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国連の動き
西側および一部アラブ諸国が共同で提出した対シリア制裁決議案が安保理で審議された。
『ハヤート』(2月1日付)が入手した対シリア安保理決議案の骨子は以下の通り。
1. アラブ連盟イニシアチブ(行程表)への完全なる支持の表明。
2. 挙国一致内閣の発足。
3. 大統領権限の副大統領への移譲と、同副大統領による移行期間における挙国一致内閣への強力。
4. アラブ連盟の監視下での自由で透明性のある選挙の実施。
5. 国連加盟国への安保理によるアラブ連盟の対シリア経済決議と同様の措置の奨励。
6. シリア政府が15日以内に決議に従わない場合、アラブ連盟と協議のもと追加措置を検討。
7. シリア政府による人権侵害への非難。
8. シリア政府への暴力停止の呼びかけ。
9. 武装集団を含むすべての当事者による暴力停止の要求。
10. 人権侵害の責任者への制裁。
11. シリア政府への政治犯釈放、軍の都市部からの撤退、アラブ連盟監視団など地域・国際機関の自由な活動保障の要求。
審議には、カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣(アラブ連盟シリア問題閣僚委員会委員長)、ヒラリー・クリントン米国務長官、ウィリアム・ヘイグ英外務大臣、アラン・ジュペ外務大臣らが出席した。
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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は『ハヤート』(2月1日付)に対して、安保理会合で各国代表らに回付した自身の書簡が、「アラブ連盟の決議を支持する安保理声明を採択することで、アサド政権と反体制勢力の双方に圧力をかけようとしている連盟を支援すること」、「暴力の停止と治安措置に基づく問題解決の拒否の必要の強調」を骨子としていると語った。
またアラビー事務総長はカタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣(シリア問題閣僚委員会議長)とともにロシアのヴィタリー・チュルキン国連大使、中国の李保东国連大使と会談した。
アラビー事務総長によると、いずれの大使との会談も、決議案に関して「開放的」に対話が行われたという。
また事務局長によると、ロシアが決議案を支持するか否かは「アラブ連盟の行程表をどのように受け入れるか」、すななわち1月22日の連盟外相会合の決議の「政治的解決の達成と治安措置に基づく解決の拒否」という考え方をど捉えるかにかかっているという。
一方、シリアの反対勢力に関しては、「安保理に問題が付託されれば、魔法の杖になる」という「幻想」に陥らないよう警鐘をならした。
そのうえで、「アラブ連盟がめざしているのが、政治プロセスを通じた政治的・国民的和解への到達であり、それによってシリア国民の意思を実現することにある」と述べた。
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『ハヤート』(2月1日付)によると、中国、インド、パキスタンは、アラブ連盟との対立を望ましいとは考えておらず、安保理決議案に関して比較的柔軟だという。
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『ハヤート』(2月1日付Iによると、ロシアのチェルキン代表は、安保理での審議に先立って、「(目標を)明確に設定しないかたちでの政治的移行プロセス」をじっくり支持していく必要があると語り、対リビア安保理決議で「西側に欺かれた」ことを教訓に慎重な姿勢をとっている。
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ヒラリー・クリントン米国務長官は、「弾圧にもかかわらず、恐怖に基づくアサド現政権はいずれ終わり、シリア国民が自らの運命を描きだすだろう…。国際社会は意見対立を払拭し、シリア国民を支持するという明確なメッセージを送る時が来た」と述べ、アラブ連盟のイニシアチブへの支持を表明した。
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SANA(1月31日付)によると、国連安保理会合で、シリアのバッシャール・ジャアファリー常駐代表は、シリアがアラブ連盟の行動計画(11月1日にシリア政府と連盟閣僚委員会が合意)および連盟監視団派遣に関する議定書を逸脱したいかなる決議をも拒否すると述べたうえで、1月22日の連盟外相会合の決議(副大統領への権限移譲、挙国一致内閣発足などが骨子)をシリアの「主権を侵害したあからさまな内政干渉」だと非難、連盟憲章に違反しており無効だと訴えた。
またシリアが監視団の活動延長に合意したにもかかわらず、アラビー事務総長とカタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣が問題を国連に付託しようとしたことを「驚くべき矛盾」と非難した。
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国連の潘基文事務総長は、訪問先のアンマンでの記者会見で、安保理での対シリア決議案に関して、「安保理会合が国際社会の要請に応じたかたちで早急に成果を得ることを望む」と述べ、バランスを欠く西側諸国依りの姿勢を改めて明示した。
国内の暴力
複数の目撃者・活動家によると、軍・治安部隊は、離反兵(自由シリア軍)が撤退したダマスカス郊外県グータ地方東部(ランクース市など)や、ヒムス県(ヒムス市、ラスタン市など)、イドリブ県(サラーキブ市)など各地で大規模な治安回復作戦を継続し、住宅地に向かって激しい「砲撃」を加え、数十人が死傷したという。
またダルアー県では、複数の活動家によると、デモ参加者の葬儀に参列した数千人が反体制デモを行ったという。
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ヒムス県では、SANA(1月31日付)によると、ヒムス市バーブ・アムル地区で精油所に原油を送るための石油パイプラインを武装テロ集団が爆破した。
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『クッルナー・シュラカー』(1月31日付)は、ムスタファー・トゥラース元国防大臣の次男でアサド大統領の友人の一人であるマナーフ・トゥラース准将が殺害されたと報じた。
事実関係に関しての詳細は報じられていない。
アサド政権の動き
SANA(1月31日付)は、アサド大統領がダマスカス県にある殉教者ユースフ・アズマ病院を訪問し、軍・治安部隊の負傷者を見舞ったと報じた。
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『シリア・ステップス』(1月31日付)は、バアス党高官の話として、2月に予定されていたバアス党第11回シリア地域大会が治安状況を理由に延期される見込みだと報じた。
反体制勢力の動き
トルコで避難生活を送る自由シリア軍の司令官リヤード・アスアド大佐は、AFP(1月31日付)の電話取材に対して、軍・治安部隊の大規模掃討作戦に関して「悪党の戦争」と非難する一方、「国土の50%はもはや体制の支配下にない」と誇張した。
しかし「このことは自由シリア軍がいずれかの地域を完全に制圧したことを意味してない」と付言し、その勢力が自らのプロパガンダほど強力でないことを暗に認めた。
一方、自由シリア軍が、イドリブ県のジスル・シュグール市やマアッラト・ヌウマーン市などにある軍・治安部隊の検問所や車輌を標的としていると述べた。
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国連安保理会合に合わせてニューヨークを訪れたシリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長は、ロシアのチェルキン代表と会談した。
このほか、ジェフリー・フェルトマン米国務次官補とも会談した。
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民主的変革諸勢力国民調整員会在外事務局のハイサム・マンナーア代表は、『ハヤート』(2月1日付)に対して、「ロシア的な解決策は5月であれば受け入れられたが、今は遅すぎるし、実質的でなく、受け入れられない」と述べた。
また、「安保理で採決されることはないだろう。なぜなら今日(31日)に採決してしまえば、彼ら(西側)の計略は破綻するから」と述べるとともに、「ロシアはシリア政府にアラブ連盟のイニシアチブを強いることができる唯一の当事者」と位置づけたうえで、「アラブとロシアの対話を求める」と述べ、国連主導ではなく、アラブ連盟主導による問題解決への支持を表明した。
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シリア・ムスリム同胞団のリヤード・シャカファ最高監督者は、トルコのアナトリア通信(1月31日付)に対して、ロシアが提案しているアサド政権との対話を拒否するとの意思を明示した。
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パリで亡命生活をしているアブドゥルハリーム・ハッダーム前副大統領は書簡を発表し、米英仏独、および国連事務総長に対して、「シリア救済のための国際的・軍事的連合の結成」を呼びかけるとともに、アサド大統領が「犯罪行為を通じて国を宗派主義的内戦へと追いやり、アラウィー派の国家を作ろうとしている」と警鐘を鳴らした。
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シリア革命調整連合は、「住宅地区保護地元青年諸委員会」の発足を呼びかけた。
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シリア国民評議会は、地元調整諸委員会など反体制勢力とともに、「アサドの専制体制による野蛮な虐殺への犠牲に対する怒りと追悼の日」と宣言し、モスクや教会に服喪を呼びかけた。
諸外国の動き
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、オーストラリアのABCチャンネル(1月31日付)に対して、「アサド大統領が政権にとどまることを危機解決の条件としたことなど一度も行ったことはない。我々は解決策がシリア的なものでなければならず、シリアのすべての当事者・集団が対話のテーブルに着いて、誰が去り、誰が来るのかを決めるために合意せねばならないと言ってきた」と述べ、対話に応じようとしない反体制勢力の姿勢を「正しくなく挑発的でよい結果をもたらさない」と批判した。
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ジェームズ・クラッパー米国家情報長官は、アサド政権の崩壊は必然的だと述べた。
しかし同長官は、アサド政権による「シリアの支配が続くとは思わない…。個人的には、時間の問題だと思う。しかし問題なのは長い時間がかかるかもしれないということだ」と付言し、同政権を打倒することが容易でないことを暗に認めた。
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サウジアラビア紙『マディーナ』(1月31日付)は、サルマーン・アンズィーを名のるサウジ人ハッカーがアサド大統領や主要各省のE-mailアカウントをハッキングし、大統領および関係者のスキャンダルを入手したと脅迫している、と報じた。
一国の長であるアサド大統領自身がE-mailで高官と連絡をとり合っているとは到底考えられない。
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アラブ連盟監視団を脱退したアルジェリア人のアンワル・マーリク氏はパリで記者会見を行い、「アースィフ・シャウカトが「監視カメラがなかったら、15分ですべてを終わらせる用意がある」と言った」と述べた。
むろん、シャウカト中将がこのような発言したという証拠はない。
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シリア・パレスチナ国民委員会は、パレスチナ解放軍(ターリク・ハドラー司令官)がシリアの反体制運動弾圧に参加している、と発表した。
AFP, January 31, 2012、Akhbar al-Sharq, January 31, 2012, February 5, 2012、AKI, January 31, 2012、al-Hayat, February 1, 2012、al-Madina, January 31, 2012、Kull-na Shuraka’, January 31, 2012、Reuters, January
31, 2012、SANA, January 31, 2012、Syria Steps, January 31, 2012などをもとに作成。
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