シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握するイドリブ県、ハマー県北部、ラタキア県北部、アレッポ県西部の緊張緩和地帯第1ゾーンに対するシリア・ロシア軍の激しい爆撃・砲撃は18日目を迎えた。
シリア人権監視団によると、シリア軍ヘリコプターが各所に投下した「樽爆弾」は35発、戦闘機による爆撃は65回に達した。
なお、4月30日以降の戦闘による犠牲者数は前日より12人(民間人3人、兵士・戦闘員9人)増えて474人となった。
うち、156人が民間人(女性33人、子供29人を含む)、308人がシリア軍兵士および反体制武装集団戦闘員。
なお、ノールス研究センター(5月17日付)によると、4月30日に激化した戦闘でのシリア軍の死者数が142人(うち士官は30人以上)にのぼっているという。
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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、シリア軍戦闘機がカッバーナ村一帯を17回爆撃、ヘリコプターがカッバーナ村一帯に「樽爆弾」14発を投下した。
また地上では、シリア軍がカッバーナ村一帯を砲撃した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリア軍戦闘機がハーン・シャイフーン市およびその一帯を3回、バアルブー村を2回、ウライニバ村を2回、マアッラト・ヌウマーン市を2回、カフルサジュナ村を2回、ナキール村を2回、トゥラムラー村を2回、マダーヤー村を2回、ヒーシュ村を2回、フバイト村を2回、カフル・アイン村を2回、フィキーア村およびその一帯を2回、カルサア村を2回爆撃し、ヘリコプターがトゥラムラー村に「樽爆弾」2発、ウライニバ村に2発、アービディーン村に2発を投下した。
一方、SANA(5月17日付)によると、シリア軍がヒーシュ村、ハーン・シャイフーン市、カフルサジュナ村、マアッラト・ハルマ村、フバイト村にあるシャーム解放機構の拠点を砲撃した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、シリア軍戦闘機がガーブ平原およびシャフシャブー山(イドリブ県)各所を11回、カフルズィーター市を5回、アンカーウィー村を3発爆撃し、ヘリコプターがガーブ平原およびシャフシャブー山各所に「樽爆弾」12発、ラターミナ町およびその一帯に3発を投下した。
また地上では、ガーブ平原およびシャフシャブー山各所でシリア軍が反体制武装集団と激しく交戦した。
ドゥラル・シャーミーヤ(5月17日付)によると、反体制武装集団がカルカート村灌木地帯でシリア軍を要撃し、15人を殺害したという。
一方、SANA(5月17日付)によると、シリア軍がマサースィナ村一帯に進攻しようとしたシャーム解放機構を撃退した。
シリア軍はまた、サフリーヤ村、アミーカ村にあるシャーム解放機構の拠点を砲撃し、複数の戦闘員を殺傷した。
このほか、ガーブ平原地元諸評議会を名のる集団が声明を出し、ロシア・シリア両軍によるガーブ平原の村々の占領を拒否すると表明、革命家たちによる同地の解放を呼びかけた。
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アレッポ県では、ドゥラル・シャーミーヤ(5月17日付)によると、県南部のアイス通行所で、シリア軍とシャーム解放機構が捕虜交換を行い、シリア軍は女性22人を含む逮捕者27人の身柄を、シャーム解放機構はシリア軍捕虜9人の身柄をそれぞれに引き渡した。
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ロシア国防省は声明を出し、過去24時間で「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」への違反を5件(アレッポ県1件、ラタキア県4件)確認したと発表した。
トルコ側の監視チームは停戦違反を18件(ハマー県12件、アレッポ県5件、イドリブ県1件)確認した。
AFP, May 17, 2019、ANHA, May 17, 2019、AP, May 17, 2019、al-Durar al-Shamiya, May 17, 2019、al-Hayat, May 18, 2019、Nors for Studies, May 17, 2019、Reuters, May 17, 2019、SANA, May 17, 2019、SOHR, May 17, 2019、UPI, May 17, 2019などをもとに作成。
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