2012年2月14日のシリア情勢

アサド政権の動き

SANA(2月14日付)によると、ラタキア県ラタキア市でアサド政権の改革支持、外国の介入拒否、「武装テロ集団」のテロ反対を訴える大規模な集会が開催された。

SANA, February 14, 2012

SANA, February 14, 2012

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SANA(2月14日付)は、シリア外務省が国連総会でのナバネセム・ピレイ国連人権高等弁務官の演説に関して、「声明における…新たな言いがかりを断固としてシリアは拒否する」との意思を明示するとともに、「人権高等弁務官はシリアを標的とし、武装集団が行うテロ犯罪行為を無視する一部の国の手先に成り下がった」と非難した、と報じた。

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Kull-na Shuraka’, January 11, 2012

Kull-na Shuraka’, January 11, 2012

『クッルナー・シュラカー』(2月14日付)は、アサド家に近い消息筋の話として、アサド大統領の長男のハーフィズくんは数ヶ月前に既にシリア国外で生活していると報じた。

同報道によると、ハーフィズくんは、1月にアサド大統領がダマスカス県内のウマウィーイーン広場での政権支持集会に参加した際に公開されたアスマー・アフラス婦人らの「ねつ造写真」(1月11日付)にも写っていたなかったという。

なおこの写真には、アスマー婦人、長女のザインちゃん、次男のカリームくんの3人が写っている。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会のバスマ・カドマーニー報道官は、外交官らが政権を離反しない理由に関して、「人々が家族、親戚、財産への復讐を恐れている。厳格な検閲が行われており、体制の恐怖に怯えている」と解釈し、「国内で離反しない人々は外国からの明確なサインを待っている」と述べ、民衆とのつながりを欠き、動員力を欠く反体制勢力の政治目標を実現するため、民衆ではなく外国の支持が必要だとの見方を示した。

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シリア国民評議会のバスマ・カドマーニー報道官は2月15日に運営委員会がカタールの首都ドーハで会合を開き、ブルハーン・ガルユーン事務局長の後任の選出、ないしは再任を行うと発表した。

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シリア・クルド国民評議会のアブドゥルハキーム・バッシャール代表(シリア・クルド民主党(パールティー)書記長)は声明を出し、シリア内外のクルド人に対して「蜂起」を呼びかけ、アサド政権の「クルド人に対する行為、影響力、そして権威を制限」するよう訴えた。

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シリア国内で「シリア国民民主諸勢力祖国連立」という新たな反体制政治同盟が結成され、発足声明を発表した。

同連立は、アサド政権の打倒、民主的市民国家の建設、国内の安定・平和などをめざす組織で、以下の政党・政治組織が参加している。

自由で民主的なシリアのための「ともに」運動
国民会合
シリア国民ブロック
市民権潮流
シリア左派連立
ジャルマーナー国民民主行動委員会
変革ビジョン
シリア革命左派
シリア革命支援委員会

いずれも無名の組織である。

国内の暴力

シリア人権監視団は、ヒムス県ヒムス市、ハマー県などで軍・治安部隊による反体制武装集団への掃討作戦が続き、少なくとも25人が死亡したと発表した。同監視団によると、被害の多くはヒムス市で発生したほか、ハマー県での軍・治安部隊と離反兵との戦闘で前者の兵士5人が死亡した、という。

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一方、シリア革命総合委員会は、各地で35人(うちヒムス市で11人)が殺害されたと主張した。

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複数の活動家らによると、ヒムス県ヒムス市バーブ・アムル地区のほか、ラスタン市、ダマスカス郊外県ランクース市、ダルアー県タイバ町で大規模な弾圧が行われているという。

自由シリア軍を名のる反体制武装集団は、ダルアー県ラジャート高原で拘束した士官と兵士を尋問するビデオを公開した。

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SANA(2月14日付)は、ハマー県ハマー市で武装テロ集団の武器庫を発見、大量の武器弾薬を応酬したと報じた。

またヒムス県ヒムス市内各地区で、武装テロ集団が、治安維持部隊の追跡を逃れようとして、住宅地を爆弾で爆破し、治安を混乱させようとしていると報じた。

レバノンの動き

Naharnet.com, February 14, 2012

Naharnet.com, February 14, 2012

ラフィーク・ハリーリー元首相(2005年2月14日暗殺)の命日にあたる14日、ベイルート中心にあるBIELで3月14日勢力が追悼集会を行い、各党指導者が演説を行った、シリアの反体制勢力への支持の姿勢には若干の温度差が見られた。

追悼集会には、レバノン軍団のサミール・ジャアジャア代表、レバノン・カターイブ党最高党首のアミーン・ジュマイイル元大統領、ファーリス・スアイド3月14日勢力事務局長、ムスタクバル潮流のフアード・スィニューラ元首相、バヒーヤ・ハリーリー議員(S・ハリーリー前首相のおば)らが参列した。

パリに滞在中の次男サアド・ハリーリー前首相は集会には参列せず、巨大スクリーンを通じて演説を行った。

進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首と息子で後継者と目されているタイムール・ジュンブラート氏および党の追悼団とともに、R・ハリーリー元首相廟を墓参したが、祝典には参列しなかった。

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レバノン軍団のジャアジャア氏は、「未来は…主権を有し、自由で独立したレバノンに帰属しており、ヴェラーヤテ・ファギーや(イラン・シリア)枢軸に属していない」と述べ、ヒズブッラーを批判した。

またヒズブッラーが参画しているナジーブ・ミーカーティー内閣を「国内の卑劣な紛争を放置する卑劣な政府」と非難するとともに、「去りつつある者(アサド政権)どもとともに去るだろう」と述べた。

そのうえで、シリアでの反体制運動に関して、「政府および政府機関における一部の者たちが、体制の意思や命令を見たそうと躍起になり…、無実の人々、避難民らを迫害している」と非難、「民主的で自由なシリアの新体制がレバノンの独立をもっとも支援し、二国間の歴史において前政権が綴った暗黒のメージをめくる真の機会を与えるだろう」と述べた。

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レバノン・カターイブ党最高党首のジュマイイル元大統領は演説で、「アラブ諸国での反体制蜂起を支援し、レバノン人が違法な武器によって囚われの身になることを受け入れることが論理的と言えようか?」と述べ、レバノン特別法廷を通じたハリーリー元首相暗殺の真相究明やヒズブッラーなどの武装の必要を「アラブの春」に伴う政治変動と順接的に結びつけようとしたが、シリアでの反体制運動への明言は避け、その介入への慎重な姿勢を暗示した。

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3月14日勢力のスアイド事務局長な、シリア国民評議会のメッセージを代読した。

同メッセージにおいて、シリア国民評議会は「シリアの一部ではない、独立したレバノン」を指示するとしたうえで、レバノン内政干渉を行わないと誓約した。

またレバノンとのより適切な外交関係を構築し、「シャブアー農場から」国境画定を行うとの立場を示した。これは北部からの国境画定を主張するアサド政権に対抗したスタンスである。

そのうえで「シリアの民主主義はレバノンの民主主義を支持する」として、3月14日勢力の「杉の木革命」への支持を表明した。

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S・ハリーリー前首相は巨大スクリーンを通じて、「私はシリア国民との団結することにおいて責任を負う」と述べ、シリアの反体制運動との連帯を宣言した。

「レバノンは、アラブの春による新たな政治的段階、そしてシリアの政府の終わりの始まりに向かって進んでいる…。シリアでの民主制の確立はレバノンの民主制を強化する」と述べ、シリア国民評議会への協力の意思を示した。

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アドナーン・マンスール外務大臣が自由国民潮流代表のミシェル・アウン元国軍司令官と会談し、アラブ連盟外相会合の決議で提起されたアラブ・国連共同平和維持軍の是非について意見を交換した。

会談後、マンスール外務大臣は「レバノンの立場と一致しない危険な文言を含んでいる」と述べ、アラブ連盟外相会合の決議を批判した。

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Naharnet.com(2月14日付)は、進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首が、アル=カーイダのアイマン・ザワーヒリー氏によるシリアの反体制運動支持声明に関して、「シリアの諜報機関によって調整された」と断じた。

ジュンブラート党首は、アサド政権がアル=カーイダと国内の反体制運動をリンクさせることで、「テロリスト一味」が国を不安定化させているとの主張を正当化しようとしていると説明した。

諸外国の動き

RT(2月14日付)は、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣が記者団に対して、「国際社会は反体制勢力が政府との対話に応じないよう煽動するのに少なからぬ努力をしている」と述べ、西側諸国が結成をめざすシリアの友連絡グループに関して、「一方の当事者」の立場を支持しているに過ぎないと批判した、と報じた。

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中国の温家宝首相は中国・EU首脳会談での記者会見で、「中国は、いかなる(紛争)当事者も保護しない。シリア政府も含めて」と述べ、「シリアにおける戦争、混乱の回避が急務」との立場を示した。

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ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長との会談に先立って、アサド政権による反体制勢力の弾圧に対して「厳しい態度」で臨む必要があると非難の意を示した。

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フランス外務省報道官は、2月24日にチュニジアで予定されているシリアの友連絡グループの会合に関して、「可能な限り広範」にグループが結成されることを望むと述べるとともに、関係各国と同グループに関して具体的な調整を行っていることを明らかにした。

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ロイター通信(2月14日付)は、カイロのアラブ外交筋の話として、アラブ連盟外相会議の決議で反体制勢力への政治的・物質的な支援の拡充が確認されたことを受け、「我々はまずは財政、外交面で反体制勢力を支援するが、政府が殺戮を続ければ、民間人の自衛を支援せねばならない」として、武器支援の可能性を示唆した。

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バハレーン通信(2月14日付)は、ダマスカスのバハレーン大使館常駐代表公邸が武装集団が侵入し、個人財産多数を盗んだとバハレーン当局が発表、在マナーマのシリア大使館常駐代表(ファーイザ・イスカンダル女史)に抗議の意を伝えたと報じた。

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『ドゥストゥール』(2月14日付)は、ヨルダンのアブドゥルイラーフ・ハティーブ元外務大臣は、在ダマスカス連盟常駐代表への就任を辞退したと報じた。

AFP, February 14, 2012、Akhbār al-Sharq, February 14, 2012、AKI, February 14, 2012、al-Dustūr, February 14, 2012、al-Ḥayāt, February 15, 2012、Kull-nā Shurakā’, February 14, 2012、Naharnet.com, February
14, 2012、Reuters, February 14, 2012、SANA, February 14, 2012などをもとに作成。

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