ダマスカス県では前日に引き続き軍が攻勢をかける反体制武装勢力と交戦、キール―氏「ラアス・アイン市での民主統一党と自由シリア軍の交戦はきわめて危険」(2013年2月7日)

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国内の暴力

ダマスカス県では、『ハヤート』(2月8日付)、AFP(2月7日付)によると、前日に引き続き、ジャウバル区、南部環状地区(ダマスカス郊外県ハジャル・アスワド市)で、軍が県内に攻勢をかける反体制武装勢力と交戦した。

ロイター通信(2月7日付)は、イスラーム旅団のイスラーム・アッルーシュを名乗る戦闘員の話として、ジャウバル区でもっとも戦闘が激しく行われたと報じた。

アッルーシュによると、反体制武装勢力の攻撃は、ムライハ市やアドラー市の基地・拠点が制圧されていない現下において、ダマスカス県の制圧ではなく、同県の防衛ラインに配置されている狙撃地点などの制圧が目的だという。

別の活動家によると、この攻撃は、スンナ派の離反士官によって指揮され、迫撃砲、対空砲、装甲車などが投入されている、という。

これに対し、『ワタン』(2月7日付)は、5日晩に「ダマスカスへの攻撃が行われるとの情報が流れたのを受け…、軍が先制攻撃を行い、テロリストを殺傷、アジトを破壊した」と報じた。

一方、SANA(2月7日付)によると、カーブーン区の遠距離バス発着所(カラージュ・ボールマーン)に反体制武装勢力が迫撃砲2発を発射し、女性、子供を含む市民6人が殺害された。

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ダマスカス郊外県では、AFP(2月7日付)によると、ザマルカー町で軍と反体制武装勢力が交戦した。

またSANA(2月7日付)によると、アルバイン市、ザマルカー町、アドラー市、タッル・クルディー町、ドゥーマー郊外、ハラスター市、ダーライヤー市、フジャイラ村、ズィヤービーヤ町、スバイナ町、ハジャル・アスワド市などで、軍が反体制武装勢力を攻撃・追撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、軍が16日間におよぶ戦闘の末、反体制武装勢力からカルナーズ町を奪還した。

またSANA(2月7日付)によると、カルナーズ町、ハウワーシュ村などで、軍が反体制武装勢力の拠点を攻撃し、シャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人大隊のメンバーなど複数の戦闘員を殺傷した。

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アレッポ県では、SANA(2月7日付)によると、マーイル地方、マンナグ村、タッルアラン市、ワディーヒー村、マンスーラ村、サフィーラ市、ハーン・トゥーマーン村などで軍が反体制武装勢力を攻撃・追撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、シャイフ・サイード地区、カーディー・アスカル地区などで、軍が反体制武装勢力を追撃し、ジュンド・シャーム大隊、北部解放旅団、シャームの民のヌスラ戦線、タウヒード旅団のメンバーなど複数の戦闘員、外国人を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(2月7日付)によると、ヒムス市ジャウバル区、スルターニーヤ地区、カフル・アーヤー村、アーミリーヤ市、ラスタン市などで、軍が反体制武装勢力を追撃し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(2月7日付)によると、ワーディー・ダイフ軍事基地周辺、マアッラト・ヌウマーン市、カフルルーマー村、マアリー市、シャグル市、ジャーヌーディーヤ町などで軍が反体制武装勢力と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、SANA(2月7日付)によると、サルマー町で軍が反体制武装勢力の武装車輌などを破壊した。

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ハサカ県では、SANA(2月7日付)によると、カーミシュリー市郊外の幹線道路で、軍が反体制武装勢力を逮捕、武器・弾薬を押収した。

反体制勢力の動き

ミシェル・キールーは『シャルク・アウサト』(2月7日付)に対して、ラアス・アイン市での民主統一党と自由シリア軍の交戦を「きわめて危険でシリア全土に影響をもたらしかねない」と警鐘を鳴らす一方、自身の「市民平和革命保護国民委員会」による停戦努力がシリア革命反体制勢力国民連立の活動の一環ではないことを明らかにした。

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シリア革命反体制勢力国民連立のリヤード・サイフ副議長が声明を出し、アフマド・マアーッズ・ハティーブ議長がアサド政権との条件付きでの対話に応じる意思を示したことに関して、原則支持の姿勢を表明しつつ、アサド家の排除を通じて対話を積極的に進めるべきだと主張した。

同声明でサイフ副議長は、政治的解決がアサド大統領、およびアサド家が支配を続ける限りは不可能としたうえで、シリア社会のすべての勢力にアサド家排除が必要だとのメッセージを発信することで、条件付き対話を積極的に推進すべきだと述べた。

また、ロシア、イランにアサド政権支持を断念するよう求めた。

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民主的変革諸勢力国民調整委員会のムンズィル・ハッダーム報道官は、AKI(2月7日付)に対して、委員会が入閣をめぐってアサド政権と密約を交わしたとの一部報道を否定し、「民主的体制のもとで主導される移行期政府以外は参加しない」と述べた。

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ザマーン・ワスル(2月7日付)は、ヒムス市の活動家の話として、自由シリア軍が6日にアフマド・ムニール・ムハンマド県知事襲撃を試みたと報じた。

活動家らは、この襲撃の目的が暗殺ではなく、「ヒムスの人口構成を変えようとする体制への協力という犯罪行為」を止めさせることだったとして、暗殺が失敗したことを自己正当化した。

クルド民族主義勢力の動き

クッルナー・シュラカー(2月7日付)は、民主統一党人民防衛隊が、ハサカ県のイラク国境に近いカフフ村(バーニー・シャクヴァティー村)を包囲したと報じた。

村で人民防衛隊の兵士が発砲を受けたのが理由だという。

諸外国の動き

イスラーム諸国会議機構(OIC)首脳会談が閉幕声明を発表し、閉会した。

閉幕声明では、エジプト、イラン、サウジアラビア、トルコによるシリア問題四カ国連絡グループがシリアの危機解決のため具体的な努力を行うことを確認した。

また国連安保理がシリアの危機をめぐって有効策を打ち出せないことに懸念を表明しつつ、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表の活動への支持を改めて表明した。

さらに反体制武装勢力の統合を呼びかけた。

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イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領は滞在先のカイロで記者会見を開き、エジプトのムハンマド・ムルスィー大統領、トルコのアブドゥッラ・ギュル大統領との三者会談で、シリアの危機解決に向けて参加国の姿勢が徐々に接近しつつあると述べた。

アフマディーネジャード大統領は「自由と選択の自由はすべての国民の権利で、侵害されてはならない基本的権利だ…。すべての政府は国民にこの権利を保障することを付託されている」としたうえで、「自由は、戦争によってではなく、政府と国民の相互理解によってもたらされる」と強調した。

そのうえで「政府と反体制勢力の立場を愛国的相互理解を通じて近づけたい…。幸運なのは、エジプト、イラン、トルコの見方が少しずつ近寄っていることだ」と述べた。

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エジプトのムハンマド・ムルスィー大統領はトルコのアブドゥッラ・ギュル大統領と改めて会談し、シリア情勢などについて協議した。

会談後の記者会見で、ムルスィー大統領は「我々は四カ国のイニシアチブの枠組みのなかで新たなアイデアを提示し、シリアをめぐる問題のそのほかの当事者にともにこのイニシアチブをどう完成させるかを協議した」と語った。

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レオン・パネッタ米国防長官とマーティン・デンプスィー米統合参謀本部議長は上院軍事委員会で、国防総省がシリアの反体制勢力への武器供与を支援していたことを認めた。

シリアの反体制勢力への武器供与案は、2012年夏にヒラリー・クリントン国務長官、デヴィッド・ペトレイアスCIA長官によって示されたが、バラク・オバマ大統領は、紛争激化を懸念して、この提案を却下した。

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イスラエルのテレビ局チャンネル2は、米国のデジタル・グローブ社が撮影した衛星画像にダマスカス郊外県ジャムラーヤーの軍科学研究センターが破壊されていない状態で写っていたと報じた。

この画像はイスラエル軍の越境空爆後に撮影されたという。

AFP, February 7, 2013、Akhbar al-Sharq, February 7, 2013、AKI, February 7, 2013、al-Hayat, February 8, 2013、Kull-na Shuraka’, February 7, 2013、al-Kurdiya News,
February 7, 2013、Naharnet, February 7, 2013、Reuters, February 7, 2013、SANA,
February 7, 2013、al-Sharq al-Awsat, February 7, 2013、al-Watan, February 7, 2013、Zaman al-Wasl, February 7, 2013などをもとに作成。

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