2012年7月20日のシリア情勢

国内の暴力(ダマスカス県)

シリア・アラブ・テレビ(7月20日付)は、軍・治安維持部隊がダマスカス県マイダーン地区での激しい戦闘のち「テロリストの残党を完全に浄化」したと報じた。

SANA(7月20日付)などによると、軍・治安部隊は数百人の戦闘員を逮捕したが、そのなかにはシリア人以外の戦闘員も含まれていたという。また大量の武器弾薬を押収した。

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AFP(7月20日付)も、治安消息筋の話として、ダマスカス県内の複数地区を軍が奪還・制圧した、と報じた。

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シリア情報省が記者約20人にマイダーン地区での取材を許可した。

マイダーン地区内を取材したAFP(7月20日付)によると、反体制武装集団掃討作戦は、7月18日に開始され、20日早朝に完了した、という。

掃討作戦に参加したのは、共和国護衛隊の部隊と特殊任務を目的とする師団で、前者は緑を基調とした迷彩服、後者は灰色を基調とした迷彩服を着ている、という。

また反体制武装集団は約600人おり、ザーヒラ地区、タダームン区、タッル・ムニーン地区からマイダーン地区に潜入してきたという。

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これに対して、反体制武装集団は、マイダーン地区での激しい攻撃を受けた結果の「戦術的撤退」に過ぎないと反論した。

アブー・ウマルを名のる活動家は「戦術的撤退だ。我々は依然としてダマスカスにいる」とAFP(7月20日付)に語った。

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シリア人権監視団によると、マイダーン地区で爆発音が何度も鳴り響き、軍の戦車、兵員輸送車輌が同地区に突入したという。

また同監視団によると、カフルスーサ区でも軍と反体制武装集団が激しく交戦し、1人が死亡した。

このほか、マッザ区なども戦闘が続いた、という。

国内の暴力(国境地帯)

『ハヤート』(7月21日付)は、イラクのニネベ県の対シリア(ハサカ県)国境に位置するワリード通行所の国境警備隊筋の話として、「自由シリア軍が対イラク国境の国境通過点5カ所以上を制圧し、アンバール県の部族長に接触し、イラクの国境警備隊に自由シリア軍と交戦させないよう説得を求めた」と報じた。

同消息筋によると、自由シリア軍はイラク国境警備隊に直接話しかけてきたが、何らかの緊張状態が発生し、撃ち合いになった、という。

その後、イラクの武装部隊総司令官が、各国境通行所の高官に直接連絡し、個人の判断で行動しないよう通達したという。

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自由シリア軍のハーリド・アブー・ズィヤード中尉はAFP(7月20日付)に対して、「19日晩から20日昼まで続いた戦闘で、ブーカマール市の国境通行所を制圧した」ことを明らかにした。

しかし「イラク軍が国境の向こう側に展開した。我々は彼らと話そうとしたが、耳を傾けてもらえず、我々に発砲してきた。なぜなら彼らはアサドに忠実だからだ」と述べた。

国内の暴力(その他)

『ハヤート』(7月21日付)などによると、アレッポ市のサラーフッディーン地区などで軍・治安部隊と反体制武装集団が激しい交戦を行った。

また『サウラ』(7月21日付)によると、アレッポ市郊外のウールム・スグラー市の警察学校が反体制武装集団に襲撃されたが、治安維持部隊が応戦し、反体制武装集団に甚大な被害を与えた。

これに関して、シリア人権監視団は、襲撃の失敗で反体制武装集団の司令官アフマド・ファッジュを含む15人が死亡したことを明らかにした。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アルバイン市が軍・治安部隊の砲撃に曝され、1人が死亡した。

またサイイダ・ザイナブ町では軍・治安部隊による反体制武装集団掃討が続いた。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ジャウラト・シヤーフ地区、カラービース地区、ハーリディーヤ地区を軍・治安部隊が砲撃、1人が死亡した。

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イドリブ県は、シリア人権監視団によると、ジスル・シュグール均衡で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、軍・治安部隊側に人的被害が出た。

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ダイル・ザウル県では、『サウラ』(7月21日付)によると、ダイル・ザウル市で治安維持部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員多数を死傷させた。

シリア政府の動き

ダマスカス県カシオン山の殉教者墓地で、ダーウド・ラージハ国防大臣、ハサン・トゥルクマーニー副大統領補佐官、アースィフ・シャウカト副参謀長の国葬が執り行われた。

葬儀には、ファールーク・シャルア副大統領、ファフド・ジャースィム・フライジュ国防大臣、ムハンマド・サイード・バヒーターン・バアス党シリア地域指導部副書記長、ムハンマド・ジハード・ラッハーム人民議会議長、リヤード・ヒジャーブ首相らが出席した。

アサド大統領は参列しなかった。

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バアス党シリア地域指導部は声明を出し、18日のダマスカス県ラウダ地区での自爆テロで重傷を負っていた地域指導部メンバーのヒシャーム・ビフティヤール少将が死亡したと発表した。

反体制勢力の動き

在英の反体制組織シリア人権監視団は、ダマスカス、ハマー、アレッポで「ラマダーンの金曜日、ダマスカスで勝利が記されよう」と銘打った反体制デモが行われ、治安部隊が実弾を使用し、弾圧した、と発表した。

同監視団などによると、ダマスカス県ではマイダーン地区、カフルスーサ区、ルクンッディーン区で、ダマスカス郊外県ではドゥンマル市で、アレッポ市シャッアール地区など、ヒムス県ハウラ地方、ラタキア市などデモが発生した、という。

シリア人権監視団はダマスカス県での戦闘激化に伴い、国内での暴力に関して詳細な発表ができずにいたが、突如として情報を再開示した。

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シリア・ムスリム同胞団政治局長のアリー・サドルッディーン・バヤーヌーニー氏(前最高監督者)はイスタンブールで記者会見を開き、同市で開かれていた大会でイスラーム政党を結成することが決定されたことを明らかにした。

国連の動き

国連安保理は安保理決議第2059号を全会一致で採択し、UNSMISの任期を30日延長した。

決議全文は以下の通り。

Commending the efforts of the United Nations Supervision Mission in Syria (UNSMIS),
1. Decides to renew the mandate of UNSMIS for a final period of 30 days, taking into consideration the Secretary-General’s recommendations to reconfigure the Mission, and taking into consideration the operational implications of the increasingly dangerous security situation in Syria;
2. Calls upon the parties to assure the safety of UNSMIS personnel without prejudice to its freedom of movement and access, and stresses that the primary responsibility in this regard lies with the Syrian authorities;
3. Expresses its willingness to renew the mandate of UNSMIS thereafter only in the event that the Secretary-General reports and the Security Council confirms the cessation of the use of heavy weapons and a reduction in the level of violence sufficient to allow UNSMIS to implement its mandate;
4. Requests the Secretary-General to report to the Council on the implementation of this resolution within 15 days;
5. Decides to remain seized of the matter.

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スーザン・ライス米国連大使は、安保理の枠外での反体制勢力への政治支援、制裁強化の努力を集中させるとの意思を示した。

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ロシア大統領付報道官は、「ロシア大統領は、安保理の枠外での行動は現実的ではなく、国際機関の権威を損ねるだけだろう」と述べ、西側諸国のシリアへの介入継続を牽制した。

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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、BBC(7月20日付)に対して、「安保理は責任を果たさなかった…。我々は安保理の枠外で活動し、反体制勢力への支援を重点的に行うだろう」と述べた。

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なお、西側の決議案が否決されたのち、パキスタンがUNSMISの任期の45日の延長のみを求める決議案を準備、ロシアのゲンナージー・ガティロフ外務次官は、「我々はパキスタンとともに作成した決議案を支持するだろう」と述べた。

だが、ロシア、中国などは、修正された上記英国案を支持した。

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国連人権高等弁務官報道官はジュネーブで記者会見を開き、ダマスカス県での戦闘激化により、過去48時間で約8,500人から3万人がレバノンに避難した、と発表した。

レバノンの動き

レバノンの大ムフティー・ムハンマド・ラシード・カッバーニー師は、シリア・レバノン国境にレバノン人の狙撃手が展開し、シリア人避難民の入国を阻止しようとしていると断じ、非難した。

イラクの動き

イラク航空は、『ハヤート』(7月21日付)に対して、1,200人以上のイラク人がシリアからバクダード空港に空路で非難したと発表した。

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イラク赤新月社は、シリア国内で避難生活をしていたイラク人避難民2,285人を受け入れるためのキャンプをワリード国境通行所の近くに設営した、と発表した。

諸外国の動き

シリア・アラブ・テレビ(7月20日付)は、アレクサンドル・オルロフ駐仏ロシア大使がラジオ・フランス(7月20日付)に「アサド大統領はジュネーブ合意、すなわち文明的に退任することに同意した」と述べたことに対して、「事実無根」と否定した。

その後、オルロフ大使は、BFMTV(7月20日付)で「アサド大統領が政権交代(に言及したジュネーブ合意)に同意したとしても、それは彼が自分で去るかどうかを決めるということで、それは対話の結果としてなされるものだ。だから「文明的退任」と述べたのだ」とトーンダウンした。

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インテルファクス通信(7月20日付)は、ロシアの軍・外交筋の話として、シリアの国内情勢が正常化するまで、メンテナンスのため回収中のヘリコプター3機の返却を延期することが決定されたと報じた。

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ロシアのアレクサンドル・ルカシェヴィッツ報道官は、「シリア政府に制裁を科すと脅迫する決議への支持を拒否したという理由で、一部の西側諸国がロシアにシリアでの暴力エスカレートの責任を押しつけようとすることは決して受け入れられない」と述べる一方、「西側の国々が少なくとも反体制武装集団に政治的解決への同意を求めていたら」事態は改善していはずだと西側諸国の介入を非難した。

他方、アサド大統領夫妻がロシアに亡命したとの一部メディアの報道に関して、ルカシェヴィッツ報道官は「今日は噂についてコメントしたくない」と否定した。

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『ハヤート』(7月21日付)は、ダマスカス県での暴力激化を受け、約16,000人のシリア人避難民がこの2日間で越境し、ヨルダン領内のラムサー市に流入した、と報じた。

AFP, July 20, 2012、Akhbār al-Sharq, July 20, 2012、BBC, July 20, 2012、al-Ḥayāt, July 21, 2012、Naharnet.com, July 20, 2012、Reuters, July 20, 2012、SANA,
July 20, 2012、al-Thawra, July 20, 2012などをもとに作成。

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