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国内の暴力
ダマスカス県では、AFP(8月31日付)などによると、治安当局が同県とダマスカス郊外県を結ぶ主要街道を閉鎖し、厳戒態勢を敷いた。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ハジャル・アスワド市、サイイダ・ザイナブ町、カフルバトナー町、ランクース市で軍・治安部隊が反体制武装勢力が交戦した。
またアイン・タルマー村で軍・治安部隊に逮捕された市民4人が遺体で発見された。
一方、SNN(8月31日付)によると、ダイル・アサーフィール市、フーシュ・アラブ村が軍・治安部隊の砲撃を受けた。
これに対して、SANA(8月31日付)は、ジャルマーナー市で「武装テロ集団」によって車に仕掛けられた爆弾が爆発し、複数人が負傷したと報じた。
またハムーリーヤ市、アルバイン市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、アブー・ズフール町が軍・治安部隊の激しい砲撃を受けた。
一方、SANA(8月31日付)によると、ザーウィヤ山のシャフシャブー山で軍・治安部隊が反体制武装勢力の「浄化」を行った。
またタフタナーズ市、ターリヒーヤ市、トゥウーム村にある反体制武装勢力の拠点を破壊した。
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ダルアー県では、地元調整諸委員会によると、ダーイル町が軍・治安部隊の激しい砲撃を受けた。
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ヒムス県では、SNN(8月31日付)によると、アービル村に軍・治安部隊が突入した。
一方、SANA(8月31日付)によると、アービル村に軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジトに突入し、多数の戦闘員を殺傷した。
またヒムス市ジャウラト・シヤーフ地区、バーブ・フード地区で反体制武装勢力の「残党」と交戦した。
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アレッポ県では、SNN(8月31日付)やシリア人権監視団によると、アレッポ市のブスターン・カスル地区、サラーフッディーン地区、スッカリー地区、ハナーヌー地区に軍・治安部隊が砲撃を加えた。
シリア人権監視団によると、反体制武装集団がアレッポ市ザフラー地域の治安機関の施設を攻撃し、治安機関側に数人の死傷者が出た。
一方、SANA(8月31日付)によると、カブターン市、ハイヤーン町、バーブ市、アナダーン市などで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、逮捕し、大量の武器弾薬を押収した。
『ハヤート』(9月1日付)によると、アレッポの反体制武装勢力は「北部火山」と銘打って30日未明から31日にかけてアレッポ市内で大規模な砲撃を行った、という。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ブーカマール市の空軍部隊駐屯地近くで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。
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ハマー県では、SANA(8月31日付)によると、カルアト・マディーク町、トゥワイニー村、シャリーア村、カルカート村、マイダーン・ガザール村、ハムラー村、カラ・ジュルン村で軍・治安部隊が反体制武装勢力の「浄化」を行った。
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シリア人権監視団によると、ダマスカス郊外県のハラスター市、ドゥーマー市、ハマー県のカフルズィーター市、ダルアー県各地、アレッポ県各地など全国各地で、金曜礼拝後に反体制デモが発生し、『ハヤート』(9月1日付)によると「数千人」が参加した。
インターネットなどでは反体制活動家が「炎のダーライヤーは消えない」金曜日と銘打ってデモを呼びかけていた。
シリア政府の動き
シャーム・プレス(8月31日付)は、ウムラーン・ズウビー情報大臣がシリアの反体制勢力に対して、「過去に存在したような危険は廃されたので」、テレビに出演するべきだと呼びかけたと報じた。
非同盟諸国首脳会談
ワーイル・ナーディル・ハルキー首相以下、非同盟諸国首脳会談出席のためイランを訪問しているシリアの代表団はイランの最高指導者アリー・ハーメネイー師と会談した。
ハーメネイー師は非同盟中立首脳会議で「シリアでの出来事や痛ましい悲劇に背後から関与している代表的な国が米国とイスラエルであり、両国は反体制勢力とは無縁の武装勢力に武器と資金を費やしている」と断じた。
これに対して、ハルキー首相らは、イランの姿勢に謝辞を述べるとともに、テロ行為に対決するため前進を続けるとの意思を示した。
SANA(9月1日付)、『ハヤート』(9月1日付)などが報じた。
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ワーイル・ナーディル・ハルキー首相以下、非同盟諸国首脳会談出席のためイランを訪問しているシリアの代表団は続いて、イランのマフムード・アフマディーネジャード大統領と会談した。
アフマディーネジャード大統領は会談で「改革や民主化を口実にシリアのテロリストに資金や武器を支援する国々はこそが、民主主義や人権を必要としている」と述べた。
これに対して、ハルキー首相は、シリアに対する陰謀が、レジスタンス枢軸を解体し、「新中東構造」を実現することにあるとの見方を示した。
SANA(8月31日付)が報じた。
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シリアのワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣はイランのサイード・ジャリーリー国家安全保障最高会議書記と会談した。ファルス通信(8月31日付)が報じた。
会談でムアッリム外務在外居住者大臣は「シリア国民は常にイランを信頼しており、そのイニシアチブを歓迎する」と述べた。
これに対してジャリーリー書記は、「シリアでテロリストを支援する米国のような当事者は問題の一部をなしていて、解決策の一部ではない…。シリアでのテロ行為や暴力が解決策ではないことは明らか」と述べた。
またエジプトの「ムルスィー大統領は意味もなくシリアの反対勢力を支持した。彼にはシリアの内政に干渉する資格などない」と非難した。
『ハヤート』(9月1日付)が報じた。
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ワーイル・ナーディル・ハルキー首相以下、非同盟諸国首脳会談出席のためイランを訪問しているシリアの代表団は潘基文国連事務総長と会談した。
会談で潘事務総長は、すべての当事者による暴力停止を改めて求めるとともに、事態の最大の責任がシリア政府にあるとし、重火器使用停止を求めた。
SANA(9月1日付)が報じた。
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シリアのワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣は非同盟諸国首脳会談で、「アメリカが指導する陰謀が抵抗するシリア国民と政府に対して仕掛けられており…、地域の一部の国がこれに参加している」と述べた。
SANA(9月1日付)、『ハヤート』(9月1日付)などが報じた。
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ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣は、「トルコは、テロリストを教練し、アル=カーイダを占有することで、シリアを破壊する役割を担っている…。トルコから何の解答もなされない場合、同国を国際テロ支援国家のリストに加えるべきだ」と述べた。
SANA(9月1日付)、『ハヤート』(9月1日付)などが報じた。
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ワーイル・ナーディル・ハルキー首相以下、非同盟諸国首脳会談出席のためイランを訪問しているシリアの代表団は、イラクのヌーリー・マーリキー首相と会談し、対話を通じたシリア問題の平和的解決をめざす必要を確認した。
SANA(8月31日付)が報じた。
会談後、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣は、イラクのイニシアチブを歓迎すると述べた。
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イランの最高指導者アリー・ハーメネイー師が非同盟中立首脳会議出席のためにテヘラン訪問中のイラクのヌーリー・マーリキー首相と会談した。
会談でハーメネイー師は、非同盟中立諸国がシリア問題への政治介入を通じて、事態打開のイニシアチブをとるべきだと述べる一方、「敵意に満ちたメディアのプロパガンダが米国が主導する諸国政府の代わりにシリア政府に対する代理戦争をしかけており、イスラエルの国益を拡充し、レジスタンスに打撃を与えようとしている」と非難した。
『ハヤート』(9月1日付)が報じた。
反体制勢力の動き
自由シリア軍のファトフ(征服)旅団のアナス・イブラーヒーム・アブー・ザイド大尉なる活動家はAFP(8月31日付)に対して、反体制武装勢力がアレッポ市の60%を依然として制圧していると述べた。
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シリア国民評議会を脱会したバスマ・カドマーニー女史はロイター通信(8月31日付)に、暫定政府に関して、「解放された地域…が拠点であるべき」としたうえで、「シリア国内での活動を妨げる非常に危険な段階で、暫定政府が拠点を置けるような安全地帯」が必要と主張、国際社会が同地帯を保護すべきだと述べた。
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シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー報道官は、暫定政府発足に関して、AFP(8月31日付)に「我々は時間をかけて議論しなければならない」と述べ慎重な姿勢をとった。
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シリア国民評議会のムンズィル・マーフース渉外局長は「我々が自由シリア軍と調和しているなどと言うことはできない。彼らがシリア国民評議会から受けている支援は実際のニーズや絶望する人々の(要求)に比して微々たるものだ」と述べた。
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アレッポ県の活動家だというムハンマド・サンサーウィー氏はAFP(8月31日付)に対して、「彼ら(シリア国民評議会)は支援、資金、武器供与を約束しているが、何もしていない」と批判した。
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自由シリア軍最高軍事評議会議長のムスタファー・シャイフ准将はアラビーヤ(8月31日付)に対して、自由シリア軍がアルメニア人を脅迫しているとの一部報道を否定した。
クルド民族主義勢力の動き
ハサカ県とアレッポ市では、クルディーヤ・ニュース(8月31日付)によると、ダルバースィーヤ市、アームーダー市、カーミシュリー市、ハサカ市、アイン・アラブ市で、クルド人住民がクルド最高委員会の決定に背くかたちで反体制デモを行った。
レバノンの動き
NNA(8月31日付)によると、北部県アッカール郡の対シリア国境地帯の村々に迫撃砲約30発が着弾し、警官1人が負傷した。
諸外国の動き
国連難民高等弁務官は声明を出し、8月29日までのシリア人非難民の登録数が228,976人に達したと発表した。
同声明によると8月26日時点の登録数は215,000人で、3日間で約15,000人が新たに避難民申請を行ったことになる。
なおうちトルコに避難した避難民は約80,000人で、11の避難民キャンプなどで避難生活を送っている。
またヨルダンには約72,000人避難している。
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ヨルダンのサミーフ・マアーイタ内閣報道官は、ヨルダン領内に避難したシリア人非難民の数が今週だけで20,000人を越えたと発表した。
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フランスのローラン・ファビウス外務大臣はユーロ1(8月31日付)に対して、「求められているのはバッシャール・アサドを排除し、原理主義者や別の体制を建てることではない」と述べた。
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国連安保理の閣僚級会合で、シリア領内での緩衝地帯設置が先送りとなったことをに関して、トルコの外交筋はAFP(8月30日付)に、設置提案を取り下げず、引き続き国際社会に設置を求めていくと述べた。
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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相はトルコのテレビ番組(8月31日付)でのインタビューで、「このような措置は安保理の決議なくして採用できない」と述べ、シリア領内の緩衝地帯の設置を定めた国連安保理決議の採択を求めた。
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赤十字国際委員会は声明を出し、「(シリアの)人々は一日中命の危険に曝されている」としたうえで、暴力激化のなかで人道支援の必要が急速に高まっている、と警鐘を鳴らした。
AFP, August 31, 2012、Akhbar al-Sharq, August 31, 2012、Alarabia.net, August 31, 2012、Cham Press, August 31, 2012、Damas Post, August 31, 2012、al-Hayat, September 1, 2012, September 2, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 31, 2012、al-Kurdiya
News, August 31, 2012、Naharnet.com, August 31, 2012、NNA, August 31, 2012、Reuters,
August 31, 2012、SANA, August 31, 2012、SNN, August 31, 2012などをもとに作成。
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