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国内の暴力
ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダイル・アサーフィール市、バイト・サフム市など東グータ地方一帯で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦、ドゥーマー市、ランクース市、サイイダ・ザイナブ町、ザバダーニー市、アルバイン市、ハラスター市、マダーヤー町、バービッラー市、ヤルダー市が砲撃を受けた。
またダーライヤー市は早朝に2度にわたって空爆を受けたという。
一方、『サウラ』(12月3日付)によると、ザマルカー町、シャイフーニーヤ村、ダーライヤー市、アクラバー村、バイト・サフム市、フジャイラ村、ダイル・アサーフィール市などで、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら「指名手配中のアル=カーイダのテロリスト」数十人を軍の部隊が殲滅、外国製の兵器などを押収した。
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ヒムス県では、SANA(12月2日付)によると、ヒムス市ハムラー地区で爆発があり、市民15人が死亡、24人が負傷した。
シリア・アラブ・テレビ(12月2日付)は、爆発が車爆弾によるテロだと報じた。
シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表によると、ハムラー地区はシリア軍が数ヶ月前に反体制武装勢力から奪還した地区、だという。
一方、『サウラ』(12月3日付)によると、軍がヒムス市内および郊外でシャームの民のヌスラ戦線のアジトを攻撃し、「テロリスト」数十人を殺傷した。
またクサイル市郊外の対レバノン国境では、シリア領内への潜入を試みる反体制武装勢力戦闘員を国境警備隊が撃退した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、アクラブ町の軍検問所を反体制武装勢力が制圧した。制圧に際して、反体制武装勢力の戦闘員8人が死亡した、という。
一方、『サウラ』(12月3日付)によると、アクラバー村で軍が反体制武装勢力に対する特殊作戦を行い、戦闘員数十人を殺害した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市南東部のサフィーラ地方で未明から朝にかけて、シャームの民のヌスラ戦線が国防省施設への突入を試みたが、軍の空爆を受けて、戦闘員8人が死亡した。
またシリア人権監視団は、アレッポ市南部の入り口に位置するナイラブ橋、シャイフ・サイード橋で、軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦し、軍・治安部隊が両橋の検問所から撤退した、と発表した。
一方、『サウラ』(12月3日付)によると、シャイール村、バービンス村、ファーフィーン村、アムリート村、カッバースィーン村、ターリヤ村、アズィーザ村、登塔者聖シメオン教会(スィムアーン修道院)跡付近、ダーラ・イッザ市などで軍が反体制武装勢力の拠点を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊・押収した。
またアレッポ市ブスターン・バーシャー地区、ライラムーン地区などで、軍が反体制武装勢力の拠点を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。
アレッポ市マルジャ地区では、アレッポ市全地区からのテロリストの退去を求めるデモが行われたが、反体制武装勢力が発砲し、複数の参加者が負傷した。
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イドリブ県では、『サウラ』(12月3日付)によると、イドリブ・ハーリム街道の水資源公社施設近くで、軍が反体制武装勢力に対する特殊作戦を行い、戦闘員数十人を殺害した。
またアリーハー・イドリブ街道、ムハムバル村などで、軍がシャームの民のヌスラ戦線と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
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ラッカ県では、『サウラ』(12月3日付)によると、ラッカ市東部のサブハ地方、カラーマ地方で、軍が道路封鎖を行っていた反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
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ラタキア県では、『サウラ』(12月3日付)によると、バイト・ファーリス村・サラヤー村間に集結していた反体制武装勢力を軍が攻撃、殲滅した。
またサルマー町、カフフ・アドラー村、ワーディー・アズラク村、ワーディー・ダウリーン、ナビー・ユーヌス村などで軍が反体制武装勢力の追撃を行い、甚大な被害を与えた。
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アナトリア通信(12月2日付)は、ハタイ県(シリア領アレキサンドレッタ地方)レイハンル村にシリア領から発射された迫撃砲が複数着弾した、と報じた。
トルコ軍が応戦したかどうかは不明。
同報道によると、迫撃砲着弾と前後して、イドリブ県バーブ・ハワー国境通行所付近で、軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦した。
シリア政府の動き
シリアのファイサル・ミクダード外務副大臣は、モスクワでの国際外交慈善年次展覧会の開会式に出席するためロシアを訪問し、ロシア外務省高官らとシリア情勢について協議した
シリア・アラブ・テレビ(12月2日付)によると、会談で、ミクダード外務副大臣は、シリア危機への対応をめぐってシリア・ロシア関係は強化されたと述べた。
一方、ロシアのゲンナージー・ガティロフ外務次官は、「シリア情勢の悪化…とりわけ紛争が明らかに宗派対立の様相を呈していることに大いなる懸念を表明する」と述べた。
反体制勢力の動き
民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表は、セルゲイ・ラブロフ外務大臣らとの会談のためロシアを訪問した。
RT(12月2日付)によると、アブドゥルアズィーム代表はロシア側との会談で、アサド政権による暴力が、ジハード主義者の暴力と湾岸アラブ諸国などによるシリア国民懐柔を助長すると述べ、アサド政権による暴力停止を促すようロシア側に求めた。
また、アサド政権下の憲法改正に代表される一連の改革を拒否する姿勢を示す一方、外国による軍事介入にも改めて反対、安保理諸国内、さらにはトルコ、イラン、カタール、サウジアラビアとそれ以外のアラブ諸国の間でのコンセンサスを通じて、ジュネーブ合意に基づく危機解決が初めて可能になるとの見方を示した。
一方、タルトゥース市にあるロシア海軍の基地に関しては、体制転換後も存続させる意向を示した。
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シリア革命反体制勢力国民連立のハイサム・マーリフ法務委員会委員長は『ハヤート』(12月3日付)に対して、カイロでの会合で「きわめて重要な多くの問題を処理した」と述べ、審議事項の承認・決定を先送りしたとの一部見方を否定した。
マーリフ法務委員会委員長は「政治局メンバーの選定だけを延期したに過ぎない…。メンバーは(連合の)議長によって指名され、マラケシュでの会合で合意を得るだろう…。暫定政府首班と閣僚の自然も(マラケシュでの)会合まで延期された。合意か選挙で選出するという点をめぐって意見の相違はない」と述べた。
一方、マーリフ法務委員会委員長は、カイロでの会合で、シリア国民評議会を廃止し、反体制勢力が「双頭体制」とならないようにすべきだとの提案を行ったが、この提案は却下されたことを明らかにした。
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クッルナー・シュラカー(12月2日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立に対抗するシリア国民民主同盟の組織図および主要な構成メンバーを公開した。
クルド民族主義勢力の動き
クッルナー・シュラカー(12月2日付)は、イラク・クルディスタン地域のマスウード・バールザーニー大統領の庇護のもと、シリア・クルド民主党(アル・パールティ)アブドゥルハキーム・バッシャール派、シリア・クルド・アーザーディー党ムスタファー・ウースー派(クルド青年運動党)、同ムスタファー・ジュムア派、シリア・クルド・イェキーティー党(イスマーイール・ハミー)が、新たな政治同盟「シリア・クルド政治同盟」の結成に向けた準備を進めていると報じた。
レバノンの動き
レバノン軍司令部によると、ベカーア県カーア地方(マシャーリーウ・カーア)の軍の拠点が早朝にシリアの反体制武装勢力の発砲を受け、応戦した。死傷者は出なかった。
反体制武装勢力の戦闘員はカー地方からシリア領内に潜入しようとしていた、という。
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アドナーン・マンスール外務大臣は訪問先のトルコのイスタンブールでシリア情勢に関して、「いかなる外国の軍事勢力、介入があってはならない…。対話こそが唯一の危機解決策」と述べた。
AFP, December 2, 2012、Akhbar al-Sharq, December 2, 2012、al-Hayat, December 3, 2012、Kull-na Shuraka’, December 2, 2012、al-Kurdiya News,
December 2, 2012、Naharnet, December 2, 2012、Reuters, December 2, 2012、SANA,
December 2, 2012、al-Thawra, December 3, 2012などをもとに作成。
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