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ダマスカス県参謀本部に対する自爆テロ
ダマスカス県では、午前7時頃、ウマウィーイーン広場近くの参謀本部の敷地内と外でそれぞれ爆発が発生した。
各紙によると、爆発は6時56分、7時7分に発生した。
また2発目の爆発により約2時間にわたって火災が発生、敷地内の建物などが被害を受け、敷地外の現場(道路上)には深さ2メートルの穴が空いた。
AFP(9月25日付)によると、事件発生後、ダマスカス県内の主要道路はすべて閉鎖された。
一方、SANA(9月25日付)などは、シリア軍消息筋の話として、複数のテロリストが参謀本部周辺で市民をパニックに陥れるため、無差別発砲を行ったが、治安部隊が直ちに撃退、残党追跡を行った、と報じた。
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自由シリア軍のダマスカス県・郊外軍事評議会はフェイスブック上のページで「自由シリア軍はダマスカスのウマウィーイーン広場で参謀本部を攻撃する」と発表していた。
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自由シリア軍のダマスカス県・郊外軍事評議会のアフマド・ハティーブ報道官はAFP(9月25日付)に対して、2度にわたる爆破は爆弾をしかけた自動車によるもので、自爆攻撃でないと述べた。
そのうえで、攻撃が参謀本部内の複数の兵士の協力と調整(諜報活動)のもとに実行されたと述べた。
また「自由シリア軍の兵士が参謀本部周辺に近づき、機関銃と迫撃砲で攻撃を加えた」と付言した。
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ロンドンを活動拠点とする反体制組織のシリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表はAFP(9月25日付)に対して、「作戦は参謀本部内で行われたようだ…。革命に与する施設内の兵士がこの作戦実行に寄与した」ことを示唆した。
また「革命以来もっとも激しい戦闘」が発生したとしたうえで、軍と反体制武装勢力の双方に人的被害が出た、と付言した。
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「ダマスカス県・郊外県アンサール・イスラーム連合」は声明を出し、「我々の殉教ジハード戦士の一人が正門入口で車を爆発させることで攻撃を行い…、4人のジハード戦士からなる別の集団が入口から突入し…、施設内で複数の高貴なる者たちの支援を受け…、施設の4階で即席爆弾を爆発させた」と発表した。
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ウムラーン・ズウビー情報大臣は、シリア・アラブ・テレビ(9月25日付)に対して、爆発を「武装テロ集団」による犯行と断じるとともに、仕掛爆弾のうち一発は「敷地内におそらく仕掛けられていた」と述べた。
その後、この爆発で、参謀本部の守衛4人が殺害され、14人が負傷したと報じられた。
ズウビー情報大臣また、施設内の司令官、士官は全員無事だと述べ、国防大臣ら士官が負傷したとの衛星テレビ放送などの過剰報道を否定した。
また初動捜査の結果として、爆弾が仕掛けられた車2台がいずれも「自爆犯」によって運転され、うち1台が参謀本部周辺、もう1台が敷地内で爆発したことを明らかにした。
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シリア・アラブ・テレビ(9月25日付)は、ウマウィーイーン広場のオペラ・ハウスに設置された監視カメラの映像を公開した。
映像には、1台の車が参謀本部に面する道路で徐行しながら爆発、もう1台は施設内の死角で爆発する様子が撮影されており、少なくとも施設外の爆発が自爆テロだとの初動捜査の結果を裏付けた。
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国防省は声明を出し、爆発で国防大臣ら複数の司令官が負傷したとの衛星テレビ放送やインターネット上の報道について否定した。
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イランのプレスTVとアーラム・テレビはそれぞれ速報を出し、ダマスカス県ウマウィーイーン広場で参謀本部を狙ったテロで、プレスTVのマヤー・ナーセル特派員が武装集団に撃たれて死亡、またアーラム・テレビのホセイン・ムルタダー支局長が負傷したと報じた。
ムルタダー氏はレバノン国籍で、プレスTV支局長も兼務していたという。
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http://www.youtube.com/watch?v=9nwc25DLHiY
国内の主な動き
反体制組織や野党の代表者がダマスカスで「民主的・平和的変革諸政党・勢力大会」を開催し、すべての反体制勢力を一同に会した大会の開催を改めて呼びかける必要があると閉幕声明で提言した。
「民主的・平和的変革諸政党・勢力大会」はシリア国民救済大会に続く動きで、平和的変革の道潮流(ファーティフ・ジャームース代表)、シリア民主党、変革解放人民戦線、アラブ民主団結党、祖国シリア党、シリア青年公正開発党、シリアのための第三潮流、シリア国民青年党 国民改革党(ニダール・ハミーディー)など35の団体が参加した。
また離反兵のハーリド・アブドゥッラフマーン・ザーミル大尉(自由シリア軍南部地方軍事評議会の元副議長)、ヤースィル・アブド(アレッポの武装集団の元指導者)も参加した。
ザーヒル大尉は、「我々は自らが大胆にもしてしまったことからの復帰と、国民和解担当省への協力を決定し、我々の状況の正常化をめざす。我々は再び、軍司令部のもとに自らの身を置く。シリアにおける問題解決は、武力行使、暴力、破壊、爆破によっては不可能だ」と述べた。
ロシア大使、中国大使館代表、イラン大使も出席した。
同大会はまた外国の内政干渉拒否を確認した。
SANA(9月26日付)が報じた。
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『クッルナー・シュラカー』(9月26日付)は、ザーヒル大尉とともに出席し、離反を撤回したスポーツウェアを着た元反体制武装勢力戦闘員ヤースィル・アブドが数ヶ月前に逮捕され、シリア・アラブ・テレビに出演して自身の犯行を証言したヤースィル・アブドと同一人物だと報じた。
国内の暴力
アレッポ県では、SANA(9月26日付)によると、アレッポ市ブスターン・カスル地区、カッラーサ地区、スッカリー地区、マサーキン・ハナーヌー地区、イシャーラート地区などで軍・治安部隊が反体制武装勢力拠点を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷し、装備を破壊した。
またハーン・ユースフ地区、バーブ・ハディード地区、ハイダリーヤ地区などで特殊作戦を行い、外国人戦闘員を含む多数の戦闘員を殺傷した。
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ヒムス県では、SANA(9月26日付)によると、ヒムス市内各所で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦市し、戦闘員4を殺害、車輌3台を撃破した。
またタルビーサ地方のカム村などでも交戦があり、戦闘員が殺傷された。
アッシリア人権ネットワークは、25日に軍・治安部隊がヒムス市郊外のブスターン・ディーワーン地方にある聖母教会を再び砲撃したと発表した。
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ハマー県では、SANA(9月26日付)によると、スーラーン町一帯、ハマー市などで軍・治安部隊が反体制武装勢力を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷、武器弾薬を押収した。
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ダルアー県では、SANA(9月26日付)によると、カフルシャムス町、ダーイル町、ダイル・ブフト村などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷、武器弾薬を押収した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(9月26日付)によると、ダイル・ザウル市各所、フサイニーヤ町などで軍・治安部隊が反体制武装勢力を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷した。
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シリア人権監視団は、国連総会に合わせるかたちで、ダマスカス県バルザ区で、女性6人、子供3人を含む16人が親体制武装集団に処刑されたと発表した。
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タルトゥース県では、シリア人権監視団によると、バーニヤース市で女性25人、子供3人を含む68人が逮捕された。摘発はムハンマド・ザイティー総合情報部内務課タルトゥース支部長(准将)とアブドゥルカリーム・アッバース軍事情報局タルトゥース支部長(准将)の指示のもとに行われたという。
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「アフバール・シャルク」(9月26日付)は、反体制活動家がダマスカス郊外県ズィヤービーヤ町で40人以上の市民が軍・治安部隊に虐殺されたと主張し、遺体の映像を公開した(虐殺の真偽は不明)。
反体制勢力の動き
自由シリア軍のアフマド・ファッジュ大佐は、「イスラーム主義者たちの数はさほど多くない、シリア全土で1,000人以下だろう」と述べ、多数の外国人戦闘員がシリア国内で活動していることを認めた。
また地域の武器商人と武器密輸業者のすべてが反体制武装勢力に対空ロケット弾、対戦車迫撃砲の売却を拒否していると暴露した。
同大佐によると、商人らは売却には米諜報機関の許可が要る、と述べている、という。
ファッジュ大佐は初期離反者の一人で、アレッポ西部で反体制武装闘争を行っているという。
AFP(9月25日付)が報じた。
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シャームの民のヌスラ戦線は21日付で声明を出し、9月初めにアレッポ市のハナーヌー地区の兵舎に突入し、勝利した、と発表した。
また声明において、戦線は、アレッポ市内の学校や病院などを拠点とする軍を38度にわたって攻撃し、27人を殺害した、と主張した。
これが事実だとすると、アレッポ市内の軍兵舎への攻撃の多くが、自由シリア軍ではなく、アル=カーイダ「系」の組織によるものだということになる。
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シリア人権監視団は、2011年3月からの死者数が30,024人に達したと発表した。うち民間人が21,534人、軍人が7,322人、離反兵が1,168人だという。
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シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は、サウジ日刊紙『ヤウム』(9月26日付)に対して、エジプトのムハンマド・ムルスィー大統領によるシリア問題四カ国連絡グループ設置の動きに歓迎の意思を示した。
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シリア民主フォーラムのミシェル・キールーは『バヤーン』(9月26日付)に対して、ロシアによるアサド政権との対話会合の呼びかけを「国民を裏切ることになる」と述べ拒否する意思を明らかにした。
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シリア・アラブ・テレビの記者たちがフェイスブック上に「シリア・テレビ調整」なるグループを立ち上げた。
『クッルナー・シュラカー』(9月26日付)が報じた。
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離反兵マナーフ・トゥラース准将が『デイリー・テレグラフ』(9月26日付)のインタビューに応じ、国内の反体制勢力への資金援助、人道支援、混乱収拾のためのNGOの設立を行うと誓約した。
支援のための「私財」の出所については明言しなかった。
レバノンの動き
『サフィール』(9月27日付)は、レバノン軍が、ナバティーヤ県ラーシャイヤー郡ビーラ村・ラーフィド村間の山岳地帯で、シリアへの武器密輸を目的としていると思われる訓練キャンプを発見し、制圧したと報じた。
諸外国の動き
イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領は記者会見で、政権と反体制勢力の愛国者たちによる対話と相互路階の開始を促す意思がある、と表明し、「さまざまな国からなる連絡グループの結成の努力を行っている」と述べた。
大統領は折衝中の国を明示せず、近くイラン外務省が発表すると述べた。
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赤十字国際委員会はアンマンにシリア人避難民との連絡事務所を開設したと発表した。
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米国務省のフォード・ホフ・シリア問題担当特別顧問が「家族とより長く時間を過ごしたい」との理由で辞職した。
AFP, September 26, 2012、Akhbar al-Sharq, September 26, 2012, September 27, 2012、AKI, September, 26, 2012、al-Bayan, September 26, 2012、The Daily Telegraph, September 26, 2012、al-Hayat, September 27, 2012、Kull-na Shurakaʼ, September 26, 2012、al-Kurdiya News,
September 26, 2012, September 27, 2012、Naharnet.com, September 26, 2012、Reuters,
September 26, 2012、al-Safir, September 27, 2012、SANA, September 26, 2012、al-Yawm, September 26, 2012などをもとに作成。
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