反体制派統一代表団人選を担当する最高交渉委員会の委員長を務めるリヤード・ヒジャーブ元首相は、サウジアラビアの首都リヤドで3、4日の2日間にわたって開かれた会合で代表団の人選などについて協議したと声明で発表した。
ヒジャーブ元首相によると、会合では「適性や能力に基づいた交渉団の人選により、専門的な基準、現時点での諸要件、シリア国民が直面する脅威の規模に対応する」ことなどが検討された。
そのうえで、会合は、①シリアの国土保全、②軍・治安機関の再編を通じた国家機関の維持、③あらゆる形態のテロ拒否、④アサドと現体制の幹部を排除し、シリア国民のすべての階層を代表する多元的な体制の樹立を、「対話プロセスにおいて交渉不可能な「レッド・ライン」とすることを確認した。
また、対話プロセスに向けた調整を行う前に、国連安保理決議第2254号の第12、13項において確認された都市などへの包囲解除と人道支援、すべての逮捕者の釈放、民間人に対する空爆・砲撃の停止の必要を改めて強調した。
ヒジャーブ元首相はまたリヤドで、スタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連アラブ連盟共同特別代表と会談し、最高交渉委員会の会合の結果を伝えるとともに、反体制派統一代表団の人選への外国の干渉を拒否するとの意思を表明した。
『ハヤート』(1月6日付)が伝えた。
なお、『ハヤート』(1月7日付)によると、会合には31人が出席、シリア革命反体制勢力国民連立初代代表で無所属活動家のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ氏、シャーム自由人イスラーム運動のラビーブ・ナッハース氏、そしてシリア国家建設のルワイユ・フサイン代表は欠席した。
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『ハヤート』(1月7日付)によると、デミストゥラ共同特別代表と最高交渉委員会の会合は2ラウンドにわたり行われた。
第1ラウンドは、最高交渉委員会が統一代表団メンバー候補者のリストをデミストゥラ共同代表に提出する前にシリア政府がリストをあらかじめ精査することを要望し、武装集団の代表の参加を拒否していることが争点となった。
これに関して、デミストゥラ共同特別代表は、最高交渉委員会が作成した候補者リストをそのまま受け取り、会合に参加していないそのほかの反体制派の意見を集約するための「別の手段」を検討することを決定したという。
また、シリア政府と反体制派統一代表団メンバーの名簿に関しては、デミストゥラ共同特別代表が候補者名簿を受け取ったうえで、それぞれに開示し、その人選に対する拒否権の発動は認めないことを決定したという。
なおこの会合に先立って、デミストゥラ共同特別代表は、「シリアの友連絡グループ」を名乗る米国、英国、フランス、ドイツ、トルコ、UAE、デンマーク、カナダの代表と会談、「シリアの友連絡グループ」代表は、リヤドでの反体制派合同会合が「反体制派の代表であり、会合参加者のなかから統一代表団が選ばれるべき」で、会合に参加していない反体制派を排除すべき、との基本姿勢を伝えたという。
一方、デミストゥラ共同特別代表は、1月25日開催予定のジュネーブ3会議の開催に先立って、そのスケジュールや議事に関する協議を行うことを拒否していることを各国に伝えた。
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最高交渉委員会はサウジアラビア政府の後援のもとに反体制派統一代表団の人選を進めようとしているが、サウジアラビアとトルコとともに、シリア北部で勢力を拡大する西クルディスタン移行期民政局を主導するクルド民族主義政党の民主統一党の代表団入りを拒否している。
これに対して、ロシア、イラン、そして西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍への支援を強めている米国は、民主統一党の代表団入りを支持しており、ヒジャーブ元首相の姿勢は、サウジアラビアの意向に従い、それ以外の諸外国の干渉排除をめざしたものと見られる。
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シリア国家建設潮流のルワイユ・フサイン代表は声明を出し、最高交渉委員会から脱会すると発表した。
声明によると、最高交渉委員会の構成が「党派的な割り当て」に基づいており、委員任命の仕組みに関して唱えてきた異議が受け入れられなかったことが理由だという。
フサイン代表は長らくシリア国内で反体制活動を行っていたが、2015年4月にムナー・ガーニム副代表らとともに、トルコ経由で国外に逃亡、以降シリア国外で活動を続けている。
AFP, January 5, 2016、AP, January 5, 2016、ARA News, January 5, 2016、Champress, January 5, 2016、al-Hayat, January 6, 2016、January 7, 2016、Iraqi News, January 5, 2016、Kull-na Shuraka’, January 5, 2016、al-Mada Press, January 5, 2016、Naharnet, January 5, 2016、NNA, January 5, 2016、Reuters, January 5, 2016、SANA, January 5, 2016、UPI, January 5, 2016などをもとに作成。
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