ハマー市、ダルアー市を含む多くの都市で「数万人」規模の反体制デモが発生、「アノニマス」は在外のシリア大使館に対するサイバー攻撃を予告(2011年6月3日)

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国内の暴力

『ハヤート』(6月4日付)によると、ハマー市、ダルアー市、ダイル・ザウル市、イドリブ市、カーミシュリー市(ハサカ県)、アームーダー市(ハサカ県)、ヒムス市、ダマスカス県・ダマスカス郊外県、バーニヤース市(タルトゥース市)などで、金曜礼拝後に反体制デモが発生し、「数万人」が参加した。

al-Hayat, June 4, 2011

al-Hayat, June 4, 2011

『ハヤート』(6月5日付)によると、複数の活動家がインターネットを通じて、デモの様子を撮影したビデオ映像を公開した。

映像のなかには、参加者がヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長の写真を掲げて、アサド大統領と同盟関係にある同書記長に厳しい言葉を浴びせるものなどもあったという。

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反体制デモに対して、治安部隊が催涙弾だけでなく、実弾で強制排除を試み、民間人数十人が死亡、数百人が負傷した。

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ハマー県では、シリア人権監視団やロイター通信(6月3日付)などによると、ハマー市での大規模デモに対する治安部隊の弾圧で、少なくとも34人が死亡、数百人が負傷した。死者はさらに増える見込みだという。

また活動家らによると、市内の複数の病院で負傷者に輸血するための血液提供を呼びかけているという。

ハマー市の住民らによると、治安部隊と狙撃手は旧市街およびその近くのアースィー広場でデモ参加者数千人に自動小銃で発砲し、これを受けてデモ参加者数は「5万人」に再び膨れあがったという。

複数の市民はまた、狙撃手を含む治安部隊が、で数千人のデモ参加者に発砲したと述べた。活動家の一人は「彼らはデモ参加者に直接発砲した。催涙弾ではデモ参加者を排除できなかった。最初に催涙弾を使用し、その後発砲してきた」と述べた。この活動家はまたデモ参加者が「平和的に」自由を求めるシュプレヒコールを連呼し、体制打倒を求めていたことを明らかにした。別の活動家は、死者数が「50人以上になるだろう」と述べた。

一方、シリア・アラブ・テレビ(6月3日付)はデモ参加者が「約10,000人」に上ったとしたうえで、「暴徒がハマー市の政府施設を襲撃・放火し、警察部隊に反抗した破壊分子3人を殺害した」と報じた。

また、SANA(6月3日付)によると、ハマー市で数百人が反対デモを行った。

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イドリブ県では、『ハヤート』(6月4日付)によると、マアッラト・ヌウマーン市で反体制デモが行われ、周辺地域から数千人が集まった。

一方、SANA(6月3日付)によると、県内複数でデモ集会が行われた。

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ハサカ県では、『ハヤート』(6月4日付)によると、カーミシュリー市、ラアス・アイン市、アームーダー市で反体制デモが発生し、5,000人以上が参加した。

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タルトゥース県では、『ハヤート』(6月4日付)によると、バーニヤース市で反体制デモが発生し、5,000人以上が参加した。

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ダルアー県では、『ハヤート』(6月4日付)によると、ジャースィム市で、治安部隊がデモを排除するため空砲を発射した。

レバノンの動き

NNA(6月3日付)によると、ベイルート県ダウンタウンのウマリー・モスク内でアサド政権に反対するデモが行われ、イスラーム解放党支持者ら約200人が参加する一方、モスクの外ではアサド政権を支持する活動家ら約200人が集まり、デモを行った。

諸外国の動き

フランス外務省は声明を出し、「シリアの複数の都市の住民、とりわけラスタン市、タルビーサ市、ダルアー市の住民が、現在、非人道的な状況に直面している。彼らは水、生活物資、電気、医療サービスを奪われ、殺戮行為と無差別逮捕に曝され、それは病院内でも行われている」と非難、アサド政権に「野蛮な暴力行為の停止」を求めた。

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ニューヨークでは、国連報道官によると、潘国連事務総長がシリア当局によるデモ参加者への暴力行為激化に「深い懸念」を表明した。

国連報道官は「事務総長は、先週だけで70人以上が死亡したとされるシリアでの暴力の激化を深く懸念しており、犠牲者総数は…1,000人以上に達し、負傷者はさらに多数にのぼり、数千人が逮捕されている」と述べた。

国連がデモの死者数を発表するのはこれが初めて。

また潘事務総長は「拷問、実弾、砲撃による児童の殺害なども報告されている深刻な人権侵害状況に対して懸念」を表明し、「すべての殺戮行為に対する完全で独立した透明性のある調査の実施が行われなければならない」と述べたという。

また治安部隊と軍が行っている弾圧を即時停止する必要を強調、それによって、「すべての人々を包摂する真の対話を実現し、シリア国民が求める包括的な改革と変革を行うべき」との考えを示した。

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ハッカー集団「アノニマス」はPastebin.com(6月3日付)に書き込みを行い、在外のシリア大使館のウェブサイトに対してサイバー攻撃を行うと宣言した。

「暴君にして人権侵害者のバッシャール・アサドが…シリア国内のインターネットを遮断した」ことが攻撃の理由だという。

AFP, June 3, 2011、Akhbar al-Sharq, June 3, 2011、al-Hayat, June 4, 2011, June 5, 2011、Kull-na Shuraka’, June 3, 2011、Naharnet, June
3, 2011、NNA, June 3, 2011、Pastebin.com, June 3, 2011、Reuters, June 3, 2011、SANA,
June 3, 2011などをもとに作成。

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