米国家安全保障会議(NSC)のベルナディット・メーハン報道官は、イラクに駐留する米特殊部隊「デルタ・フォース」が、ダイル・ザウル県のウマル油田で特殊作戦を行い、ダーイシュ(イスラーム国)の幹部の一人で、石油の密売などを統括するとされるアブー・サヤーフ氏を含む複数名を殺害し、妻を拘束したと発表した。
『ハヤート』(5月17日付)などによると、デルタ・フォースは、アブー・サヤーフ氏を拘束するため、ウマル油田にヘリコプター複数機で降下しようとしたが、アブー・サヤーフ氏らがヘリコプターに対して発砲したため、殺害、また拘束した妻はイラク領内の刑務所に収監されたという。
メーハン報道官によると、作戦はバラク・オバマ大統領の司令のもと、イラク政府の「完全な同意」を得て実施されたが、シリア政府には事前通告はしなかったという。
しかし、シリアの複数のメディアは、ダイル・ザウル県のウマル油田近くでシリア軍が特殊作戦を行い、石油部門を統括するダーイシュの幹部1人を殺害したと伝えた。
これに関して、シリア人権監視団は、シリア軍が行ったとされる空爆により、外国人戦闘員12人とシリア人戦闘員7人が死亡したと発表した。
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アシュトン・カーター米国防長官は16日、米特殊部隊「デルタフォース」がシリア領内でダーイシュ(イスラーム国)の幹部に対する急襲作戦を成功させ、彼らに「手痛い打撃を与えた」ことを明らかにした。
この急襲作戦は、ダイル・ザウル県ウマル油田で行われ、『ウォール・ストリート』がダーイシュの「最高財務責任者」(CFO)と位置づけていたアブー・サヤーフ氏を殺害した。
『ニューヨーク・タイムズ』(5月17日付)によると、作戦は「デルタフォース」隊員約20人が実施。
戦闘ヘリ・ブラックホークや輸送機オスプレイに分乗し、アブー・サヤーフ氏らが潜伏するビル近くに着陸、銃撃線となるなかで、アブー・サヤーフ氏が「女性や子供を人間の盾」にしようとしたが、米軍は銃撃で戦闘員10数人を殺害し、アブー・サヤーフ氏夫妻の一緒にいた部屋に到達したという。
米軍はアブー・サヤーフ氏を拘束しようとしたが、応戦してきたために射殺、妻を拘束するとともに、「奴隷」として扱われていたヤズィード教徒の女性を救出した。
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シリア人権監視団は17日、米特殊部隊「デルタフォース」がダイル・ザウル県ウマル油田で実施した特殊作戦によってダーイシュ(イスラーム国)メンバー32人が殺害されたとしたうえで、アブーサヤーフ氏以外にも、「戦争大臣」と称されるウマル・シーシャーニー氏、通信部門責任者ら幹部3人が死亡したと発表した。
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一方、地元調整諸委員会によると、デルタフォースによる特殊作戦は16日深夜に開始され、有志連合の航空機が約2時間にわたって偵察飛行を繰り返した後、降下部隊が降下、約20分にわたって戦闘が行われたという。
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『ハヤート』(5月17日付)によると、有志連合はハサカ県内のダーイシュ(イスラーム国)拠点に対して6回の空爆を行った。
AFP, May 16, 2015、May 17, 2015、AP, May 16, 2015、May 17, 2015、ARA News, May 16, 2015、May 17, 2015、Champress, May 16, 2015、May 17, 2015、al-Hayat, May 17, 2015、May 18, 2015、Iraqi News, May 16, 2015、May 17, 2015、Kull-na Shuraka’, May 16, 2015、May 17, 2015、al-Mada Press, May 16, 2015、May 17, 2015、Naharnet, May 16, 2015、May 17, 2015、The New York Times, May 17, 2015、NNA, May 16, 2015、May 17, 2015、Reuters, May 16, 2015、May 17, 2015、SANA, May 16, 2015、May 17, 2015、UPI, May 16, 2015、May 17, 2015などをもとに作成。
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