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国内の暴力
国連のシリア停戦監視団(UNSMIS)先遣隊は前日のヒムス市に続いて、ハマー市、ラスタン市を視察した。
UNSMISが訪問した両市では、反体制勢力、軍・治安部隊による交戦は発生しなかった。
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ヒムス県では、国連高官によると、住民の要請により、UNSMISの監視団2人がヒムス市に留まり、停戦監視を継続することとなった。
シリア革命総合委員会報道官でヒムス市の活動家ハーディー・アブドゥッラー氏は、同市での停戦が「監視団がいるため」との見方を示した。
先遣隊のアフマド・フマイシュ団長は、ラスタン市を訪問し、ヒムス軍事評議会司令官のカースィム・サアドッディーン大佐と会見した。
フマイシュ団長の訪問に合わせ、住民が「アッラー以外の何ものにもひれ伏さない」とのシュプレヒコールを連呼し、反体制の意思を示した。
しかし、シリア人権監視団によると、ヒムス市では、軍・治安部隊の発砲で民間人3人が殺害された、という。
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ハマー県では、マスアブを名のる活動家によると、UNSMIS先遣隊が訪問したハマー市は「停戦発効依頼もっとも静か」で、軍・治安部隊による砲撃はなかった。
マスアブ氏はこの平静に関して、「我々は戦車を目にすることはないが、彼らは政府の施設に戦車を隠しただけだ」と述べた。
しかし、SANA(4月22日付)によると、ハマー市の科学研究センターの従業員2人が武装テロ集団によって暗殺された。
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ダマスカス郊外県では、UNSMIS先遣隊が訪問した地域とは対称的に、革命始動評議会によると、軍・治安部隊がドゥーマー市に多数の戦車を突入させ、砲撃を加えた、という。
シリア人権監視団によると、同市では軍・治安部隊の発砲で2人が死亡する一方、治安維持部隊が爆弾攻撃を受け、兵士4人を失った。
AFP(4月22日付)は、ダマスカス郊外県革命始動評議会メンバーのムハンマド・サイードを名のる活動家の話として、ドゥーマー市への軍・治安部隊の攻撃は連日行われているが、22日の攻撃はこれまでもっとも激しいものだったと報じた。
またフタイタト・トゥルクマーン村では、治安部隊の検問所で市民1人が殺害された。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ラーミー村で市民3人が殺害された。
一方、SANA(4月22日付)によると、ムハムバル村・ビシュマールーン村間で小麦を輸送していた列車が武装テロ集団に襲撃され、線路が破壊され、小麦が被害にあった。
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アレッポ県では、SANA(4月22日付)によると、ラッカ・アレッポ街道で軍の士官らが乗ったバスが武装テロ集団に襲撃され、兵士1人が死亡、42人が負傷した。
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タルトゥース県では、シリア人権監視団によると、バーニヤース市で治安パトロール隊に対する発砲で、兵士1人が死亡した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(4月22日付)によると、マヤーディーン市とブーカマール市で治安維持部隊兵士2人が武装テロ集団に殺害された。
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シリア革命調整連合によると、各地での死者は18人に上ったという。
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サウジアラビア紙『シャルク』(4月22日付)は、ヨルダン領内に非難しているシリア人避難民がヨルダン領内でシリアの国境警備隊の要撃に遭い、6人が負傷、約30人が逮捕された、と報じた。
反体制勢力の動き
ザマーン・ワスル(4月22日付)は、ヒムス市を訪問したUNSMIS先遣隊が自由シリア軍のアブドゥッラッザーク・トゥラース少尉らに導かれ視察を行う映像(21日撮影)がユーチューブなどで配信されたことに関して、複数の反体制活動家が政府に居場所が知られる恐れがあると非難した、と報じた。
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自由シリア軍国内合同司令部報道官のカースィム・サアドッディーン大佐は、AFP(4月22日付)に対して、300人から構成されるUNSMISでは「政府の殺戮・破壊を停止させる」のに規模が不充分だと述べた。
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国内で反体制活動を行うシリア国家建設潮流のルワイユ・フサイン代表は声明を出し、反体制政党・活動家とともに「平和的変革諸勢力第1回合意大会」を開催すると発表し、「民主的国家への移行に向けた…活動システム」構築のため、参加を呼びかけた。
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4月21日に開催されたシリア・クルド国民評議会大会が新執行部75人を選出して閉幕した。
また同大会では、評議会に5党、調整組織17団体が新たに参加したことが改めて承認された。
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反体制活動家のムンタハー・アトラシュ女史とアブドゥッラー・イマーム弁護士は共同声明を出し、シリア国民評議会とシリア・クルド国民評議会に対して、対立を解消し、クルド問題解決のための統一の政治ビジョンを策定するよう呼びかけた。
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祖国シリア党(公認野党)は声明を出し、物価上昇に抗議するため、党員12人が5日間のハンストを経済通商省前で開始したことを明らかにした。
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『クッルナー・シュラカー』(4月22日付)は、バアス党高官筋の話として、レバノンでシリア当局が誘拐していたとされるシブリー・アイサミー氏の釈放が、同氏が執筆した自伝を引き渡すことを条件としていると述べたと報じた。
アイサミー氏はバアス党創設者の一人で1960年代に失脚、自伝ではバアス党政権の犯罪や悪行が暴露されているという。
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シリア国民評議会は声明を出し、国連安保理決議2043号の採択を歓迎した。
レバノンの動き
NNA(4月22日付)は、トリポリ市アビー・サムラー地区で行われたアサド政権に反対するデモに何者かが発砲し、3人が負傷したと報じた。
諸外国の動き
コフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使は、アサド政権に対して重火器の「最終的」な使用停止と、住宅地からの軍の撤退を改めて要求した。
アナン特使は、国連安保理決議第2043号採択を受けるかたちで、「国の安定にとって決定的瞬間」としたうえで、「政治的プロセスを始動するのにふさわしい環境作りを支援することが監視団の活動」であると述べ、「政府であれ、反体制勢力であれ、それ以外の勢力であれ、武器を手放し、暴力停止に向けて国連監視団とともに行動」するよう呼びかけた。
AFP, April 22, 2012、Akhbar al-Sharq, April 22, 2012、al-Hayat, April 23, 2012、Kull-na Shuraka’, April 22, 2012、Naharnet.com, April 22, 2012、NNA, April 22, 2012、Reuters, April 22, 2012、SANA, April 22, 2012、al-Sharq (Riyad), April 22, 2012、Zaman al-Wasl, April 22, 2012などをもとに作成。
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