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反体制運動をめぐる動き
シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、国連の人権調査チームが訪問したヒムス市で反体制デモが発生し、治安部隊とシャッビーハが発砲、犠牲者は8人にのぼった。
デモは国連人権調査チームが到着したことを聞きつけた市民が行い、数百人がアブドゥッラフマーン・ダルービー通りに集まったという。オガレット・ニュース・ネットワークとシャーム・ニュース・ネットワークは国連の人権調査チーム訪問中にヒムス市内で治安部隊がデモ参加者に発砲する映像を配信(資料映像はhttp://www.youtube.com/watch?v=m6cjb-q5274&feature=player_embeddedなどを参照)。
http://www.youtube.com/watch?v=m6cjb-q5274&feature=player_embedded
これを受け、シリアの治安当局は国連人権調査チームに対しヒムス市からの退去を要請した。デモ弾圧後、ファルハーンファルハーン・ハック国連報道官によると、「人権調査チームは(月曜日)に予定通りヒムス市に向かった。同地でデモが発生し、調査チームは安全上の理由で同地を去るよう要請された」と発表したうえで、「デモは人権調査チームがいた場所から遠い街中で発生し、チームは発砲が目撃された地域には訪問しなかった」と述べた。
一方、SANAは、国連の人権調査チームの訪問に合わせるかたちで、ヒムス県庁前で警官が武装集団の襲撃を受け、1人が殉職、複数が負傷したと報じた。
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シリア人権監視団によると、アサド大統領のインタビュー番組での発言を支持するためにシャッビーハが街頭に出て、ミスヤーフ市で発砲、市民2人を殺害、4人が負傷した。
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弁護士組合ラッカ支部前で反体制デモを支持する座り込みを行った弁護士7人が逮捕された。
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「モスクワ・ニュース」(22日付)によると、カイロのワフド党本部で、在外シリア人反体制活動家やエジプトなどアラブ諸国の政治家が会合を開き、「自由シリア人連合」の結成を宣言した。
同組織は「すべての当事者、潮流、見解に開放された協議会」であり、近代的市民国家としての新たなシリアの建設をめざす。報道官はシャーディー・ハッシュ氏が務める。
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シリア・アラブ人権機構のアンマール・カルビー会長はシリア・アラブ・テレビでの21日のバッシャール・アサド大統領のインタビューに関して、アラビーヤの番組「パノラマ」で「アサド(大統領)の演説から理解できたことは唯一、『我々はシリアが終わるまで打倒されない』というものだ」と非難。
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シリア言論犯良心犯擁護センターのハリール・マアトゥーク弁護士は、シリア人権連盟のアブドゥルカリーム・リーハーウィー会長(8月11日身柄拘束)が不起訴処分で釈放されたと発表した。
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アラブ諸国に滞在するシリア人ウラマー、シャイフ50人が共同声明を出し、アサド政権の弾圧に抗議。
アサド政権の動き
アサド大統領は大統領令第28号(2011年)を発し、政党問題委員会を設置した。同委員会はムハンマド・シャッアール内務大臣が議長を務め、控訴裁判所のムハンマド・ラキーヤ副裁判長、イブラーヒム・マーリキー言語氏、ムハンマド・ムラッシャハ氏、アリー・ムルヒム弁護士からなり、政党法に伴う政党公認申請などに対処する。
同委員会設置に合わせるかたちで、無所属のビジネスマンのザーヒル・サアドッディーン氏らが民主社会党と称する政党の発足準備を本格化し、近く公認申請を提出する。同氏は『ハヤート』(23日付)に対して、約50人の無所属のビジネスマン、有識者が参加すると述べた。
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SANAによると、ダマスカス県庁前(ユースフ・アズム広場)、アレッポ市サアドゥッラー・ジャービリー広場(サアドゥッラー・ジャービリー地区)、スワイダー市、ハサカ市、ラッカ市など各地でアサド政権を支持する市民が大規模集会を開き、シリアの愛国的・民族主義的諸原則、主権と独立の維持を支持、治安と安定を揺るがす試みへの拒否の姿勢を訴えた。
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「シリアは元気です」キャンペーンに参加した外国人約250人がハマー市を訪問し、現地を視察。
諸外国の動き
潘基文国連事務総長は記者団に対して、「自分の言葉を守らないことは不快感を引き起こす。彼が国際社会のよびかけのすべてに応えることを率直に望んでいる」と述べ、先週の電話会談での誓約を無視するアサド政権を非難した。この発言は、国連人権調査チームが訪問したヒムス市でデモ参加者が殺害されたことを受けた発言である。
ナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官は、国連人権理事会特別会合の場で3月半ば以降のシリアでの抗議行動の死者数が2,200人にのぼり、ラマダーン月(8月)だけで350人が殺害されたと述べた。
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国連人権理事会は特別会合でシリアでの弾圧の継続を非難。特別会合はサウジアラビア、ヨルダン、カタール、クウェートのアラブ諸国4カ国を含む24カ国の要請で召集された。同会合ではシリアに暴力の即時停止、独立調査委員会の派遣、そして同委員会による人権侵害状況の調査を求める決議が採択される模様。
シリアのファイサル・ハマウィー代表は、この動きに対して、「決議の採択はシリアの危機を長引かせる以外の何ものでもない」と非難の意を示した。
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西側外交筋は、シリアの石油・ガス部門に対するEU制裁が23日に発効すると述べた。
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ガダンファル・ロクン・アバーディー駐レバノン・イラン大使は、リビアの反体制勢力によるトリポリ制圧との関連で、「リビアの体制崩壊はシリアの体制に影響を及ぼさない。この問題はシリアの体制とは無関係」と述べ、アサド政権の改革を支持する立場を改めて確認した。
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SANAによると、レバノンのアドナーン・マンスール外務大臣は、シリアの治安と安全の回復をレバノンが欲しており、そのための支援を惜しまないとの意思を改めて表明。
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SANAによると、アサド大統領はイラクのジャラール・ターラバーニー大統領からの親書を受け取った。同親書には、シリアの治安と安定を標的とする計略に対抗するシリアをイラクが支援するとの意思が記されていた。
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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、シリア情勢を「悲観している」と述べ、「エジプト、チュニジアの経験を役立てる」よう呼びかけた。
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アズハル機構はアサド政権に対して、「流血の即時停止」を改めて求めた。
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アラン・ジュペ仏外務大臣はフランスのTV1とのインタビューで、リビアの体制崩壊に関して「シリアに大きな影響を与えるだろう」と述べるとともに、シリアへの軍事干渉の可能性については否定しつつも、「しかし我々は圧力を強化する。我々はバッシャール・アサドが政権にとどまることはできないと考える」と強調した。
AFP, August 22, 2011、AP, August 22, 2011、Akhbar al-Sharq, August 22, 2011, August 23, 2011, August 24, 2011, August 25, 2011、Alarabia.com, August 22, 2011、al-Hayat, August 23, 2011、Kull-na Shuraka’, August 22, 2011、Moscow News, August 22, 2011、Reuters, August 22, 2011、SANA, August 23, 2011などをもとに作成。
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