軍が国防隊、ヒズブッラーなどの支援を受けながらダマスカス郊外県内の重要拠点を制圧するなか、エルドアン首相はシリアで活動するサラフィー主義集団を支援しているとの情報を否定(2013年11月7日)

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反体制勢力の動き

クッルナー・シュラカー(11月7日付)によると、シリア革命反体制勢力国民連立のガッサーン・ヒートゥー前移行期政府首班が、アフマド・トゥウマ現移行期政府首班と会談し、在任中の組閣に関わる文書の引き継ぎを行った。

シリア政府の動き

シリア政府は、国連のテロ対策委員会に書簡を提出し、そのなかでアル=カーイダとつながりのあるシリア人、トルコ人、外国人からなるテロ集団が化学兵器を入手し、シリア国内に持ち込もうとしていたと指摘し、対応を求めた。

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軍武装部隊総司令部は声明を出し、ダマスカス郊外県の大スバイナ町、小スバイナ町、ガザール市で、軍がテロ集団を殲滅、同地を完全制圧したと発表した。

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クッルナー・シュラカー(11月7日付)は、ヒムス県のタラール・バラーズィー知事が、同県での紛争によって発生した鉄クズが「ビジネスマン」のムハンマド・ハムシュー氏のもとで不当に収集されているとする抗議文を、ワーイル・ハルキー首相に提出したと報じた。

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『イクティサーディー』(11月7日付)は信頼できる消息筋の話として、マネー・ロンダリング・テロ資金援助撲滅委員会のバースィル・サーリフ委員長が、闇両替とマネー・ロンダリングへの関与を理由に就任から1ヶ月で解任されたと報じた。

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、軍が、国防隊、ヒズブッラー民兵、アブー・バドル・アッバース旅団の支援のもと、スバイナ町で反体制武装集団を掃討し、同市を制圧した。

同監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表はAFP(11月7日付)に、「スバイナ町は反体制武装組織の重要拠点の一つだったが、これにより、ダマスカス南部への反体制武装組織への兵站路のすべてが絶たれた」ことを明らかにした。

また「武装集団どうしの対立」が軍の前身に寄与してしまったと付言した。

このほか、ムライハ市、ヤルダー市、バイト・サフム市、ムウダミーヤト・シャーム市などに対して軍は砲撃を加えた。

一方、SANA(11月7日付)によると、大スバイナ町、小スバイナ町、ガザール市で、軍が「テロ集団」の掃討を完了し、同地を完全制圧し、治安を回復した。

また、ドゥマイル市東部、TAMICO東部、アーリヤ農場、マルジュ・スルターン村近郊、ダブラ市郊外、カースィミーヤ市郊外、ヌーラ市郊外、ザバディーン市郊外、ハラスター市、ダーライヤー市、ジャイルード市北部、アドラー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、外国人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

このほか、ジャルマーナー市、キスワ市で、反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民1人が死亡、子供を含む9人が負傷した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、バルザ区、ジャウバル区に対して軍が砲撃を行う一方、バグダード通り一帯で逮捕摘発活動を行った。

またカッサーア地区に迫撃砲弾が着弾し、7人が負傷、さらにバーブ・トゥーマー地区でも迫撃方着弾により多数が負傷したという。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、マヒーン山の武器弾薬庫をめぐる軍と、シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)、ハドラー大隊、バーバ・アムル・コマンド大隊などとの戦闘で、軍の士官1人と兵卒2人が死亡した。

一方、SANA(11月7日付)によると、軍が、ハミーラ市とマヒーン町を結ぶ街道で反体制武装集団を殲滅、同街道を制圧した。

また、ダール・カビーラ村、タッルドゥー市、ブルジュ・カーイー村、ヒムス市バーブ・フード地区、クスール地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団が「科学研究(センター)解放作戦」の開始し、ラーシディーン地区制圧をめざすと発表した。

またアレッポ市ハーリディーヤ地区、ライラムーン地区で軍と反体制武装集団が交戦した。

一方、SANA(11月7日付)によると、サフィーラ市西部郊外、サイファーン村、シャイフ・ナッジャール市、ヒーラーン村、ハーン・アサル村、マンスーラ村・ダーラト・イッザ市街道、アターリブ市郊外、アレッポ市ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、ヌールッディーン・ザンキー大隊の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

またタッルアラン村の約60%を軍が制圧した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市クスール地区にある軍の拠点が迫撃砲の攻撃を受け、複数の兵士が死傷した。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、民主統一党人民防衛隊が、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)、シャームの民のヌスラ戦線との交戦の末、タッル・タムル町西部に位置する街道沿い(アレッポ街道)のアッシリア教徒のライラーン村、トゥワイラーン村を制圧した。

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イドリブ県では、SANA(11月7日付)によると、サラーキブ市、マアッラト・ヌウマーン市、ナフラ村、バザーブール村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザイル県では、SANA(11月7日付)によると、ダイル・ザウル県ラシュディーヤ地区、ハウィーカ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、SANA(11月7日付)によると、ティシュリーン油田内の反体制武装集団の拠点を軍が攻撃し、戦闘員4人を殺害した。

またカーミシュリー市郊外のトワイナ地方、アブー・カサーイブ地方、ブジャーリーヤ地方で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

諸外国の動き

化学兵器禁止機関は声明を出し、国連の合同派遣団が「安全上の理由で近づけない」としていた2カ所のうちの1カ所に関して、シリア当局が撮影した映像や写真に基づいて査察を完了したと発表した。

査察が行われたのはアレッポ県内の施設で、軍が奪還・制圧したサフィール市だと思われる。

声明は「シリア政府の報告によると、同地の施設は以前に解体され空き家となっていたが、戦闘によって施設は大きな被害を受けていた」という。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相はストックホルムで記者会見を開き、シリアで活動するサラフィー主義集団を支援していることを否定した。

エルドアン首相は「シャームの民のヌスラ戦線やアル=カーイダなどの集団が我が国に隠れ家を見つけることなどできない…。逆に、トルコは、分離主義テロ組織(PKK)に対するのと同様、こうした組織に立ち向かう。これらの組織に対して必要な措置を講じてきたし、これからもそうするだろう…。我々が支援しているシリアの反体制派は周知の存在だ。我々は自由シリア軍と連絡をとっている…。我々はまた、シリア革命反体制勢力国民連立と連絡をとっている。彼らに可能なあらゆる支援を行っている」と述べた。

またエルドアン首相「(ジュネーブ2会議に向けて)プロセスがまた延期になった。なぜか?モスクワが反体制勢力にアサドが参加する移行期政府を受け入れるよう求めているからだ」と批判した。

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トルコのアダナ県知事は、シリアからの「麻薬密輸」に対処するため、重火器に装填可能な弾頭1,200発をはじめとする大量の武器弾薬を警察当局が押収したと発表した。

同知事はまた、すでに多数の容疑者が逮捕されているとしたうえで「あらゆる可能性を検討している…。弾頭はトルコ国外に送られたかもしれない」と付言した。

『ハヤート』(11月8日付)が伝えた。

一方、リハーブ・ニュース(11月8日付)は、トルコ警察が武器弾薬とともに、麻薬を押収、9人を拘束したと報じた。

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AFP(11月7日付)は、トルコの平和民主党(クルド政党)高官の話として、違法な越境を阻止するための防御壁建設計画に抗議して、10月30日から国境地帯の地雷原でハンストを行っていたヌサイビン村(メルディン県)の村長アイシェ・ギョッカン女史が、目的を達成したとして、ストを終えたと報じた。

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ヨルダン国王アブドゥッラー2世はアンマンを訪問したジョン・ケリー米国務長官と会談し、シリア情勢などについて協議した。

アブドゥッラー2世は、シリア人避難民の受け入れによる負担にあえぐヨルダンの惨状を訴えるとともに、紛争の「包括的な政治解決」を支持するとの意思を改めて示した。

一方、ケリー国務長官は、ヨルダンへの支援継続を通じて、シリア人避難民をめぐる問題に対処することを改めて伝える一方、「数日中に、(ジュネーブ2会議の)日程が決まるだろうと信じている」と述べた。

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AFP(11月7日付)によると、アルバニアの首都ティラナの国会議事堂前で、シリアの化学兵器の受入と廃棄に反対するデモが行われ、数十人の活動家・市民が参加した。

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『ハヤート』(11月8日付)は、軍が包囲するダマスカス県ヤルムーク区(パレスチナ難民居住地)情勢に関して、PFLP-GCのアンワル・ラジャー報道官が、シリア政府との間で「キャンプに残っている住民のなかで避難を望む者の退出を来週から行う」ことで合意したことを明らかにした。

同報道によると、アサド政権は、ヤルムーク区への人道回廊設置や人道支援物資搬入などをめぐるファタハ中央委員会のアッバース・ザキー氏との協議などで、「キャンプに残っている人々をテロ支援者とみなす」との姿勢を示し、同地区を占拠する反体制武装集団排除への強い意思を示したという。

AFP, November 7, 2013、al-Hayat, November 8, 2013、al-Iqtisadi, November 7, 2013、Kull-na Shuraka’, November 7, 2013、Naharnet, November
7, 2013、Reuters, November 7, 2013、Rihab News, November 7, 2013, November
8, 2013、SANA, November 7, 2013、UPI, November 7, 2013などをもとに作成。

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