アレッポ市ムハーファザ地区で発生した爆発により数十名が死傷するも活動家は政府による犯行と主張、シリア政府は約10,000人の若者から構成される「国防隊」の新設を進める(2013年1月18日)

Contents

国内の暴力

アレッポ県では、『ハヤート』(1月19日付)などによると、アレッポ市ムハーファザ地区で爆発があり、建物が崩壊、12人が死亡した。

ワヒード・アッカード県知事は、AFP(1月18日付)に対して、この爆発で3人が死亡、67人が負傷したと述べた。

SANA(1月18日付)は、テロ集団がアレッポ市カッラーサ地区から同市ムハーファザ地区にミサイルを撃ち、多数の市民が死傷、建物が倒壊した、と報じた。

一方、AFP(1月18日付)は、シリア軍筋の話として、軍戦闘機がブスターン・カスル地区の反対武装勢力を攻撃するなかで、同地区の反体制武装勢力がムハーファザ地区に地対地ミサイルを撃った、と報じた。

またハミード・バーラーシューを名乗る活動家は、「戦闘員はまだこれほどの能力を持っていない…。空爆が行われる前に同地区上空に戦闘機が旋回しているとの報告が多数ある。政府はアレッポ市をさらなる混乱に陥れようとしている」と述べ、爆発が政府軍によるものだと主張した。

SANA, January 18, 2013

SANA, January 18, 2013

SANA, January 18, 2013

SANA, January 18, 2013

SANA, January 18, 2013

SANA, January 18, 2013

**

同じくアレッポ県では、SANA(1月18日付)によると、アレッポ市カースティールー地区、カッラーサ地区、ザラーズィール地区、ブスターン・カスル地区、バニー・ザイド地区、バーブ・ナイラブ地区、カーディー・アスカル地区、マアスラーニーヤ地区などで軍が反体制武装勢力を攻撃・追撃し、多数の戦闘員を殺傷、武器庫などを破壊した。

また、タッル・スーティーン市、カフルハムラ村、タッル・ハースィル市、フライターン市、カブターン・ジャバル市、アターリブ市、シハーラ市、アズィーザ市、クワイリス市、タッル・シュガイブ村、バーブ市などでも軍が反体制武装勢力を攻撃し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーを含む多数の戦闘員を殺傷、拠点を破壊した。

**

ハサカ県では、『ハヤート』(1月19日付)が、ラアス・アイン市で、民主統一党人民防衛隊(YPG)とシャームの民のヌスラ戦線などサラフィー主義者戦闘員が激しく交戦し、戦闘では戦車や迫撃砲が使用され、多数が死傷したと報じた。

AFP(1月18日付)は、「ハヴィダール」を名乗る活動家の話として、この戦闘で、ヌスラ戦線はトルコ領から戦車3輌をシリア領内に侵攻させたが、人民防衛隊が同戦線の戦車1輌を捕捉した、と報じた。

SANA, January 18, 2013

SANA, January 18, 2013

SANA, January 18, 2013

SANA, January 18, 2013

SANA, January 18, 2013

SANA, January 18, 2013

しかし、クッルナー・シュラカー(1月17日付)は、シャームの民のヌスラ戦線メンバーに近い消息筋の話として、クルド人戦闘員から編成される自由シリア軍グワイラーン大隊、使徒末裔大隊が攻撃を行っており、ヌスラ戦線は参加していない、と報じた。

また、同報道によると、自由シリア軍の複数の大隊が軍から奪った戦車2輌と重装甲車1輌を使用して攻撃を行っているという。

さらに、複数の目撃者によると、戦闘激化を受け、ラッカ市、タッル・アブヤド市方面から、反体制武装勢力の武装四輪駆動車約10輌からなる増援部隊がラアス・アイン市方面に進軍、民主統一党の人民防衛隊もカーミシュリー市、アームーダー市、ダルバースィーヤ市などから増援部隊を派遣した、という。

**

ダルアー県では、SANA(1月18日付)によると、ダルアー市のフサイン・モスク前で爆弾が仕掛けられた車2台が相次いで爆発し、礼拝者多数が死傷した。

ジャズィーラに記事・情報を提供してきたムハンマド・ムサーラマ(通称:ムハンマド・ハウラーニー、シリア人)がバスラー・ハリール市の戦闘を取材中に撃たれて死亡した。

ジャズィーラ(1月18日付)は、ムサーラマを特派員と位置づけたうえで、彼が軍によって狙撃され、死亡したと伝えた。

しかし、ジャズィーラは2011年3月以降のシリア情勢への偏向した報道ゆえに、シリア国内での取材活動を認められていない。

**

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アルバイン市、ダーライヤー市、ムウダミーヤト・シャーム市、ドゥーマー市、バイト・サフム市、アクラバー村などに軍が空爆を行い多数死傷し、アルバイン市での砲撃で女児1人が死亡した。またバイト・サフム市、アクラバー村では軍と反体制武装勢力が交戦した。

さらに同監視団によると、アドラー市の軍の検問所で身元不明の遺体11体が発見され、地元調整諸委員会によると、ドゥーマー市でも離反兵の遺体13体が発見されたという。

一方、SANA(1月18日付)によると、ダーライヤー市、フジャイラ村、ムウダミーヤト・シャーム市、ドゥーマー市郊外、ハラスター市、ムライハ市などで軍が反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷、拠点を破壊した。

シリア人権監視団によると、ダマスカス郊外県にある使徒末裔大隊の司令官の一人アブー・アリー大尉の自宅を軍の砲撃し、同大尉が死亡した。

アブー・アリー大尉は、ダマスカス県、ダマスカス郊外県での戦闘での戦闘を指揮していた。

クッルナー・シュラカー(1月20日付)は、シリアへの「アラブの春」波及当初から、フェイスブックを通じてダマスカス県・ダマスカス郊外県の映像を配信してきた活動家のアムジャド・スユーフィーがサクバー市で殺害された、と報じた。

**

イドリブ県では、SANA(1月18日付)によると、サルジャ村およびその周辺で、軍が反体制武装勢力に対する特殊作戦を行い、シャーム自由人大隊のメンバーを含む多数の戦闘員を殺傷した。

**

ヒムス県では、SANA(1月18日付)によると、カルアト・ヒスン市などで、軍が反体制武装勢力と交戦市、複数の戦闘員を殺傷した。

**

フェイスブックなどでは、「革命の大学の金曜日」と銘打って反体制デモが呼びかけられた。

シリア政府の動き

RT(1月18日付)は、シリア当局が軍(正式名称「軍武装部隊」)の予備兵力として、約10,000人の若者から構成される「国防隊」の設置を進めていると報じた。

同報道によると、「国防隊」は、兵役を終えた民間人約10,000人によって構成され、自警活動を行う人民諸委員会とともに、反体制武装勢力の攻撃からの市街地防衛を任務とし、制服、給与が支給される、という。

**

『ハヤート』(1月19日付)は、複数のインターネット・サイトの情報として、「国防隊」がすでに発足し、各県に本部が設置され、20,000人以上の若者が徴兵され教練を受けている、と報じた。

同報道によると、「国防隊」の車輌、制服が支給され、対ゲリラ・民兵戦の専門家の教練を受けており、近く各地に配属予定の部隊は地元出身者から編成されている、という。

**

SANA(1月18日付)は、国内通商消費者保護省が灯油の価格を40%引き上げ、公定価格を35ポンド/リットルとすることを決定したと報じた。

クッルナー・シュラカー(1月18日付)は、この決定に関して、カドリー・ジャミール経済問題担当副首相兼国内通商消費者保護大臣は反対の意思を表明し、決定への署名を拒否した、と報じた。

なお闇市場では、115ポンド/リットルで売買されることもある。

**

シリア外務在外居住者省は国連安保理議長と事務総長に宛てて書簡を提出し、スイスなど57国による国際刑事裁判所へのシリア情勢の付託を求めた連名書簡に関して、「テロから国民を保護するというシリアの国家としての権利を承認することを拒否する誤った方法に遺憾の意を表明する」と非難の意を表明した。

クルド民族主義勢力の動き

シリア・クルド国民評議会は声明を出し、ラアス・アイン市での民主統一党人民防衛隊と反体制武装勢力の戦闘激化への懸念を表明し、軍事行動の停止、逮捕者・捕虜の即時釈放、市内からの武装集団の撤退を求めた。

パレスチナ人の動き

『アフバール』(1月18日付)は、レバノンのアイン・フルワ難民キャンプ出身のパレスチナ人戦闘員8人が、シリアの反体制勢力に参加し、死亡したと報じた。

死亡した8人のなかには、アンサールッラーの指導者ジャマール・スライマーンの甥でヒズブッラーの党員だったマフムード・スライマーンも含まれている。

同報道によると、マフムード・スライマーンは数週間前に、自身の支持者がシリアの反体制勢力を支援することを阻止できずに、ヒズブッラーを離反していた。

レバノンの動き

進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首はロシアを訪問し、セルゲイ・ラブロフ外務大臣と会談した。

LBC(1月18日付)に対して、ジュンブラート党首は、ロシアがレバノンのシリア人避難民をめぐる問題を解決するため財政、政治の両面で貢献するだろう、と述べた。

諸外国の動き

AFP(1月18日付)は、フランス人記者のイヴ・ドゥベ(Yves Debay)氏(ベルギー出身)が17日夜から18日にかけて、アレッポ市中央刑務所近くでの軍と反体制武装勢力の戦闘を取材中に狙撃手に打たれ、死亡した、と報じた。

ドゥバイ氏は、トルコから不法入国し、反体制武装勢力が制圧する地域を取材していた。

アレッポ報道局を名乗るフェイスブックのページによると、ドゥベ氏を狙撃したのは軍だという。

AFP, January 18, 2013、al-Akhbar, January 18, 2013、Akhbar al-Sharq, January 18, 2013、Aljazeera.net, January
18, 2012、al-Hayat, January 19, 2013, January 20, 2013、Kull-na Shuraka’, January 17, 2013,
January 18, 2013, January 20, 2012、al-Kurdiya News, January 18, 2013、LBC,
January 18, 2013、Naharnet, January 18, 2013、Reuters, January 18, 2013、RT,
January 18, 2013、SANA, January 18, 2013などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.