2012年5月31日のシリア情勢

アサド政権の動き

シリア司法軍事調査委員会のカースィム・ジャマール・スライマーン委員長は、ハウラでの虐殺の初期結果を発表、「武装テロ集団が行った」と結論づけた。

SANA, May 31, 2012

SANA, May 31, 2012

SANA, May 31, 2012

SANA, May 31, 2012

ハウラでの虐殺に関する初期結果報告の要旨は以下の通り:

1. 報告書は目撃者の証言などをもとに作成した。
2. 虐殺は治安維持部隊の攻撃の最中に、同部隊が進入できなかった地区で発生した。
3. ハウラ地域には治安維持部隊の拠点が5カ所あり、武装集団による同地域への軍事作戦は、同地域を国家の統制外に置くことを目的としていた。
4. 武装集団約600~800人が金曜礼拝後にタッルドゥー市内で集結し、破壊活動を行った。
5. これらの武装集団はハウラ地域外から同地域に入り、ラスタン、サアン、ブルジュカーアー、サムアリーンなどの武装集団と連携していた。
6. 武装集団は、迫撃砲、ロケット弾、対戦車砲などの重火器を使用し、タッルドゥー市入口にある治安維持部隊の二つの拠点(カウスおよびダウワール・サーア)に対して集中的な攻撃を行った。
7. 治安維持部隊の拠点への攻撃と同時に、住民の虐殺が行われた。
8. 武装集団との交戦において、治安維持部隊は自らの拠点において自衛のための反撃を行い、交戦時に虐殺現場にはいなかった。
9. 衛星放送で放映された映像などによると、遺体の死因は至近距離からの発砲、ないしは鋭利な刃物によるもので、砲撃による傷跡は見られなかった。
10. 犠牲となったのは穏健な家族は、国家に反抗するものを拒否しており、一度もデモに参加したこともなかった。また武装テロ集団とは意見を異にしていた。
11. 虐殺の第1の目的は、アブドゥルムウティー・マシュラブ人民議会議員の親戚の殺害であったと考えられる。
12. 同地域には、反体制武装集団に知られずに何者も入ることはできなかった。

**

シリア外務在外居住者省のジハード・マクディスィー報道官は、イスタンブールでの潘事務総長の発言(後述)に関して、「国連事務総長からこのような発言があるとは残念だ。残念なことに、事務総長は平和維持活動を内戦を唱導する者に委ねてしまっている」と非難した。

**

在カリフォルニア・シリア名誉領事のハーズィム・シハービー氏がハウラでの虐殺に抗議し、辞意を表明した。

ハーズィム・シハービー氏の父はヒクマト・シハービー元参謀長で、名誉領事職を18年にわたって務めてきた。

国内の暴力

シリア革命調整連合など反体制勢力はフェイスブックなどで、「ハウラの子供たち、勝利の炎」と銘打った反政府デモを6月1日に行うよう呼びかけた。

一方、シリア・アラブ・テレビ(5月31日付)は6月1日に、「シリア全土のモスクで、ハウラでの殉教者と祖国のすべての殉教者を追悼するための礼拝」を呼びかけた。

**

『ハヤート』(6月1日付)によると、ダマスカス(県・郊外県)とアレッポの一部地区の商店が、ハウラの虐殺に抗議するストライキを続けた。AKI(5月31日付)によると、ゼネストは28日から続けられている、という。

**

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル市で、軍・治安部隊が砲撃し、離反兵1人、女性1人を含む9人が死亡した。

また軍・治安部隊はハウラ地方を砲撃、同地方のタッルドゥーでは青年1人が治安当局に射殺された。

**

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市で人民議会議員の兄弟の家族が発砲を受け、1人が死亡、複数が負傷した。

またアレッポ大学電気工学部で爆発があり、治安要員1人が死亡した。

**

ダマスカス県・ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダーライヤー市、ムウダミーヤト・シャーム市、アラバイン市、カラムーン地方でハウラでの虐殺に抗議するストライキを停止させるため、治安部隊が展開した。

**

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、サルキーン市で軍・治安部隊と離反兵が交戦した。

**

ダルアー県では、『クッルナー・シュラカー』(5月31日付)は、29日に誘拐された13人が、人質交換により釈放された。

同報道によると、スワイダー県の誘拐犯が誘拐していた複数名を30日に釈放したのを受け、ダルアー県の誘拐犯がこの13人を釈放した、という。

誘拐犯の政治的背景は不明で、また仲介は現地の宗教権威や愛国者が行い、当局は介入しなかった、という。

**

シリア・アラブ・テレビ(5月31日付)は、反体制デモでの逮捕者のうち殺人を犯していない500人を当局が釈放したと報じた。

**

シリア人権ネットワークは、2011年3月以降の死者数が15,423人にのぼったと発表した。

犠牲者のうち子供は1,142人(男性868人、女性274人)で、ヒムス県の犠牲者数は6,208人(うち子供は556人)、イドリブ県の犠牲者数は2,761人、ハマー県の犠牲者数は1,758人にのぼっているという。

反体制勢力の動き

トルコ避難中の自由シリア軍司令官リヤード・アスアド大佐は、ジャズィーラ(5月31日付)で、和平案の失敗を宣言し、反体制勢力に停戦合意の履行を免除するようアナン特使に呼びかけた。

アスアド大佐はまた「(アサド政権による暴力停止の48時間の)猶予などない」と述べ、自由シリア軍国内合同司令部の最後通告を否定した。

**

自由シリア軍国内合同司令部は声明第9号を出し、在外の軍事組織、文民組織が「自由シリア軍」をなのることを禁じると宣言、トルコで避難中の自由シリア軍司令官のリヤード・アスアド大佐や軍事評議会議長のムスタファー・シャイフ准将の「外部介入」を拒否するとの意思を示した。

同声明はカースィム・サアドッディーン大佐(報道官)が発表した。

http://all4syria.info/web/Archive/43403

بيان رقم(9) الصادر عن القيادة المشتركة للجيش السوري الحر قي الداخل بتاريخ31/05/2012

نعلن انه لايحق لإحد ان يتكلم أو يصدر أي بيانات للجيش السوري الحر في الداخل واعتبارا?? من تاريخه لن تأخذ القرارات إلا من قيادات المجالس العسكرية في الداخل التي تعبر عن حال الشعب السوري الثائر ولا يحق لأي جهة عسكرية أو مدنية في الخارج ان تتكلم عن خطط الجيش السوري الحر في الداخل لإنه لا يعبر إلا عن رأيه فقط ونستثني الذين خولتهم المجالس العسكرية في الداخل ونطالب بإنه من أراد ان يمثل الشعب السوري والجيش الحر أو ناطقا بإسمه فليتوجه إلى أرض الميدان وليتوجه من الداخل حتى يستطيع ان يمنحه الشعب السوري المنتفض هذه الشرعية نحن نؤكد لهذا الشعب السوري البطل اننا معكم في هذه المعركة ونعيش أوضاعكم و معاناتكم حالنا حالكم وحال عوائلنا حال عوائلكم ونقول من اراد القيادة فليكون في ميدان المعركة وليس إعلاميا في الخارج نحن نريد أن نسال أين ما يسمى بقائد الجيش السوري الحر من الدماء التي سفكت وما تزال تسفك من خلال مجازر التي إرتكبتها عصابات النظام.

عاشت سورية وليسقط نظام الظلم والإستبداد

العقيد الطيار الركن قاسم سعد الدين

الناطق الرسمي بإسم القيادة المشتركة للجيش السوري الحر في الداخل

**

シリア・ムスリム同胞団のズハイル・サーリム報道官はAKI(5月31日付)に対して、シリアにあるのは「解決困難な…危機」ではなく、「イデオロギー、宗派、党はと無縁の…民衆の革命がある」と述べた。

**

『クッルナー・シュラカー』(6月1日付)は、反体制のシリア・クルド国民評議会と親政権の民主連合党が合同委員会設置で合意したと報じた。

同報道によると、5月31日、ハサカ市でシリア・クルド国民評議会と、PKK系のクルド民族主義組織である民主連合党が指導する西クルディスタン人民議会が、地元での各委員会設置のための合同委員会を結成することに合意し、ムスタファー・ウースー(シリア・クルド国民評議会事務局メンバ-)、フクム・フルウ(西クルディスタン人民議会事務局メンバー)が統括役となった。

**

シリア暫定議会は声明を出し、国内の武装反体制活動家に議会への代表者の選出・参加を呼びかけた。

レバノンの動き

NNA(5月31日付)は、前日に続き、シリア軍がベカーア県バアルベック郡アルサール地方市郊外の対シリア国境で、レバノン人1人を捕捉した、と報じた。

Naharnet, May 31, 2012

Naharnet, May 31, 2012

**

「アレッポ農村シリア革命家」をなのる集団がジャズィーラ(5月31日付)に声明を送り、アレッポでのレバノン人11人の誘拐を認め、「(彼らの一部が)シリア政府による犯罪や虐殺に関与していることを知り、現在調査中」としたうえで、ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長の「謝罪」が釈放の条件だと述べた。

**

アナン特使がレバノンを訪問し、ミシェル・スライマーン大統領と会談した。

NBN(5月31日付)によると、会談では、シリア情勢、アレッポで誘拐されたレバノン人巡礼者、武器密輸などの問題が協議された。

しかしマナール(5月31日付)は、武器密輸問題は議論されなかったと報じた。

**

ミシェル・スライマーン大統領は、30日に北部県で拉致されたレバノン人2人に関して、シリア当局にただちに釈放するよう呼びかけた。

諸外国の動き

ヒラリー・クリントン米国務長官は、訪問先のデンマークで、「我々が政治的転換プロセスの実現に向けて活動しているなかで、ロシアは体制を支援している…。彼らは私に内戦は望まないと言っているが、私は彼らにいつも、彼らの政策が内戦勃発に寄与するものだ」と本末転倒な発言をした。

またクリントン国防大臣は、シリアへの軍事干渉を排除している理由に関して、リビアとは違う点を強調、シリアの宗教・宗派、エスニック集団がより多様・分節的で、単一の反体制勢力が存在せず、シリア軍の防空システムがリビアの数段強力だ、と述べた。

一方、NATO米代表部のイボ・ダールダー大使は、NATO内でシリアへの軍事介入についての議論は行われていない、と語った。

またレオン・パネッタ米国防長官は、シリアへの軍事介入に関して、「国連の支持が必要だ」と述べ、消極的な姿勢を示した。

**

ロシア大統領報道官は、シリアへのロシアの姿勢に関して、「ロシア大統領へのいかなる圧力もシリア危機へのその姿勢を変化させるものではない」と述べ、「ロシアの姿勢は周知の通り、調和的、論理的だ」と強調した。

またロシアのEU大使は、非公式のテレビ回線を通じてEUに対して、「軍事介入や事態のエスカレートを回避するため」自制するよう呼びかけた。

一方、SANA(5月31日付)は、ロシア共産党がハウラでの虐殺に関して、「西側諸国の諜報機関が関与している」との声明を発表したと報じた。

**

ドイツのアンゲラ・メルケル首相はロシアの姿勢を「建設的」だと高く評価した。

メルケル首相は、「ロシアがシリアの危機をめぐって建設的に行動してきたと指摘した。さらなる行動をとりたいと思うときもあるが、人権擁護など共通項を多く共有している」と述べた。

**

国連の潘基文事務総長はイスタンブールでのフォーラムでシリア情勢に関して、「先週末に起きたあのような虐殺は、シリアを悲惨な内戦へと陥れ、そこから脱することはできないだろう」と述べ、アサド政権に「国民に対する責任をとる」べく、暴力を停止するよう呼びかけた。

**

ドイツのZDFテレビは、西側消息筋の話として、イラン政府がイラン航空やヤス・エアーの航空機でシリアに武器を密輸している、と報じた。

AFP, May 31, 2012、Akhbār al-Sharq, May 31, 2012、AKI, May 31, 2012、Aljazeera.net, May 31, 2012、al-Ḥayāt, June 1, 2012, June 2, 2012、Kull-nā Shurakā’, May 31, 2012, June 1, 2012、al-Manār,
May 31, 2012、Naharnet.com, May 31, 2012、NBN, May 31, 2012、Reuters, May
31, 2012、SANA, May 31, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

カテゴリー: シリア政府の動き, レバノンの動き, 反体制勢力の動き, 国内の暴力, 諸外国の動き パーマリンク