イスラエルへの越境デモを行ったシリア人、パレスチナ人数十名がイスラエル軍の発砲により死亡(2011年6月5日)

Contents

シリア人、パレスチナ人のイスラエルへの越境デモ

SANA(6月5日付)などによると、ナクサ(1967年6月5日)記念日に合わせて、シリア人およびパレスチナ人市民数百人が、クナイトラ県マジュダル・シャムス村からイスラエル占領下のゴラン高原への徒歩での越境を試み、イスラエル軍の発砲を受け、少なくともパレスチナ人とシリア人20人が死亡、325人が負傷した。

al-Hayat, June 6, 2011

al-Hayat, June 6, 2011

SANAによると、犠牲となったシリア人、パレスチナ人は「占領下のゴラン高原に迫り、有刺鉄線を切断し、イスラエル占領軍が敷設した地雷原を越えようとした際、イスラエル軍の発砲を受けた」という。

ゴラン高原への越境行進は、SNSなどを通じて活動家が呼びかけていたが、『ハヤート』(6月6日付)によると、シリア当局はこれを阻止しようとしなかったという。

反体制勢力の動き

シリア人権監視団は、5月31日の恩赦を受けるかたちで、イスラーム主義者、クルド人など450人以上の政治犯が釈放されたと発表した。

これらの政治犯は、シリア最大の刑務所の一つであるサイドナーヤー刑務所に収監されており、なかには25年以上収監されていた者もいるという。

また同監視団は、ダマスカス民主変革宣言運動幹部のアリー・アブドゥッラー氏が5月31日の恩赦に基づいて釈放されたと発表した。

シリア政府の動き

ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣はUAEアブダビ首長国のシャイフ・ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン皇太子とダマスカスで会談した。

『ハヤート』(6月5日付)によると、ムハンマド皇太子は改革とともに安定が不可欠と述べたという。

**

SANA(6月5日付)によると、アーディル・サファル首相は、政党法案準備委員会を設置することを正式に決定した。

国内の暴力

イドリブ県では、シリア人権監視団などによると、ジスル・シュグール市およびその周辺一帯での治安部隊による「治安維持・軍事作戦」により28人が死亡した。

同監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表によると、過去2日間での同地域での死者数は、治安要員6人を含め38人に達しており、「治安維持・軍事作戦」は継続中だという

一方、SANA(6月5日付)は、「武装テロ集団」がジスル・シュグール市内の多数の政府施設、警察署を攻撃し、「市民、公共財産、私有財産を守る任務についていた警察官、治安要員4人が死亡、20人以上が負傷し、そのなかには同地域を管轄する局長、士官、さらに市民多数が含まれている」と報じた。

**

ハマー県では、AFP(6月5日付)によると、金曜日のハマー市でのデモでの犠牲者を追悼するためのストライキが行われた。

同市の住民によると、「我々は土曜日、殉教者を追悼するため3日間の予定でストを始め…、商店(スーパーマーケット)などすべてがしまっており、治安部隊は市の郊外に撤退した」という。

シリアの複数の高官筋は『ハヤート』(6月6日付)に対し、ハマー市東部入口に軍戦車が展開し、同市を包囲しているとの複数の情報を「根拠がない」と否定した。

**

ダイル・ザウル県では、ロイター通信(6月5日付)などによると、ダイル・ザウル市内で夜間に抗議デモが行われ、約7,000人が参加し、故ハーフィズ・アサド前大統領の銅像を倒そうとした。

これに対して治安部隊が発砲し、数十人が負傷した。

同市の住民によると、デモ参加者は、金曜日のデモで死亡したムアーッズ・ラカードくん(14歳)の家の周辺で集会を行っていたという。

諸外国の動き

ブリュッセルで反体制活動家らが開催していた「シリア革命支援国民連立大会」が閉幕した。

大会には200人以上の活動家が出席し、閉幕声明でアサド政権に「さらなる圧力をかける必要がある」と強調、同政権を「外交的に孤立させ、国際社会のメンバーたることを認めないのが肝要」との立場を示した。

またシリア政権による「国民対話委員会」の設置と会合を「茶番」と一蹴し、政権による弾圧が続いているなか「国民対話について云々することはできない」と非難した。

そのうえでアサド政権の「人権侵害を評価するための法的委員会」の設置を宣言し、「責任者の告訴」、「国際司法裁判所へのシリアの問題の付託」を主唱した。

AFP, June 5, 2011、Akhbar al-Sharq, June 5, 2011、al-Hayat, June 6, 2011、Kull-na Shuraka’, June 5, 2011、Naharnet, June 5, 2011、Reuters, June 5, 2011、SANA, June 5, 2011などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.