2012年4月1日のシリア情勢

シリアの友連絡グループ第2回会合

イスタンブールでシリアの友連絡グループ第2回会合が開かれ、西側諸国、湾岸諸国など83カ国が参加したが、現状打開のためのいかなる具体的な決定もなされないまま閉会となった。

al-Ḥayāt, April 2, 2012

al-Ḥayāt, April 2, 2012

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会合では、コフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使の6項目停戦案を受諾したアサド政権に対して、停戦案履行の期限を設けるべきだとの意見が相次いだ。

しかし、自由シリア軍の武器供与や安全保障地域の設置などに関しては何らの進展も見られなかった。

またアラブ連盟のナビール・アラビー事務総長が、政治的解決の試みすべてが頓挫した場合、国連憲章第7章に基づき、暴力停止や刑事裁判所への政権幹部の訴追を求める安保理決議の採択を求めたが、この提案をめぐる具体的な審議はなされなかった。

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『ハヤート』(4月2日付)によると、会合では自由シリア軍の武器供与などを念頭にアサド政権に強硬な姿勢で対処しようとするトルコ、サウジアラビアと、シリアへの軍事干渉がもたらす混乱激化に慎重な姿勢を示す西側諸国の温度差が目立った。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は開会の辞で「シリア国民の合法的な自衛権を支援する以外に選択肢はない」と述べ、自由シリア軍の武装や安全地帯設置に向けて国際社会が積極的な行動をとるよう呼びかけた。

またアフメト・ダウトオール外務大臣は「シリア情勢に関するラスト・チャンスだ」と述べ、停戦案履行の期限を設けるべきだと強調し、「民間人保護のため統一的な姿勢をとらねばならない。物資の搬入と暴力停止のための統一行動計画を持たねばならない」との意見を表明した。

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フランスのアラン・ジュペ外務大臣は、アサド政権による6項目調停案実施の「時間的猶予を限定すべき」と述べた。

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ヒラリー・クリントン米国務長官は、シリア情勢に関して、「現状に関する私の読みでは、反体制勢力は力をましており、その逆ではない」と述べた。

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閉幕声明では、アナン特使の6項目停戦案への全面支持と、アサド政権による履行の期限設定を求め、アサド政権に即時暴力停止を迫る一方、アラブ連盟外相会合による行程表への指示を表明し、アサド政権の打倒への意思を示した。

またシリア国民評議会に関しては、「シリア国民の合法的な一代表」、「反体制勢力の主軸」としての承認が確認されたもの、「排他的な唯一の代表」としての地位を求めている評議会の要求とはほど遠かった。

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第3回会合はパリで4月半ばに予定されている。

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なお、イスタンブールでは、シリア人約50人がシリアの友連絡グループ第2回会合に反対するデモ行進を行ったが、トルコの警察によって強制排除された。

アサド政権の動き

SANA(4月1日付)は、シリアの友連絡グループ第2回会合に関して、「「シリアの友達の大会」の名のもとに合意したシリアの敵のシリア国民に対する新たな敵対行為・陰謀」としたうえで、アナン特使の危機打開の努力や危機打開を指示する国際社会のコンセンサスを逸脱させようとしている、と非難した。

国外の反体制勢力の動き

シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長は会合後にイスタンブールで記者会見を開き、「シリア国民の苦しみは形容のしようがないほどだ。我々は、シリア国民の要求のレベルに会合が達するまで待ってはいられない」と不満を表明した。

しかし評議会が「シリア国民の合法的な一代表」、「反体制勢力の主軸」として承認されたことに関しては、「アサド政権は非合法となった…国民はこの合法政権と戦う権利がある」と述べた。

一方、評議会による自由シリア軍への給与支払いに関しては、「財源が複数からの支援による」ことを明らかにした。

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『ハヤート』(4月2日付)によると、シリア・ムスリム同胞団広報局のバースィル・ハッファール氏は、「シリア国民の合法的な一代表」、「反体制勢力の主軸」としての承認に関して、「すでに自明のことで何ら新しいことではない…。なのに彼らはなぜそのことを根本から話し合ったのか?」と非難した。

またシリアの友連絡グループが「あるときは反体制勢力の統合、あるときは統一ビジョンの提示…ばかりを求め、国際社会は民間人が殺戮されているという現状からあまりにかけ離れて行動している」と付言した。

国内の反体制勢力の動き

Kull-nā Shurakā’, April 1, 2012

Kull-nā Shurakā’, April 1, 2012

民主諸勢力国民調整委員会はダマスカスで中央評議会を開催し、「新たな内規」と「今後の政治プログラム」を承認するとともに、新執行部を選出した。

会合後に発表された中央評議会声明第2号によると、国民調整委員会は、アナン特使のミッションなどシリア危機の政治的解決への支持を確認し、そのための即時暴力停止、平和的な手段での革命の目標の実現、政治犯の釈放、平和的デモの保障、民間人殺戮の責任者の処罰の必要を強調した。また反体制勢力統一の努力を継続する必要を確認した。

一方、新執行部には以下の活動家が選出された。

アブドゥルアズィーズ・ハイイル
ムンズィル・ハッダーム
アーリフ・ダリーラ
バッサーム・マリク
ラジャー・ナースィル
ムハンマド・サーリム・ムスリム
アブドゥルマジード・マンジューナ
バッサーム・アイサミー
キファーフ・アリー・ディーブ

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会合後に開かれた記者会見で、ハサン・アブドゥルアズィーム代表は、アサド政権を打倒するとの確固たる委員会の姿勢が再確認されたと述べる一方、外国の軍事的介入を拒否するとの姿勢を改めて示した。

またクルド問題に関して、アブドゥルアズィーム代表は、「公正かつ民主的な解決案の創出」を確認したことを明らかにした。

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自由シリア軍による武装闘争に関して、ラジャー・ナースィル氏は、「自由シリア軍がシリア革命の一現象であり、平和的な民衆運動に対する政権の治安・軍事的措置の結果である」と述べ、「客観的に対処」する必要があるとの姿勢を示した。

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『クッルナー・シュラカー』(4月1日付)は、国内で反体制活動をする国民民主イニシアチブのムハンマド・サルマーンが反体制勢力を統合しないようアリー・マムルーク総合情報課長とアースィフ・シャウカト副参謀長(中将)によって脅迫された、と報じた。真偽は定かでない。

国内の暴力

反体制勢力がインターネット上で、弾圧によりヒムス市で最初の犠牲者が出た2011年4月1日から1年経ったのに合わせるかたちで「ヒムスの殉教者記念日」と銘打ってデモを呼びかけていたが、デモが発生したと報じたのは、アサド政権に批判的なメディアだけだった。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、クーリーヤ市で、軍・治安部隊と離反兵が交戦し、市民・離反兵5人と軍・治安部隊兵士4人が死亡した。

またシリア革命総合委員会によると、同市では体制打倒を訴える反体制デモが発生した、という。

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ダルアー県では、シリア革命総合委員会によると、複数の都市で学生が体制打倒と自由シリア軍支持を訴える反体制デモを行った、という。

また軍・治安部隊の発砲で、離反兵4人を含む7人が殺害された、という。

一方、SANA(4月1日付)によると、県内各地で軍・治安部隊と武装テロ集団が交戦し、テロリスト多数が死亡した。

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イドリブ県では、地元調整諸委員会やシリア人権監視団によると、マアッラト・ヌウマーン市で軍・治安部隊の発砲により、女性1人が殺害された。

またジスル・シュグール地方の対トルコ国境地帯で軍・治安部隊と離反兵が交戦し、前者の兵士4人が死亡、11人が負傷した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市で学生が反体制デモを行った。

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ハマー県では、シリア革命総合委員会によると、カルアト・マディーク町で身元不明の遺体3体が発見された。

レバノンの動き

ファーイズ・グスン国防大臣は、『ナハール』(4月1日付)に対して、対シリア国境で武器密輸摘発作戦を行っていると述べる一方、300キロの両国国境での密輸を完全に取り締まることは困難だと認めた。

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AFP(4月1日付)は北部県トリポリ市のバーブ・タッバーナ地区とジャバル・ムフスィン地区の間の軍検問所に向けて何者かが発砲し、兵士3人が負傷した。

諸外国の動き

イラクのヌーリー・マーリキー首相は、バグダードで記者会見を開き、シリアの「体制打倒のために力を行使するという言説では体制は倒れないだろう」と述べ、アサド政権の打倒を拒否する姿勢を明示した。

また「問題は体制と反体制勢力がともに頑なに対抗し合っており、武器が存在することだ…。我々アラブ人がすべきは、危機を鎮火するだ…。そうしなければ、我々、レバノン、ヨルダン、パレスチナ、そして地域全体に影響が及ぶ…。我々は武器供与、力による体制打倒を拒否する」と付言した。

さらに「おかしいことに、この二つの国は、鎮火のために行動するのではなく、武器供与を呼びかけている…。この二つの国は我々が武器供与と外国の介入に反対だという我々の声が聞こえることだろう」と述べ、サウジアラビアとカタールの対シリア政策を暗に批判した。

イラクはシリアの友連絡グループ第2回会合を欠席した。

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『ハヤート』(4月2日付)は、イラン外務省のカーゼム・サジャーディー報道官が、シリアで釈放されたとされる技師5人のイランが帰国したことに関して、この5人が誘拐されていた技師ではなく、シリア国内のシーア派聖地巡礼者だったと発表した、と報じた。

AFP, April 1, 2012、Akhbār al-Sharq, April 1, 2012、al-Ḥayāt, April 2, 2012、Kull-nā Shurakā’, April 1, 2012、al-Nahār, April 1, 2012、Naharnet.com, April 1, 2012、Reuters, April 1, 2012、SANA, April 1, 2012、al-Sharq al-Awsaṭ, April 2, 2012などをもとに作成。

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