2011年3月24日のシリア情勢

ダルアー市での反体制運動

ダルアー県では、ダルアー市でウマリー・モスクでの弾圧の犠牲となった9人の葬儀が行われ、数万人が参列し、その後、市内で街頭行進を行った。

外国メディア特派員の市内での取材は制限され、AP通信記者が午後に散発的な銃声を聞いたと報じただけである。これらの特派員は軍・治安部隊高官が随行するかたちでウマリー・モスクへの訪問を許された。道中、市内の店舗はすべて閉められ、幹線道路には車はほとんど走っていなかった、という。また兵士と警官が市の入り口に検問所を設置し、道路は閉鎖されていた。

ロイター(3月24日付)は、前日までにウマリー・モスクを制圧した軍・治安部隊が同モスクからの撤退を開始したと報じた。

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3月23日早朝にウマリー・モスクで殺害されたハーリド・ミスリー兵卒(ヒムス県タッルカラフ市出身)に関して、『アフバール・シャルク』(3月24日付)は、モスク襲撃命令を拒否したために殺害されたとシリア人権委員会が発表したと報じた。

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ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官が死者数を「10人」と述べたのに対して(後述)、人権活動家のアイマン・アスワド氏はAFP(3月24日付)の電話取材に対して、(23日までのダルアー市での弾圧で)「100人以上が殺害された…。ダルアー市では殉教者を埋葬するのに1週間はかかるだろう」と述べた。

また別の活動家は、「死者は150人を越えるだろう…。犠牲者の多くは、ダルアー市の近隣の村々から葬儀に参列するためにやってきたが、治安部隊が彼らに発砲した」と述べた。

さらにもう一人の活動家は、「数万人が周辺の村々からやって来て、バリード交差点と県知事邸交差点にさしかかったところを治安部隊に発砲された」と述べた。同活動家によると、ダルアー市には、タファス市、ヒルバト・ガザーラ町、フラーク市、ジャースィム市、インヒル市などから人々が訪れたという。

複数の消息筋によると、負傷者、行方不明者の多くは、政治治安部ダルアー支部やバアス党のビル前で抗議行動を行っていた、という。

反体制運動をめぐるその他の動き

シリア・クルド人権委員会、シリア民主的自由人権擁護諸委員会、シリア・クルド人権・一般的自由擁護機構(DAD)、シリア人権機構(Maf)は共同声明を出し、ダルアー市などで行われている抗議行動への支持を表明、市民の殺戮・暴行の真相を調査するための委員会設置、非常事態令・戒厳令解除、すべての政治犯・言論犯・良心犯の釈放、例外法廷の廃止、平和的デモを保障する法律の制定、クルド人の権利回復、政党法制定などを求める。

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シリア・クルド・イェキーティー党が声明を出し、ダルアー市などでの反体制デモへの支持を表明。

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ゴラン高原住民46人が声明を出し、「祖国がそのくびきから解放されることなく、ゴランの解放はない」と述べ、反体制デモへの支持を表明した。

アサド政権の動き

バッシャール・アサド大統領は24日夜、給与引き上げ、国境地帯への国民の往来手続の簡略化などに関する法令を発令した。またこの措置に先立って、ブサイナ・シャアバーン大統領府政治情報補佐官が「戒厳令施行停止の早急の検討」、「情報法および政党法の制定」、「司法の強化、恣意的逮捕禁止」など、政治に関する一連の決定を発表し。さらに、これらの決定に加えて、生活福祉状況改善に関する複数の決定がなされたことを明らかにした。そのなかには、ダルアー住民の意見を聴取するための「最高指導委員会の発足」が含まれており、ダルアーでの「事件の状況、曖昧な点の究明、そして事件発生に関与した者の処罰が行われるという。

シャアバーン大統領府政治情報補佐官は、午前中と晩に二度にわたって内外の記者団を前に会見を行った。

バアス党シリア地域指導部の会合後に行われた午前中の記者会見において、シャアバーン補佐官は同会合で「政治情勢の進展、国民福祉の現状、政府の施政」を審議されたとしてうえで、以下の通り述べた。

「党指導部は二段階からなる一連の決定を下した――第1段階は「生活・福祉の領域」に関する決定で、そのなかには最高指導委員会の設置が含まれている。同委員会の任務は、ダルアー市民と連絡をとり、意見聴取を行い、事件の状況、その曖昧な点を究明し、事件発生に関与した者、任務を行った者の処罰することにある。またこれ以外にも、公務員の賃金の即時引き上げおよび福利厚生のための資金調達、青年層失業者への雇用先の創出や臨時雇用者の正規雇用などを通じた就労機会増大のため必要な資源の確保、政府および地方自治体の施政の広範な矯正の実施とそのための早急な決定が行われる」。

「第2段階の決定は「政治レベル」に関するもので、腐敗一掃のための新たな効率的しくみの構築、戒厳令施行停止の早急の検討、祖国と国民の安全を保障するための法制定などが含まれる。また同決定のなかには、政党法案の準備、さらなる自由、透明性を求める国民の意思に合致した新たな情報法の制定、国民の往来手続の簡略化するための国境地帯に関する法令第49号の改正およびその適用への不満の解消」も含まれている。また政治決定の6番目の項目として、司法の強化、恣意的逮捕禁止、国民が抱える案件の迅速な処理があげられている。

シャアバーン補佐官は『ハヤート』(3月25日付)などの質問に対して、一連の決定は発令とともに実施に移されると述べた。

また最近発生した事件の調査は「進行中」と述べたうえで、「ダルアー市民をはじめとするシリア国民が行い得る当然の要求があり、それは平和的且つ期待に添うような速度で対処されるべき問題である」としつつも、「シリアの安定を乱そうとする者の意見とは相容れない」かたちでこれらの決定が成されたことを明らかにした。また「外国からシリアへ武器や資金が流入している確かな証拠がある…。武装活動が行われており、モスクが武器庫として利用され、治安部隊や医師が発砲を受けている…。外国がダルアーを選んだのは、資金や武器を流入させるに好都合な国境付近に位置するという地理的な理由であろう…。アラブ諸国や外国のメディアが「シリアを標的とすべく…、メディアを動員している」と述べた。

またダルアー市での死者数に関して「昨日晩の段階で9人が死亡したが、今日重傷を負っていた1人が死亡し、犠牲者数は10人になった」と述べた。

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『ニューヨーク・タイムズ』(3月24日付)は、ある顧問の話として、アサド大統領がダルアー市でのデモ参加者に対して発砲しないよう命令していたと報じる。

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ムハンマド・ナージー・アトリー首相はドゥンヤー・チャンネルのインタビューに答え、ダルアーでのデモに関して、県民の要求のなかには当然のものがあり、内閣は、適切な対処方法を検討し、正当な要求については内閣のプログラムの枠内で対応すると指摘した。

諸外国の動き

ヨルダンのターヒル・アドワーン情報通信担当国務大臣兼内閣報道官は、「ヨルダンからシリア領内に武器や戦闘員を搭載した複数の車が入っていった」との情報を否定した。

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米国務省は、シリアを訪問する予定の米国人に対して、「政治的、社会的混乱ゆえに警戒するよう」呼びかけた。また国務省高官の一人は、『ハヤート』(3月25日付)に対して、ワシントンが「集中的に状況を監視しており…、シリア政府による暴力、脅迫、恣意的逮捕を大いに懸念している」と述べた。国務省は「米国民にシリアの政治的、社会的混乱に警戒する」声明を発表し、「デモ発生地域に近づかないよう」勧告している。また同勧告は6月24日まで続くとしている。

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フランスのアラン・ジュペ外務大臣は「ダルアーをはじめとする地域でのデモ参加者への暴力を停止し、対話と民主的変革を進める」するようシリアに呼びかけた。

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また英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は「シリア政府に平和的デモを行う国民の権利を尊重し、合法的な彼らの要求に対処するための措置を講じる」よう呼びかけた。

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ドイツもまた、西欧諸国とともにデモ参加者への暴力停止をシリアに呼びかけた。

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国連事務総長報道官もまた、シリア政府に対して暴力停止と人権に関する国際的なとりきめを遵守するようを求めた。

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ドバイのシリア領事館前でシリア人が反体制デモを実施し、約100人が参加。

AFP, March 24, 2011, Akhbār al-Sharq, March 24, 2011, September 25, 2011、AP, March 24, 2011, al-Ḥayāt, March 25, 2011、Kull-nā Shurakā’, March 24, 2011、The New York Times, March 24, 2011、Reuters, March 24, 2011などをもとに作成。

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