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アラブ連盟監視団
アラブ連盟監視団のアドナーン・ハディール作業部長は、「現在までの事態は落ち着いている」とのムハンマド・アフマド・ムスタファー・ダーニー団長の発言(12月28日)に関して、「シリア政府が監視団に対して真摯に対応しているという意味であり、現地情勢について言ったものではない」と述べた。
反体制デモと親体制集会
アラブ監視団がヒムス、ハマー、ダルアー、イドリブ、ダマスカス郊外県で視察活動を行うなか、イドリブ、ヒムス、ダマスカス郊外、ハマー、ダルアー、ダイル・ザウル、ハサカ、アレッポなどで反体制デモが発生し、反体制勢力の発表によると数十万人が参加した。
反体制勢力によると、デモに対して、治安当局は催涙弾、釘爆弾、実弾で強制排除を試み、少なくとも35人が死亡、数百人が負傷したという。
フェイスブック上の「シリア革命2011」など反体制サイトは、「自由広場への行進の金曜日」のデモを呼びかけた。
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一方、SANA(12月30日付)によると、ダマスカス県、ダマスカス郊外県、アレッポ県、ヒムス県、ラタキア県、タルトゥース県、スワイダー県、ハサカ県など各地で、外国の干渉拒否、アサド政権の改革支持を訴える大規模な集会が開催された。
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ダマスカス郊外県のドゥーマー市では、カビール・モスク前に集まり、「彼らに自由がどのようにして成るのかを見せるためあらゆる場所で監視団の存在を利用」(Facebook)しようとするデモ参加者に対して、拡声器で「我々の任務は監視であって…、バッシャール・アサド大統領の退任では決して、決してない。我々の目的は事態を収拾することだ」と述べた。
監視団メンバーらは、住民らに写真撮影や録音をしないよう求めたが、住民らは彼らの要請に応じず、ジャズィーラなどに映像を配信した。
活動家らによると、ドゥーマー市でのデモ参加者は60,000人に及んだという。
またハラスター市、ムウダミーヤト・シャーム市、ダマスカス県バルザ区、カダム区でも、数万人がデモを行い、複数の活動家によると治安部隊の催涙弾などで複数が負傷した。
「アフバール・シャルク」(12月30日付)は、パレスチナのイスラーム・ジハード運動創設者の故ファトヒー・シカーキー氏の息子のイブラーヒーム・シカーキー氏が12月30日、ダマスカス県内のデモに参加して逮捕されたと報じた。
一方、SANA(12月30日付)によると、ダマスカス県サブウ・バフラート広場、ダマスカス郊外県サフナーヤー市で、外国の干渉拒否、アサド政権の改革路線を訴える集会が行われた。
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イドリブ県では、シリア人権監視団など活動家らによると、25万人がデモに参加し、治安部隊が発砲したという。
またハーン・シャイフーン市、サラーキブ市ではアラブ連盟監視団の訪問に合わせて、「戦車」が市街地から撤退した、という。
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ヒムス県では、反体制活動家らによると、ヒムス市で10万人がデモに参加し、治安部隊が発砲したという。
またダイル・バアルバ地区で未明に、5人の遺体が発見され、早朝にはバーブ・ドゥライブ地区で1人が殺害されたという。
シリア人権監視団によると、タッルカラフ市近くでは離反兵(脱走兵)が軍を要撃し、離反兵2人を含む4人が死亡した。
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ハマー県では、活動家らによると、ハマー市で数万人がデモに参加し、治安当局の発砲で5人が殺害されたという。
一方、SANA(12月30日付)によると、タクスィース村でアブドゥルジャッバール・カヒース退役准将の乗った車が武装テロ集団に襲撃され、乗っていた娘が死亡、家族が負傷した。
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ダイル・ザウル県では、活動家らによると、ダイル・ザウル市で数万人がデモに参加したという。
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ダルアー県では、活動家らによると、ダルアー市で数万人がデモに参加し、治安当局の発砲で5人が殺害されたという。
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ハサカ県では、活動家らによると、ハサカ市で数万人が、カーミシュリー市で数千人が反体制デモに参加したという。
一方、SANA(12月30日付)によると、ハサカ市、カーミシュリー市で、外国の干渉拒否、アサド政権の改革路線を訴える集会が行われた。
タルトゥース県では、活動家らによると、バーニヤース市で数万人がデモに参加したという。
一方、SANA(12月30日付)によると、タルトゥース市で、外国の干渉拒否、アサド政権の改革路線を訴える集会が行われた。
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アレッポ県では、活動家らによると、アレッポ市で数万人がデモに参加したという。
シリア人権監視団によると、ハナーヌー地区のモスクで反体制デモがあったが、強制排除された。
一方、SANA(12月30日付)によると、アレッポ市サアドゥッラー・ジャービリー広場(サアドゥッラー・ジャービリー地区)で、外国の干渉拒否、アサド政権の改革路線を訴える集会が行われた。
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スワイダー県では、SANA(12月30日付)によると、スワイダー市で、外国の干渉拒否、アサド政権の改革路線を訴える集会が行われた。
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ラタキア県では、SANA(12月30日付)によると、ラタキア市で、外国の干渉拒否、アサド政権の改革路線を訴える集会が行われた。
アサド政権の動き
政党関係委員会は、国民成長党を新たに公認した。
同党は、アイマン・サイイド氏らが設立し、国民の意思のもとに強力で進歩的なシリアを建設することをめざしている。党のスローガンは「自由、公正、開発」。
反体制勢力の動き
自由シリア軍のリヤード・アスアド大佐(自称少佐)は声明を出し、アラブ連盟監視団の訪問中は軍・治安部隊への攻撃を行わないよう命令を発した。
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シリア国民評議会の渉外局代表のムハンマド・ヤースィーン・ナッジャール氏はアラブ連盟に対して、監視団に監視活動と並行して救援活動を行わせるよう求めた。
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シリア国民評議会のウバイダ・ナッハース氏はクウェートの『ワタン』(12月30日付)に対して、アラブ連盟監視団の活動が失敗に終われば、シリアに関する問題は国連安保理に付託されるだろうと述べた。
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シリア国民評議会内のクルド・ブロックは声明を出し、トルコ軍による対イラク国境地域への誤爆を非難した。
レバノンの動き
北部県アッカール郡ワーディー・ハーリド地方の対シリア国境近くでシリア人反体制活動家とレバノン人約500人がアサド打倒を求めるデモを行った。
また北部県トリポリ市内では、イスラーム主義者約500人が、アサド政権による弾圧に抗議する座り込みを行った。
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ミシェル・スライマーン大統領はアリー・アブドゥルカリーム在レバノン・シリア大使と会談し、二国間関係、シリア情勢などについて意見を交換し、北部県アッカール郡ワーディー・ハーリドでのシリア軍によるレバノン人ら3人の殺害事件の調査と、国境警備隊策を通じた事件再発防止の必要を確認した。
諸外国の動き
ロシア外務省は、アラブ連盟監視団の任務開始に安堵感を表明した。
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フランス外務省報道官は、アラブ連盟監視団の活動に関して、「結果を判断するには時期尚早」と述べるとともに、「自由且つ独立したかたちでの任務遂行」が重要との立場を示した。
AFP, December 30, 2011、Akhbar al-Sharq, December 30, 2011、Alarabia.net, December 30, 2011、Facebook、al-Hayat, December 31, 2011、Kull-na Shuraka’, December 30, 2011, December 31, 2011、Naharnet.com, December 30, 2011、Reuters, December 30, 2011、SANA, December 30, 2011、al-Watan (Kuwait), December 30, 2011などをもとに作成。
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