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国内の暴力
ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ブスラー・シャーム市に対する軍・治安部隊の砲撃で8人が死亡した。
一方、SANA(6月15日付)によると、ブスラー・シャーム市のハーリド・ブン・ワリード・モスク前で武装テロ集団がしかけた爆弾2発が爆発し、多数の市民が死傷した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ハラスター市で、治安部隊が市民1人を射殺した。
またドゥーマー市に対する軍・治安部隊の砲撃が続いた、という。
地元調整諸委員会によると、アルバイン市、ザマルカー町、ザバダーニー市に対しても軍・治安部隊は砲撃を加えた、という。
一方、SANA(6月15日付)によると、ドゥーマー市で治安維持部隊と武装テロ集団が交戦し、テロリスト3人が死亡した。
他方、シリア人権委員会によると、ハムーリーヤ市で刃物で斬殺された遺体9体が発見され、シリア国民評議会は、アサド政権による犯行だと断じた。
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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、マイダーン地区で爆弾が爆発し、負数名が負傷した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アナダーン市で軍・治安部隊と反体制武装集団が激しく交戦し、市民1人が死亡した。
またアターリブ市が軍・治安部隊の砲撃を受けたという。
一方、SANA(6月15日付)によると、アレッポ市シャッアール地区で武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、市民2人が死亡した。
また同市内サラーフッディーン地区のサアド・ブン・アビー・ワッカース・モスク近くに武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、複数の市民・治安維持部隊兵士が負傷した。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊と反体制武装集団が治安機関施設近くで激しく交戦した。
一方、SANA(6月15日付)によると、武装テロ集団が油田警備員を襲撃し、テロリスト側に多数の死傷者が出た。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がラスタン市を砲撃し、1人が死亡した。
また同市周辺での軍・治安部隊と離反兵の交戦で、前者の士官1人が戦死した。
クサイル市、ヒムス市ジャウラト・シヤーフ地区などに対する軍・治安部隊の砲撃も続き、ヒムス市では市民1人が死亡した。
一方、SANA(6月15日付)によると、クサイル市で軍・治安部隊が武装テロ集団と交戦し、テロリスト多数を死傷させた。
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ハマー県では、SANA(6月15日付)によると、ハマー市ダウワール・ジャウワーシュ近くで武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、治安維持部隊兵士5人が負傷した。
反体制デモ
ロンドンで活動する反体制組織、シリア人権監視団などによると、金曜礼拝後に各地で反体制デモが行われたが、いずれも散発的・小規模で、参加者も全国で数千人に達したに過ぎなかった。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市サラーフッディーン地区で行われた反体制デモを治安部隊が強制排除、その際市民2人が犠牲になった。
またバーブ市で発生したデモでも、治安部隊による強制排除で複数の市民が負傷した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市内の複数地区で反体制デモが行われ、合計で数千人が街頭に出た。
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ダマスカス県では、ジャウバル区、マッザ区で反体制デモが行われる映像がインターネット上にアップされた。
地元調整委員会は、マッザ区で数十人の若者が反体制デモを行う配信をインターネットで配信した。
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このほか、反体制勢力によると、ダルアー県、ダイル・ザウル県、イドリブ県(マアッラト・ヌウマーン市)などでもデモが発生した。
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フェイスブックなどでは、反体制勢力が「全体召集への万全の準備の金曜日」と銘打って、反体制デモ(武装闘争)を呼びかけていた。
反体制勢力の動き
在外の反体制活動家がトルコのイスタンブールで2日間(15~16日)予定で、反体制勢力糾合のための大会を開催した。
大会には、シリア国民評議会の代表、シリア・クルド国民評議会の代表、ナウワーフ・バシール氏が率いる部族代表、ミシェル・キールー氏(シリア民主フォーラム)らが出席したが、国内で活動する組織は参加しなかった。
またエリク・シュヴァリエ駐シリア・フランス大使ら、西側諸国(米、独、仏、イタリア)、トルコ、サウジアラビア、カタール、UAEの外交官も大会に出席した。
諸外国の動き
UNSMISのロバート・ムード司令官がダマスカスで記者会見し、軍・治安部隊と反体制武装集団の戦闘により、監視団の活動が制限されていると述べた。
ムード司令官は「現下の暴力の激化は我々の監視、調査、報告の任務遂行能力を阻害し、当事者間の対話開始や安定の保障に向けた支援能力を制限している」としたうえで、「過去10日間で暴力は激しさを増した。これは両当事者が互いに損害を与えようとしたためであり、そのことが我々監視団を危険にさらしている…。平和的な転換への意志が欠けている」と非難した。
また当事者間の共存が困難になっていると指摘しつつ、「宗派主義的内戦」が発生しているとの見方を否定した。
そのうえで、「アナン特使の停戦案は、それを受諾したシリアの当事者と国際社会にとっての財産であり…、今のところオルターナティブはない…。重要なのは、すべての当事者に機会が与えられ、国際社会が任務実現のための役割を果たすことだ」と述べた。
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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は記者会見で、アサド大統領退任後のシリアの政治変動について西側と協議していることを否定した。
ラブロフ外務大臣は「今日、ビクトリア・ヌーランド米国務省報道官が、米国はロシアとバッシャール・アサド退任後の政治的変化について検討していると述べたと(いう記事を)読んだ…。もしこの発言が事実なら、それは正しくない。このような対話は開かれていないし、開くこともできない。こうしたことは我々の姿勢と根本的に矛盾している…。我々は安保理での体制転換や政治的陰謀には与しない」と述べた。
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ロシア外務省は声明を出し、シリア政府に攻撃用ヘリコプターを新たに供与した、とのヒラリー・クリントン米国務長官の指摘を否定しつつ、「数年前」にシリアに供与した航空機の修理を行ったことを明らかにした。
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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、フランス・インター・ラジオ(6月15日付)で、ロシアとの間でアサド大統領退任をめぐって対話がなされている、と述べた。
ファビウス外務大臣は「ロシアの高官らは現在、アサド個人に固執しておらず、彼が暴君、殺人者で、彼を支持し続けることで立場が弱まることを知っている…。しかし、彼らはアサド退任後に誰が政権を担うかに神経質になっており、この点をめぐって対話がなされている」と述べた。
また「紛争の別の解決策として、反体制勢力の明確な勝利がある」としたうえで、「アナン特使のイニシアチブと並行して、我々は米国と同じように、武器ではなく通信機器を反体制勢力に供与することを検討している」と述べた。
さらにアナン特使の提案に沿って、6月30日にジュネーブでロシアなどを含めたかたちで連絡グループ会合が開かれる見込みだと述べた。
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ヒューマン・ライツ・ウォッチ(6月15日付)は、シリア軍が反体制抗議運動で逮捕した女性らをレイプしているとのレポートを発表した。
http://www.hrw.org/news/2012/06/15/syria-sexual-assault-detention
AFP, June 15, 2012、Akhbar al-Sharq, June 15, 2012、al-Hayat, June 16, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 15, 2012、Naharnet.com, June 15,
2012、Reuters, June 15, 2012、SANA, June 15, 2012などをもとに作成。
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