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国内の暴力
シリア人権監視団およびシリア革命総合委員会によると、ダマスカス郊外県、ダルアー県、ヒムス県、ハマー県などの各地で軍・治安部隊と離反兵が交戦し、民間人および双方に60人以上の死者が出た。
シリア人権監視団によると、イドリブ県、ダルアー県、ヒムス県、ダマスカス郊外県、ハマー県、ダマスカス県ジャウバル区で民間人26人が死亡、ダマスカス郊外県、イドリブ県、ハマー県、ヒムス県で離反兵9人が死亡、イドリブ県、ダマスカス郊外県で軍兵士26人が死亡、ダマスカス郊外県ザバダーニー市、イドリブ県で治安部隊兵士5人が死亡したという。
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ダマスカス郊外県グータ東部では、複数の活動家によると、約2,000人の兵士、戦車・装甲車約50輌が、自由シリア軍を名のる離反兵が占拠するサクバー市、ハムーリーヤ市、カフルバトナー町、ランクーサ市の解放のために動員され、各市を包囲し、一部都市ではライフラインが遮断され、モスクが野戦病院化するなど、「市街戦」の様相を呈している、という。
自由シリア軍のマーヒル・ヌアイミー少佐によると、「体制の激しい攻撃は前例がないほど」と述べる一方、ジスリーン町、アイン・タルマー村、ハムーリーヤ市、サクバー市、ハラスター市、ドゥーマー市、フタイタト・トゥルクマーン市で軍兵士の離反が相次いでいると述べた。
また『クッルナー・シュラカー』(1月29日付)は、アドラー中央刑務所で27日から連日連夜、反体制運動に参加して逮捕された政治犯の釈放を求めるデモが発生していると報じた。
一方、SANA(1月29日付)によると、サフナーヤー市近郊で武装テロ集団が軍部隊に対して爆弾攻撃を行い、中尉2人を含む兵士6人が死亡した。
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ヒムス県では、『ハヤート』(1月30日付)などによると、ラスタン市では前日に引き続き、軍・治安部隊と離反兵との間で激しい戦闘が続いた。
またNNA(1月29日付)は、地元住民などの話として、タッルカラフ地方の対レバノン国境に架かるジャアファリーヤ橋で、レバノン人2人、シリア人1人が殺害され、シリア人2人が負傷したと報じた。
一方、OTV(1月29日付)は、「イラク人に率いられたレバノン人9人からなる武装集団がシリアに潜入し…、待ち伏せしていたシリア軍の攻撃により、メンバー4人が殺害され、複数が負傷した」と報じた。
他方、SANA(1月29日付)は、武装テロ集団がヒムス市農業局に勤務する技師アマル・イーサー女史の車を襲撃し、暗殺したと報じた。
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イドリブ県では、SANA(1月29日付)によると、バルユーン・カムサフラ街道で、武装テロ集団が治安維持部隊に爆弾攻撃を行い、准将1人と兵士1人が負傷した。
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アレッポ県では、複数の反体制活動家によると、アレッポ市東部、とりわけマルジャ地区で厳戒態勢が強化され、地区ごとに検問所が設置された。
アサド政権の動き
シリア暴力テロ犠牲者遺族監視団は、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長による監視団活動停止の発表に関して、「イスタンブール評議会(シリア国民評議会)と武装集団にシリアに対する犯罪行為激化の青信号を出した」に等しいと厳しく非難した。
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SANA(1月29日付)によると、政党問題員会は会合を開き、自由シリア党、祖国シリア党の2党の公認申請を受理することを決定した。
反体制運動の動き
シリア・クルド国民大会がイラクのクルディスタン自治政府の支援のもと、エルビル市で2日にわたって開催された。
同大会には西側諸国など25カ国で暮らすシリア・クルド人活動家約210人が出席し、国内外のシリア・クルド人の運動の統合と反体制デモ支持について議論した。
しかし、現下のシリア国内の危機的状況への対処の仕方、シリア国内のクルド人の将来の処遇に関して、改めて意見の相違が露呈した。
AFP(1月30日付)によると、同大会書記長のジャワード・ムッラー氏は、国際社会の内政干渉に関して、「サッダーム・フセインの体制は外国の介入なしに倒れなかったという経験があるなか、外国の介入は唯一の解決策」と述べ、西側諸国と一部アラブ諸国が進める介入の試みへの支持を表明した。
また「シリアにクルド政府が発足するのは必然だ」と述べつつも、クルド民族主義勢力がこの点に関してコンセンサスに達していないことを認め、アサド政権打倒後に国民投票を行う必要があるとの立場を示した。
シリア国内で活動するクルド民族主義反体制組織の一つ、シリア・クルド民主党(パールティー)のアブドゥルハキーム・バッシャール書記長は、「外国の介入は時期尚早だ。国際社会が政治、経済、情報、外交において圧力をかけることでコンセンサスに達したとしても、国民的な解決の方がよい」と述べ、慎重な慎重な姿勢を示した。
またハキーム書記長は、「シリアのクルド人民は国民投票を通じて何をめざすのか、そして自決権利をどう行使するかを決し、自治と分権主義のいずれを採用するかを決めるだろう」と述べた。
一方、シリア国内で活動するシリア・クルド進歩民主党のアブドゥルハミード・ダルウィーシュ書記長は、アサド政権打倒後のシリアでの「クルディスタン地域」設置の是非に関して、「状況が異なっているので、イラクのクルド人と同じようなもの(自治政府)が作られることはないだろう」と述べた。
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シリア変革大会(アンタリア)は声明を出し、アラブ連盟監視団の活動停止に関して、停止ではなく撤収すべきだとの意思を示した。
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『クッルナー・シュラカー』(1月29日付)は、シリア軍の匿名消息筋の話として、アサド政権による弾圧命令を拒否した上級士官の一団が近く「シリア国民軍」の創設を発表する、と報じた。
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『ミスリー・ヤウム』(1月29日付)は、自由シリア軍がダマスカス国際空港(ダマスカス郊外県)からシリア国外に避難しようとしていたアスマー・アフラス大統領夫人、大統領の3人の子供、アニーサ・マフルーフ氏(大統領の母)らを阻止したと報じた。
しかし、自由シリア軍はこうした作戦を行ったとの声明は出していない。
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「自由シリア青年」を名のるシーア派の活動家(と思われる集団)が声明を出し、シーア派宗徒に反体制運動に参加するよう呼びかけた。
レバノンの動き
ベイルートのロシア大使館前で、アサド政権を支持するシリア人、レバノン人多数が集会を開き、西側および一部アラブ諸国のアサド・バッシングに異議を唱えるロシアに謝意を示した。
諸外国の動き
イタルタス通信(1月29日付)は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣が、「彼らがこのような方法で有益な任務に対処したのか理由が知りたい…。私が彼らの立場だったら、監視団の増員を支持していた」と述べ、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長による監視団活動停止の発表に疑義を呈した。
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フランスの国連代表は国際社会にシリア人の保護に責任を果たすべく「安保理から」国際社会が動くべきだとの声明を発表、各国代表に配布した。
AFP, January 29, 2012, January 30, 2012、Akhbar al-Sharq, January 29, 2012、al-Hayat, January 30, 2012,January 31, 2012、Kull-na Shuraka’,January 29, 2012, February
1, 2012、al-Misriya al-Yawm, January 29, 2012、Naharnet.com, January 29, 2012、Reuters, January 29, 2012、SANA, January 29, 2012などをもとに作成。
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