ダルアー県内で混乱が続くなか、ダマスカス県、ヒムス市、アレッポ市、バーニヤース市、ラタキア市などでダルアー市との連帯を求める抗議デモが発生(2011年3月25日)

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反体制運動

AFP(9月25日付)によると、ダルアー県サナマイン市で金曜の礼拝の直後にデモが始まり、デモ参加者と治安部隊が衝突、10人が殺害された。

また同消息筋によると、ダマスカス県、ヒムス市、アレッポ市、バーニヤース市、ラタキア市など複数の都市でダルアー市との連帯を求める抗議デモが発生した。

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ダルアー県では、人権活動家がAFP(9月25日付)に明らかにしたところによると、サナマイン市からダルアー市に向かっていた17人のデモ参加者が治安部隊の発砲で殺害された。

また「治安部隊はダルアー県庁前で集会を行ったデモ参加者に集中砲火を浴びせた」。

一方、別の目撃者によると、「20人以上が殉教者」となり、治安部隊は無差別に発砲したという。

AP(9月25日付)がもう一人の目撃者の証言として伝えたところによると、「10,000人以上がダルアー市内の広場でデモを行い、参加者はハーフィズ・アサド前大統領の銅像を倒し、焼き討った」。

また「治安要員とバアス党(ダルアー)支局本部にいた何人かの要員がデモ参加者に発砲し、少なくともその一人が反撃にあった」。

ダルアー市住民の一人が電話でAFP(9月25日付)に述べたところによると、「数十人の葬儀参列者」がウマリー・モスクで行われた。

市内での衝突で犠牲者2人の葬儀の礼拝後に「君に魂と血を捧げよう、殉教者よ」と叫んだ。

AFPはまた、ダルアー市に隣接するイズラア市で軍の大部隊が展開し、市内に向かう各村の分岐路に軍用バスが配置されたと付け加えた。

ダルアー市で3人の青年がハーフィズ・アサド前大統領の銅像を破壊した。

ダーイル町では、「デモ参加者300人がオートバイ数十台に乗って街頭に出て、『ダーイルとダルアーは恐れない』と連呼し、児童たちがクーフィーヤを振った。

また「シャイフ・マスキーン市では数十人が集まり、車に乗ってダルアー市に向かっていった」。

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ダマスカス県では、AFP(9月25日付)によると、約300人が旧市街の中心に位置するウマイヤ・モスクでの金曜礼拝の後、ハミディーヤ市場に向かって「アッラー、シリア、自由のみ」、「ダルアーはシリアだ」、「我々はみなダルアーの殉教者だ」と連呼しながらデモを行った。

また「少なくとも5人が逮捕された」。

インターネット上にはダマスカス県内にあるリファーイー・モスクでの別のデモの映像が公開された。

またAFP(9月25日付)が複数の目撃者の証言として伝えたところによると、治安部隊がダマスカス中心のアマーラ地区でのデモを強制排除した。

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ダマスカス郊外県では、複数の目撃者によると、治安部隊はムウダミーヤト・シャーム市で3人を殺害した。

住民の一人は「ダルアーでの殺人を非難する住民のデモが発生したら、(政権支持者が乗った)車列がムウダミーヤに入ってきた」と述べた。

またAFP(9月25日付)が複数の目撃者の証言として伝えたところによると、タッル市ではダルアー市との紐帯を求める約1,000人がデモを行った。

『クッルナー・シュラカー』(3月30日付)は、ドゥーマー市のデモに参加したマムドゥーフ・アドワーン氏(25歳、作家マルワーン・マムドゥーフの息子)が逮捕・拘束されたと報じた。

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ハマー県では、ハマー市でデモが発生し、住民によると、デモ参加者は金曜礼拝の後に街頭に出て、自由とダルアー支持を叫んだ」。

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ラタキア県では、シリア人権機構によると、先週金曜に引き続き「約3,000人が海岸のバーニヤース市でデモを行った」。

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このほか、複数の衛星テレビ局やインターネット・サイトがヒムス市、ラタキア市の街頭やモスクでのデモの映像を公開した。

デモには数千人が参加したという。

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なおフェイスブックでは、「誇りの金曜日」と銘打ったデモへの参加が呼びかけられていた。

フェイスブック上の「シリア青年連合」と名付けられたページで公開された声明は「政権を完全に一掃し、すべてのシリア国民を代表する暫定政府を発足して国を指導し、自由を保障し、戒厳令を解除し、政治犯を釈放する」ことが求められた。

また「シリア革命2011」ページは、「シリア革命を収束させ、喜劇じみた方法で国民の要求に応えるのを回避しようとしている。しかし、彼らは国民が自由を手にするまで街頭に出て引き返さないことを知らない」と非難し、24日に発表されたアサド政権の改革プログラムを拒否するとともに、街頭でのデモを主唱した。

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クルド人シャイフ、ムルシド・ハズナウィー氏はユーチューブ(http://www.youtube.com/watch?v=Bn-5iBJZNSk&feature=player_embedded)で反体制デモへの参加を呼びかけた。

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シリア・クルド国民行動統一機構は声明を出し、反体制デモへの支持を表明。

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クルド民族主義諸政党は「シリア・クルド諸政党」(Majmū‘ al-Aḥzāb al-Kurdīya fī Sūrīya)の名で共同声明を出し、反体制デモへの支持を表明。

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シリア・インティファーダ支援国民イニシアチブ委員会(シリア・ムスリム同胞団、バヤーヌーニー)は25日に声明を出し、反体制デモでの犠牲はアサド大統領に責任がある、と非難。

アサド政権の動き

各地での反体制デモに対抗するかたちで、各県でバッシャール・アサド大統領の改革路線(24日に発表)を支持する行進が組織された。

SANAによると、ダマスカスをはじめとする各県で、「昨日(24日)に出された政令や決定の意義、アサド大統領の指導のもとにシリアが享受する国民統合、シリアを標的とする外国の動きに断固として立ち向かう政権の姿勢を支持するための行進」が行われた。

また参加者が「シリアの治安、安定、国民統合を標的として、外国がシリア国民に対して行う組織的な働きかけを拒否する姿勢を明示した」としたうえで、「経済、政治、福祉、生活にかかわる決定と政令はシリア国民の意思に合致しており、(中東)地域が直面する様々な事件へのシリア国民の政治的・経済的関与を伴うものである」と報じた。

SANAによると、「複数の県での多くの国民が行った集会のなかには、地元の要求を掲げ、改革政策や腐敗撲滅の早期実施を唱道するものがあった」として、反体制デモがあったことを暗に認めた。

しかし「外国のメディアや幾つかの通信社が偽のニュースを流し、シリアの現状に関する偽りの情報を報道し、福祉、経済、政治に関する決定と政令が出された直後にシリア国内を包んだ肯定的な雰囲気を乱すべく無秩序と暴動を喚起した」と非難した。

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ムフスィン・ビラール情報大臣は、「テロリストの逮捕」によって各都市は平静さを取り戻したと発表した。

また「彼らが何者だったのか近く世界に公開する」と述べた。

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ブサイナ・シャアバーンは『ハヤート』(3月26日付)の取材に対して、アサド政権が「祖国の屋根の下で行われるあらゆる問題、要求を議論する用意がある」と述べ、国民の要求に応じた「日程」を設けて改革が実施されることを強調した。

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共和国ムフティーのアフマド・バドルッディーン師やムハンマド・サイード・ラマダーン・ブーティーがシリア・アラブ・テレビに出演し、ダルアー市住民に対して、同市での出来事に耐えるよう呼びかけるとともに、「見ず知らずの者に従わないよう」、「内乱(フィトナ)」に荷担しないよう警鐘をならした。

諸外国の動き

フランスのニコラ・サルコジ大統領がブリュッセルで、デモ参加者への暴力停止をシリアに求めたうえで、また国際社会の反応に関して「その都度行われるだろう」と述べた。

またフランス外務省は「フランスは最近の(シリアでの)暴力を最も厳しく非難する」と発表した。

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一方、ドイツのギド・ウェスターウェレ外務大臣は、アラブ世界での民間人が弾圧されるたびに軍事干渉することを示唆したサルコジ大統領の発言を批判した。

シリアでのデモ参加者への暴力行使を批判しつつ、同外務大臣は「アラブの指導者に国際社会や欧州が軍事介入をすると脅迫しても解決策にはならない」と述べた。

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ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官が「シリア政府がデモ参加者を抑圧・脅迫しようとすることを強く」非難すると述べた。

そのうえでシリア政府に対して、デモ参加者への暴力停止、人権活動家逮捕停止を求めた。

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カナダはデモに対する「激しい抑圧」への「深い懸念」を表明し、デモ参加者の「勇気」をたたえ、シリア政府にデモ参加者が自由かつ安全に意見を表明する権利を保障するよう求めた。

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トルコ外務省は、シリアに経済、社会改革実施の約束を誠実かつ早急に果たすよう呼びかけた。

そしてシリアでの暴力拡大による犠牲者の発生に遺憾の意を示し、遺族に自制を求めた。

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『ナハール』(9月25日付)は、ヒズブッラーがダマスカス郊外県のサイイダ・ザイナブ町などシリアへの訪問を控えるよう党員に通達したと報じる。

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ユースフ・カラダーウィーは金曜日のモスクでの礼拝後の説教で、「到達せねばならない場所に革命の列車が到着した」と述べ、シリアでの反体制デモへの支持を表明した。

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バアス党シリア地域民族治安局は、情報省に対してロイター通信・ダマスカス支局のハーリド・ヤアクーブ・ウワイス支局長の取材許可を取り消すよう通達。

プロフェッショナリズムを欠いた根拠のない報道を行ったのがその理由。

AFP, September 25, 2011、Akhbar al-Sharq, September 25, 2011, September 26, 2011、al-Hayat, September 26, 2011、Kull-na Shuraka’, March 25, 2011, March 27, 2011,
March 30, 2011、al-Nahar, September 25, 2011、Naharnet.com, September 25, 2011、Reuters, September
25, 2011などをもとに作成。

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