ロシアとイランの仲介により、シリア政府と西クルディスタン移行期民政局がハサカ市での停戦に合意(2016年8月21日)

SANA(8月21日付)は、ハサカ市で国防隊と西クルディスタン移行期民政局アサーイシュとの間で続いていた戦闘を停止するための停戦合意が成立、21日午後5時に発効したと伝えた。

SANA特派員が伝えたところによると、停戦合意は、シリア政府公式当局とクルディスタン労働社党(PKK)軍事部門のアサーイシュの間の戦闘停止を定めたもので、戦闘停止のほか、カーミシュリー市にある病院への負傷者の搬送、ハサカ市の事態の正常化、関連する諸問題を解決するための対話の開始、を定めているという。

SANAが「クルディスタン労働社党軍事部門」と称しているのは、PKK系のクルド民族主義政党である民主統一党(PYD)が主導する西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)の治安機関アサーイシュのこと。

一方、『ハヤート』(8月22日付)によると、停戦合意の内容は以下の通り:

1. 21日午後5時以降、戦闘を停止することで合意する。
2. 犠牲者の遺体を搬送するとともに、負傷者をカーミシュリー市の病院に移送する。
3. 軍関連の検問所・拠点を戦闘開始以前の状態に復旧する。
4. 22日にカーミシュリー市空港で、イラン、ロシアの同席のもと、当事者の代表が出席し、交渉を再開する。

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BasNews(8月21日付)によると、交渉はシリア政府が管轄するカーミシュリー空港で続けられて、西クルディスタン移行期民政局側はジャズィーラ地区防衛委員会(国防省に相当)のアブドゥルカリーム・サールーハーン委員長、渉外委員会(外務省に相当)のアブドゥルカリーム・ウマル氏、人民防衛隊のライドゥール・ハリール報道官、PKK幹部(フヴァール・ヌージーン・バークークを名乗る人物)が参加しているという。

交渉においてクルディスタン移行期民政局側は、シリアの治安当局者に対して、国防隊の完全解体、ハサカ市の治安厳戒地区(軍関係者居住地区、グワイラーン橋、ヌシューワ橋、中心街)以外の同市にある全拠点からのシリア軍の撤退と人民防衛隊への移譲を求めているという。

なお、BasNewsによると、交渉は1時間ほど行われたが、合意に達せず、西クルディスタン移行期民政局側の代表者は会場を去ったという。

AFP, August 21, 2016、AP, August 21, 2016、ARA News, August 21, 2016、BasNews.comChampress, August 21, 2016、al-Hayat, August 22, 2016、Iraqi News, August 21, 2016、Kull-na Shuraka’, August 21, 2016、al-Mada Press, August 21, 2016、Naharnet, August 21, 2016、NNA, August 21, 2016、Reuters, August 21, 2016、SANA, August 21, 2016、UPI, August 21, 2016などをもとに作成。

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