イドリブ県で軍・治安部隊がヌスラ戦線・反体制武装勢力と激しく交戦、民主統一党がトルコのアレヴィー派戦闘員から有事の際に対トルコ戦に参加するとの合意を取り付ける(2012年10月22日)

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国内の動き

『クッルナー・シュラカー』(10月22日付)は、大統領府筋の話として、アスマー・アフラス大統領夫人が先週、特別機でUAEのアブダビを訪問、ダマスカスに戻ったと報じた(未確認情報)。

Shukumaku.com, January 11, 2012

Shukumaku.com, January 11, 2012

同消息筋によると、この訪問は、モンテスィーリー学校を自主退学した子供たちの転入手続きのためと思われる。

なおアサド大統領の姉ブシュラー・アサドも9月に子供の養育のため、UAEに移っている。

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カナダでの列国議会同盟(IPU)年次大会に出席を予定していたシリア人民議会使節団は、カナダ当局がビザ発給を拒否したことに抗議した。

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『クッルナー・シュラカー』(10月22日付)は、イッザト・カンジュ労働総連合副総裁が連合臨時総会で、労働者からなる武装集団を結成し、反体制武装勢力と交戦を続ける軍・治安部隊を支援することを決議すべきだと主張した、と報じた。

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シリア共産党ウィサール・ファルハ・バクダーシュ派のウィサール・ファルハ書記長が死去、葬儀が行われた。

ファルハ書記長は、シリア共産党の重鎮ハーリド・バクダーシュ前書記長の妻。

ファルハ書記長の後任には、息子のアンマール・バクダーシュが就任した。

SANA(10月22日付)などが報じた。

国内の暴力

シリア記者連盟によると、シリア革命総合委員会の活動家のウマル・アブドゥッラッザーク・ラトゥーフ(通称ウマル・ヒムスィー)、ムハンマド・ジュムア・アブドゥルカリーム・ラトゥーフ、およびヒムス県タルビーサ市出身の6人(うち3人がラトゥーフ家)が、避難先のトルコからヒムスに戻る途中、アレッポ市近くのICARDAの検問所で拘束され、殺害された。

Akhbar al-Sharq, October 22, 2012

Akhbar al-Sharq, October 22, 2012

ウマル・アブドゥッラッザーク・ラトゥーフはシリア革命総合委員会創設メンバーの一人で、広報局長。またタルビーサ調整、ヒムス自由人連合、ヒムス・ニュース・センターを創設した。

またムハンマド・ジュムア・アブドゥルカリーム・ラトゥーフはタルビーサ市の映像・情報を配信してきた。

 

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ハラスター市周辺で、軍・治安部隊と反体制武装勢力が激しく交戦した。

またジュダイダト・アルトゥーズ町、ドゥーマー市、ダーライヤー市が砲撃を受け、反体制武装勢力の戦闘員1人を含む4人が死亡した。

このほか、ザマルカー町、アイン・タルマー村も砲撃を受けたという。

一方、SANA(10月22日付)によると、アルバイン市、ハラスター市などで軍・治安部隊が反体制武装勢力の追撃・放逐を継続した。

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ダマスカス県では、SANA(10月22日付)によると、ルクンッディーン区で車に仕掛けられた爆弾が爆発した。死傷者は出なかった。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市フィルドゥース地区などが砲撃を受け、マイダーン地区、サラーフッディーン地区、イザーア地区、バーブ・ジュナイン地区などで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、複数が死亡した。

一方、SANA(10月22日付)によると、カフルタアール村、アターリブ市、フライターン市、マーリア市、カフルフーム市、カブターン・ジャバル村、アレッポ市旧市街、カーディー・アスカル地区、シャイフ・ヒドル地区、イシャーラート地区、バーブ・ナイラブ地区、カッラーサ地区、ブスターン・カスル地区、アンタキア門地区などで軍・治安部隊が反体制武装勢力の「浄化」を継続し、多数の戦闘員を殺傷した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ワーディー・ダイフ軍事基地周辺で軍・治安部隊がヌスラ戦線および反体制武装勢力と激しく交戦した。

一方、SANA(10月22日付)によると、ハーリム市、サルキーン市、ジスル・シュグール市などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル市、タルビーサ市、ムザイリーブ町などが砲撃を受けた。

一方、SANA(10月22日付)によると、ヒムス市スルターニーヤ地区などで軍・治安部隊が反体制武装勢力を掃討し、多数の戦闘員を殺傷した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(10月22日付)によると、ダイル・ザウル市各所で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(10月22日付)によると、反体制武装し勢力がダルアー市初審裁判所のタイスィール・サマーディー第一検事を誘拐した。

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ユーチューブ(10月22日付)上に、シリア・アラブ航空の旅客機から降りる集団の映像が公開された。

映像によると、これらの集団は、イラン・イスラーム革命防衛隊の兵士だという。

http://www.youtube.com/watch?v=CnH4aijhbj0

反体制勢力の動き

クルディーヤ・ニュース(10月22日付)は、イドリブ県で自由シリア軍が拘束したクルド人兵士19人に対して、同軍の法廷が無罪判決を下した、と報じた。

逮捕された兵士の家族によると、自由シリア軍は6,800ドルの「保釈金」(身代金)の支払いを要求している、という。

19人は10月13日に拘束されていた。

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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は、『ジュムフーリーヤ』(10月22日付)に対して、ウィサーム・ハサン内務治安軍総局情報課長の暗殺の背後にアサド政権がいる、と断じた。

そのうえで「シリアの政府は、レバノンでさらなる暗殺を行い、不安定を醸成し、シリア国内での犯罪を隠蔽しようとするだろう」と述べた。

一方、サアド・ハリーリー前首相がウカーブ・サクル国民議会議員をシリアの反体制勢力との連絡調整役に任命したことに関して、「我々と3月14日勢力の間で調整は行われており…、両国の国益を尊重することを基礎としている」と述べた。

さらに、ヒズブッラーに対しては、「シリア政府がヒズブッラーを犠牲にして取引を行うことを理解せねばならない」と述べ、アサド政権との決別を促した。

最後に「我々(シリア人とレバノン人)は運命共同体だ。あなたたちはシリア政府の抑圧に苦しみ、その犠牲となってきた…。シリア国民は今日、同じ抑圧を受けている」と述べた。

クルド民族主義勢力の動き

『クッルナー・シュラカー』(10月22日付)は、ハサカ県カーミシュリー空港で、シリア・クルド民主党(アル・パールティー)ナスルッディーン・イブラーヒーム派幹部のアフマド・スィーヌーが逮捕された、と報じた。

スィーヌーは、ファイサル・ユースフ、アブドゥルカリーム・ウマル、ジャマール・シャイフ・バーキー、アフマド・スライマーンとともにシリア・クルド国民評議会の使節団として、ダマスカスに向かい、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表とイード・アル=アドハーの休戦について協議する予定だった。

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『クッルナー・シュラカー』(10月22日付)は、PKK筋の話として、民主統一党がトルコのアレヴィー派戦闘員を有事の場合に対トルコ戦に参加させることを同派と合意し、その第一弾としてアレヴィー派戦闘員3,000人のシリア北東部への派遣と、国境での緩衝地帯設置阻止を民主統一党がシリア政府に提案した、と報じた(未確認情報)。

レバノンの動き

ウィサーム・ハサン内務治安軍総局情報課長の暗殺を受けるかたちで、21日晩から北部県トリポリ市のジャバル・ムフスィン地区とバーブ・タッバーナ地区で銃撃戦が発生し、少なくとも4人が死亡、シリア人を含む多数の住民が負傷した。

諸外国の動き

AKI(10月22日付)などによると、ユーロサット社(ホットバード)は、EUの制裁の一環として、シリア・アラブ・テレビ衛星放送、シリア・ドラマ・チャンネルの配信を停止した。

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アラブ連盟のアフマド・ベン・フッリー事務副長は、イード・アル=アドハーの休戦に関して「望みは薄い」と述べた。

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イラク・クルディスタン地域政府は、ドホーク県ドマイズ避難民キャンプのシリア人避難民が35,000人に達したと発表した。

またイラク中央政府の移民難民省も、アンバール県のカーイム避難民キャンプのシリア避難民の数が7,638人に達したと発表した。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はロシア紙に対して、「アサド大統領はキリスト教徒を含むマイノリティの安全を保障する人格を備えている」と述べた。

また欧米諸国が「彼(アサド大統領)をかかしに仕立て上げている…。しかし実際のところ、向けられる嫌疑はいずれも断片的である…。現在、中東の地政学の書き換えが行われており、多くのプレーヤーが地政学的な地位を確保しようとしている…。多くのプレーヤーは基本的にシリアではなく、イランに対処しようとしている」と述べた。

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キャサリン・アシュトンEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長はヨルダンを訪問し、アブドゥッラー国王らと会談、シリア情勢について協議した。

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ヨルダンのシリア人避難民の支援活動を行っている聖典スンナ協会によると、ザアタリー国営避難民キャンプで、多数の避難民がテント約20台に放火し、処遇改善を求めた。

AFP, October 22, 2012、Akhbar al-Sharq, October 22, 2012、AKI, October 22, 2012、al-Hayat, October 23, 2012, October 24, 2012、Kull-na Shuraka’, October 22, 2012、al-Kurdiya
News, October 22, 2012、al-Jumhuriya, October 22, 2012、Naharnet, October 22, 2012、Reuters, October 22, 2012、SANA,
October 22, 2012、Youtube, October 22, 2012などをもとに作成。

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