ロシアは国外難民690万人の帰国に向けて、米国、シリア政府と合同調整センターを設置(2018年7月20日)

ロシアの国防省と外務省は、国外難民と国内避難民の帰還を支援するための合同調整センターの計画策定会合を開催した。

会合は公開され、メディア関係者も同席した。

Ministry of Defense of Russia, July 20, 2018

ロシア国防省によると、合同調整センターの設置の経緯、目的、活動内容などは以下の通り:

**

合同調整センターは、シリア軍による反体制派支配地域の制圧、ロシアの支援を受けたかたちでの治安回復、インフラ復旧作業が行われるなか、国外避難民および国内避難民の帰還と復興を推し進めることが重要だとの認識のもとに設置された。

16日にフィンランドの首都ヘルシンキで行われたヴラジミール・プーチン大統領とドナルド・トランプ米大統領の首脳会談でも、この分野を前進させることを確認、ロシア側は米国側に対して、そのための具体的な提案を行った。

提案の内容は、レバノン、ヨルダンに退去している難民の帰還のための航空機の手配、ヨルダンの首都アンマンにある(米国の)当事者和解調整センターを母体とするロシア・米国・ヨルダン・グループの設置、同様のセンターのレバノンでの設置、インフラ支援のための合同グループの設置、などを骨子とする。

セルゲイ・ショイグ国防大臣の決定に従い、シリア国内でも難民帰還とイフラ復旧支援に向けたセンターを既に設置している。

合同調整センターは、ロシアの国防省、外務省、および関係省庁の代表と、関係各国の代表から構成され、国防省の国家防衛管理センターが所轄、またシリアの首都ダマスカスに難民受入移送居住センターの本部、対レバノン国境および対ヨルダン国境に支部を設置し、実務を担当する。

2011年以降、シリアから、トルコ、レバノン、ヨルダン、イラク、ドイツ、英国、スウェーデンなどに逃れた難民(そして移民)の数は690万人に達する。

当初見込みでは、170万人(レバノンから8万9000人、トルコから30万人、ヨルダンから15万人、イラクから10万人、エジプトから10万人、欧州諸異国から20万人)が近い将来にシリアに帰国可能で、まずはレバノンとヨルダンからの帰国に着手する予定である。

現在のところ、紛争の被害が少ない76の居住地区に33万6,500人が収容可能で、またダマスカス県、ダマスカス郊外県東グータ地方、ハマー市、ヒムス市、アレッポ市のインフラが復旧すれば、55万~60万人を3~6ヶ月のうちに収容可能になる。

シリアの都市、町、村のインフラは40~70%が破壊されている。

**

一方、ロシア国防省のイゴール・コナシェンコフ報道官は、国内避難民の避難状況と難民の帰国状況の詳細を報告した。

それによると、6月27日以降、4万5,343人が南西部(ダルアー県、クナイトラ県)の緊張緩和地帯から避難、うち6,255人がジャバーブ村(ダルアー県)とラサース村(スワイダー県)に避難民キャンプに収容された(現在、両キャンプにとどまっているのは1,081人)。

イドリブ県の緊張緩和地帯内にあるフーア市、カファルヤー町から6,100人の市民がアレッポ県のジャブリーン村の避難民キャンプに移送された。

一方、2018年1月以降、外国から帰国したシリア難民の数は10万1,976人に達した。

Ministry of Defence of the Russian Federation, July 20, 2018をもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.