ戦線のアブー・ハイイル・イドリビー氏の話として、ファトフ軍作戦司令室は同基地に対して迫撃砲弾70発を打ち込んだ後に、ガソリン・スタンド検問所と基地正門に自爆攻撃をかけ、約40人の戦闘員が突入、正門一帯を制圧した、と伝えた。
またイドリビー氏によると、基地内に駐留していたシリア軍部隊は、この攻撃を受けて、倉庫や基地東部一帯に集結、これに対してファトフ軍作戦司令室戦闘員は、2トンの爆発物を積んだ車で2度目の自爆攻撃を行い、最終的に司令部棟などを制圧し、大尉1人を含む兵士多数を捕捉したという。
煉瓦工場軍事基地に駐留していたシリア軍部隊は、基地内の武器庫や車輌を破壊したのち、基地南部のハルシュ
検問所方面に撤退したという。
『ハヤート』(4月28日付)によると、煉瓦工場軍事基地喪失により、シリア政府の支配下にとどまるイドリブ県内の都市・町・村、基地は、アリーハー市、アルバイーン山一帯、ムハムバル村、
マストゥーマ軍事基地、アブー・ズフール航空基地、カファルヤー村、フーア市を残すだけとなった。
これらはいずれも、ヌスラ戦線などによって包囲されている。
一方、シリア人権監視団によると、シリア軍は、煉瓦工場軍事基地喪失を受けるかたちで、イドリブ市南部一帯に対する空爆を強化した。
同監視団によると、シリア軍戦闘機が8回以上の空爆を行うとともに、ヘリコプターが10回以上にわたって「樽爆弾」を投下した。
これに対して、武装集団戦闘員は、ムクビラ農場でシリア軍と交戦、戦車1輌、ミサイル発射台を破壊したという。
他方、SANA(4月27日付)によると、ダルクーシュ町とジャーヌーディーヤ町を結ぶ回廊地帯に対して、シリア軍が集中的な空爆を行い、トルコ領内から潜入した武装集団の車輌など数十輌を破壊、複数の戦闘員を殺傷した。
SANAによると、ダルクーシュ町とジャーヌーディーヤ町を結ぶ回廊地帯は、サウジアラビアやカタールの資金援助とイスラエルなどの「敵国」の諜報機関の監督のもと、トルコ政府が運営するキャンプで教練を受けた「タクフィール主義テロ集団」の主要な侵入路・兵站路の一つだという。
またシリア軍は、煉瓦工場東部、クマイナース村、マジュダリヤー村、ナイラブ村、クマイナース村と煉瓦工場を結ぶ回廊地帯、サルミーン市周辺、ズィヤーディーヤ村一帯、カフルラーター村、バザーブール村、マアッルバリート村のシャームの民のヌスラ戦線拠点を攻撃、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
なお『ハヤート』(5月1日付)は、複数の専門家の話として、ファトフ軍作戦司令室によるイドリブ市、ジスル・シュグール市の制圧によって生じた戦況の変化がサウジアラビア、トルコ、カタールの合意の結果によるものだと伝えた。
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ハマー県では、マサール・プレス(4月27日付)によると、ファトフ軍作戦司令室の戦闘員らが進軍を続ける北部のガーブ平原のカブル・フィッダ村、シャリーア村、バーブ・ターカ村、フワイズ村、ハムラー村、ハウワーシュ村、クライディーン村、アンカーウィー村、ハウィージャ村に対して、シリア軍が「樽爆弾」を投下、13人が死亡、数十人が負傷した。
シリア軍はまたサイヤード村、カフルズィーター市一帯に対しても空爆を行った。
なお、反体制武装集団は、ラタキア県方面とガーブ平原を結ぶズィヤーラ町・ジューリーン村間の橋を爆破し、シリア軍の兵站路を遮断したという。
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ヒムス県では、SANA(4月27日付)によると、ガントゥー市、ムシャイリファ村、ウンム・リーシュ村、ハリージャ村で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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アレッポ県では、SANA(4月27日付)によると、タッル・リフアト市、ジャッブール村、アレッポ市ブスターン・カスル地区、ブスターン・バーシャー地区、カスタル・マシュト地区、旧市街、ハラク地区、フルワーニーヤ地区、マアーディー地区、サーリヒーヤ地区、マルジャ地区、ライラムーン地区で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、イスラーム戦線、ヌールッディーン・ザンキー運動、ムジャーヒディーン軍、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス郊外県では、SANA(4月27日付)によると、ハーン・シャイフ・キャンプ一帯で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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クナイトラ県では、SANA(4月27日付)によると、ハミーディーヤ村、ダウハ村、ルワイヒーナ村、ラスム・ハワーリド村、マスハラ村で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダルアー県では、SANA(4月27日付)によると、アトマーン村、マスミヤ町、サムリーン村、ダルアー市旧税関地区一帯で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線、イスラーム・ムサンナー運動の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
AFP, April 27, 2015、AP, April 27, 2015、ARA News, April 27, 2015、Champress, April 27, 2015、al-Hayat, April 28, 2015、May 1, 2015、Iraqi News, April 27, 2015、Kull-na Shuraka’, April 27, 2015、al-Mada Press, April 27, 2015、Masar Press Agency, April 27, 2015、Naharnet, April 27, 2015、NNA, April 27, 2015、Reuters, April 27, 2015、SANA, April 27, 2015、UPI, April 27, 2015などをもとに作成。
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