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国内の暴力
ダマスカス県では、『ハヤート』(8月23日付)によると、ダマスカス県南部で軍・治安部隊が大規模な砲撃を行った。
シリア人権監視団によると、ダマスカス県カフルスーサ区とダマスカス郊外県ダーライヤー市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と激しく交戦し、戦闘には軍の攻撃ヘリコプターが参加した。
またダマスカス県のナフル・イーシャ地区、カダム区、ジャウバル区などで大規模な逮捕・捜索活動が行われたという。
さらに、ドゥンマル区では、車に仕掛けられた爆弾が爆発し、乗っていた3人が死亡した。
『クッルナー・シュラカー』(8月22日付)などによると、『ティシュリーン』紙のマスアブ・ムハンマド・アウダッラー記者(スポーツ文化部、ダルアー県出身)がナフル・イーシャ地区の自宅で軍に射殺されたと報じた。
AKI(8月22日付)は、複数の消息筋の話として、軍・治安部隊がカフルスーサ区の住民少なくとも8人を家族らの前で処刑した、と報じた。
またムウダミーヤ・シャーム市では、処刑されたと見られる遺体40体が発見された、という。
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ダイル・ザウル県では、イラクのカーイム市のファルハーン・フタイハーン市長がロイター通信(8月22日付)に語ったところによると、ブーカマール市近くの反体制武装勢力が占拠する軍の基地と飛行場に対して、軍・治安部隊が攻撃を加えた。
ブーカマール市はそのほとんどが自由シリア軍の手に落ちているが、軍・治安部隊が奪還のため同市周辺に展開・包囲している、という。
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ダマスカス郊外県では、SANA(8月22日付)によると、ダーライヤー市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と激しく交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市のハナーヌー地区、シャイフ・ヒドル地区、サーフール、バーブ街道地区、シャッアール地区、ザフラー地区、ハムダーニーヤ地区などで軍・治安部隊と反体制武装勢力の交戦があった。
またアナダーン市、フライターン市、カフルハムラ村、シャイフ・サイード地方では、軍・治安部隊が反体制武装勢力掃討のため砲撃を加えた、という。
AKI(8月22日付)は、アレッポ革命家連合なる組織のメンバーの話として、軍が病院や医療センターを狙って攻撃している、と報じた。
これに対して、SANA(8月22日付)によると、軍・治安部隊はアレッポ市のアンサーリー地区、フィルドゥース地区、サイフ・ダウラ地区、ダウワール・ブスターン・バーシャー地区、ハラク地区、スライマーン・ハラビー地区、ジャンドゥール交差点など各所で反体制武装勢力のアジト・拠点に突入・交戦し、多数の戦闘員を殺傷、大量の武器弾薬を押収した。
またアナダーン市、タッル・リフアト市、カルジーリーン市でも軍・治安部隊が反体制武装勢力に対する掃討作戦を行ったほか、トルコのガズィアンテップに続く街道で多数の戦闘員を逮捕した。
一方、軍・治安部隊が奪還した理学部地区、サイフ・ダウラ地区などでは復旧作業が開始された、という。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダルアー市郊外の村々が軍・治安部隊の砲撃を受けた。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ハウラ地方が軍・治安部隊の砲撃を受けた。
一方、SANA(8月22日付)によると、レバノン国境に近いクサイル地方ジュースィーヤで軍・治安部隊が反体制武装勢力を要撃するなどして、多数の戦闘員を殺傷した。
マヤーディーン(8月22日付)などによると、ジュースィーヤでの戦闘に巻き込まれて、レバノン人4人が死亡、10人が負傷した。
反体制勢力の動き
自由シリア軍国内合同司令部中央広報局のファフド・ミスリーなる活動家は声明を出し、自身が「国外」(パリ)でアフダル・ブラーヒーミー・シリア危機担当国連・アラブ連盟共同特別代表と会談し、現地情勢などを伝えた。
会談後の声明によると、ミスリーはブラーヒーミーに対して、「力という言葉」以外の何者もを理解しないアサド政権への強硬姿勢の必要、アナン前特使のミッションが破綻した現実、ロシアやイランによるアサド政権支援の実態などを伝えた、という。
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シリア国民評議会は声明を出し、ダマスカス郊外県ムウダミーヤ・シャーム市での戦闘機による空爆を「もっとも残忍な犯罪」と批判した。
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反体制組織のシリア記者連盟はアレッポで取材中に死亡した山本美香氏に弔意を示した。
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シリア民主フォーラムは、民主的変革諸勢力国民調整委員会によるアサド政権と反体制武装勢力の双方への一時停戦呼びかけに関して、「シリア革命の現状や成果を読み取れていない」と批判、拒否する意思を示した。
レバノンの動き
ベカーア県を拠点とするジャアファル家は声明を出し、シリア国内で拉致されているレバノン人との連帯の意思を示す一方、民兵を組織しているとの情報を否定した。
諸外国の動き
フランスのフランソワ・オランド大統領はカタールのハマド・ビン・ハリーファ国王と会談し、シリア情勢について協議した。
大統領府によると、会談において、オランド大統領は、アサド大統領の退任がなければ政治的解決もないと改めて強調し、自由で民主的なシリア建設に向けて専心するとの意思を示した、という。
またフランス、カタールの両国はシリアの政治的転換を実現するため努力を調整することで合意した、という。
一方、フランスのジャン・マルク・エロー首相は、シリアの反体制武装勢力に通信機器など非軍事的な物資を送ったことを明らかにした。
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ジェフリー・フェルトマン米国務次官補は、イランが国連決議に違反してシリアに武器を供与していると批判した。
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英国のデヴィッド・キャメロン首相は、英国、米国、フランスがシリアの反体制勢力を支援する方法を検討していると述べた。
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シリア軍のヨルダン領内への越境砲撃によって子供5人が負傷した事件を受け、シリア国民救済ヨルダン委員会は、バフジャト・スライマーン駐ヨルダン・シリア大使の国外追放を求めた。
スライマーン駐大使は、ヨルダン外務省の呼び出しに対して、イード休暇を理由に呼び出しを拒否し、シリア本国に一時帰国した。
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ロイター通信(8月22日付)は、トルコ高官の話として、過去24時間でシリア人約2,500人が暴力を避けて、トルコ領内に避難してきたと報じた。
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ロシア外務省高官は、ロシア『コメルサント』(8月22日付)紙に対して、シリア政府との「秘密裏の対話」で、シリア政府が化学兵器を反体制武装勢力弾圧において使用しないとの回答を得た、と述べた。
AFP, August 22, 2012、Akhbar al-Sharq, August 22, 2012、AKI, August 22, 2012、al-Hayat, August 23, 2012、Kull-na Shurakaʼ, August 22, 2012, August 23, 2012、al-Kurdiya
News, August 22, 2012、al-Mayadin, August 22, 2012、Naharnet.com, August
22, 2012、Reuters, August 22, 2012、SANA, August 22, 2012などをもとに作成。
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